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元素の旅人 「理系社畜、異世界で元素魔法の賢者になる」周期表はチートじゃない。俺の「化学知識」が世界を救う法則だ  作者: 花咲かおる
第2巻「北への旅路」 

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第1章:メタリタウンの鍛冶師

北への道は、思ったより整備されていた。

石畳の道が続き、一時間ごとに休憩所がある。商人や旅人とすれ違うこともあった。

「この道は、交易路なんですよ」

ナトリが説明した。

「北の国境と南の都市を結ぶ、重要な道なんです」

歩きながら、秀城は周囲を観察していた。平原には、時折魔物の姿も見える。だが、道からは離れているようだ。

「道の近くには、結界が張られてるの」

オクシアが教えてくれた。

「魔法使いたちが定期的に維持してる。だから、道を外れなければ安全よ」

「なるほど...」

それでも、油断はできない。秀城は常に周囲を警戒していた。

昼過ぎ、休憩所で昼食を取った。

持参したパンとチーズ、それから水筒の水。

「北に行くほど、気温が下がるんですよね?」

「ええ。フロンティアは、冬は雪が降るわ」

「防寒具、買っておいた方がいいかな」

「メタリタウンで買えるわよ。あそこは金属加工が盛んだから、防具も充実してるの」

休憩を終えて、再び歩き出した。

夕方、前方に街が見えてきた。

メタリタウン。

城壁は鉄製で、黒く光っている。煙突から煙が立ち上り、遠くからでも金属を叩く音が聞こえてくる。

「着きましたね!」

三人は街に入った。


メタリタウンは、活気に溢れていた。

通りには鍛冶屋、武器屋、防具屋がずらりと並んでいる。店先では、職人たちが金属を叩き、火花を散らしている。

「すごい...」

秀城は圧倒された。

「金属の街だけあって、金属元素使いが多いのよ」

オクシアが説明した。

「鉄、銅、銀、金...色んな金属使いがいるわ」

「じゃあ、ここで金属元素を習得できるかも」

「そうね。まず、ギルドに行きましょう」


メタリタウンのギルドは、鉄製の建物だった。重厚感があり、入口には大きな鉄の扉がある。

中に入ると、屈強な冒険者たちが集まっていた。皆、鉄の鎧や武器で武装している。

「いらっしゃい」

カウンターから、筋骨隆々とした男性が声をかけてきた。

「エレメンタから来た冒険者です。推薦状を」

秀城は推薦状を渡した。

男性はそれを確認すると、頷いた。

「なるほど。エレメンタのギルドからか。歓迎するぜ」

「ありがとうございます。それと、金属元素使いの方を紹介していただけませんか?」

「金属元素?ああ、習得したいのか」

男性は台帳を開いた。

「鉄使いなら、うちのギルドマスターがそうだ。フェルム・スティーラ。今、鍛冶場にいるはずだ」

「鍛冶場?」

「ギルドの裏にある。案内するぜ」


ギルドの裏手には、大きな鍛冶場があった。

炉が燃え、金床が置かれ、無数の工具が壁に掛けられている。

そして、中央で一人の男性が作業をしていた。

年齢は四十代くらいか。筋肉質な体つきで、黒い髪に白いものが混じっている。鉄色の瞳をしていて、顔には火傷の跡がある。

彼は大きなハンマーで、真っ赤に熱した鉄を叩いていた。

ガンッ、ガンッ、ガンッ。

規則正しいリズム。火花が散る。

「ギルドマスター、客だ」

案内してくれた男性が声をかけた。

フェルムは手を止め、振り向いた。

「客?」

「エレメンタから来た冒険者だ。あんたに会いたいって」

フェルムは秀城たちを見た。鋭い目つき。

「何の用だ?」

「初めまして。メンデレ・秀城と申します。実は、転移者で...」

「転移者?」

フェルムは眉を上げた。

「ああ、噂は聞いてる。全元素習得能力を持ってるってやつだろ」

「はい。それで、鉄の元素を教えていただきたいんです」

フェルムはハンマーを置いた。

「鉄を、か...」

彼は秀城をじっと見つめた。

「なぜ鉄が欲しい?」

「金属元素を習得したいんです。武器や防具を強化できるようになりたくて」

「武器や防具の強化...」

フェルムは少し考えてから、頷いた。

「いいだろう。教えてやる」

「本当ですか!?」

「ただし、条件がある」

「やっぱり...」

秀城は苦笑した。

「俺の弟子として、三日間修行しろ。鍛冶の基礎を学べ」

「鍛冶の修行?」

「鉄を理解するには、鉄を叩け。それが一番だ」

フェルムは真剣な顔で言った。

「鉄は、叩けば叩くほど強くなる。それが鉄の本質だ。それを体で学べ」

「分かりました」

秀城は決意した。

「三日間、よろしくお願いします」

「よし。じゃあ、今日から始めるぞ」


フェルムは秀城に革製のエプロンと手袋を渡した。

「まず、火の扱いから教える」

鍛冶炉を指差す。中では炭が真っ赤に燃えている。

「鍛冶において、火は命だ。温度が低すぎれば鉄は固く、高すぎれば燃えてしまう」

フェルムは鉄の棒を炉に入れた。

「鉄を赤く、だがオレンジにならないように。それが適温だ」

しばらくして、鉄が真っ赤になった。

「よし、取り出せ」

秀城は火箸で鉄を掴み、金床に置いた。

「次に、叩く。ハンマーの重さを感じろ。そして、全身の力を込めて」

フェルムがハンマーを振り下ろした。

ガンッ!

大きな音と共に、鉄が変形した。

「お前もやってみろ」

秀城はハンマーを受け取った。重い。三キロはあるだろう。

「はっ!」

振り下ろした。

ガンッ!

だが、フェルムのような力強さはない。鉄はほとんど変形していない。

「力が足りない。だが、問題ない。回数を重ねれば、筋肉がつく」

「はい...」

「もう一度」

秀城は何度も何度も叩いた。

ガンッ、ガンッ、ガンッ。

腕が痛い。肩が痛い。汗が滲む。

だが、不思議と嫌ではなかった。

鉄を叩く感触。金属が形を変えていく感覚。

それは、何か創造的な行為だった。

一時間ほど叩き続けて、秀城は腕の限界を感じた。

「今日はここまでだ」

フェルムが言った。

「明日も朝から来い。三日間、みっちり鍛えてやる」

「はい!」


その夜、宿で秀城は腕の筋肉痛に悶えていた。

「痛い...」

「大丈夫ですか?」

ナトリが心配そうに見ている。

「ああ、ちょっと使いすぎただけだ」

「【癒しの息吹】」

オクシアが回復魔法をかけてくれた。痛みが少し和らいだ。

「ありがとう」

「鍛冶の修行、大変そうね」

「でも、いい経験だ。鉄のことを、体で学んでる気がする」

秀城は自分の手を見た。マメができている。

「鉄は、叩けば叩くほど強くなる...か」

それは、人間も同じかもしれない。

試練を乗り越えるたびに、強くなっていく。

「明日も頑張ろう」


翌日から、秀城の過酷な修行が始まった。

朝から晩まで、ひたすら鉄を叩く。

最初は釘を作り、次に刃物を作り、そして剣を作った。

フェルムの指導は厳しかったが、的確だった。

「鉄の声を聞け」

「温度を見極めろ」

「力任せに叩くな。鉄と対話しろ」

二日目の夜、秀城は宿で倒れ込んだ。

全身が筋肉痛で、手は水ぶくれだらけ。

だが、心地よい疲労感があった。

「鉄と対話...」

金属も、元素の一つ。

ナトリウムや塩素と同じように、固有の性質を持っている。

「鉄は強い。でも、錆びやすい」

「炭素を加えれば、もっと強くなる。鋼になる」

秀城は頭の中で化学式を思い浮かべた。

鉄。Fe。原子番号26。遷移金属。

「明日が最後の日だ。頑張ろう」


三日目、秀城は自分の剣を作った。

鉄を熱し、叩き、形を整え、焼き入れをし、研ぐ。

すべての工程を、自分の手で。

夕方、剣が完成した。

刃渡り七十センチ。やや重いが、バランスは良い。刃は鋭く、光を反射して輝いている。

「よくやった」

フェルムが頷いた。

「三日間で、ここまで作れるとは。才能があるな」

「ありがとうございます」

「この剣は、お前にやる。自分で作った武器は、最高の相棒になる」

秀城は剣を受け取った。重さが、心地よい。

╔═══════════════════════════╗

║ アイテム入手! ║

╠═══════════════════════════╣

║ 鉄剣(自作) ║

║ 攻撃力:+18 ║

║ 耐久度:高 ║

║ 特殊効果:使い込むほど強化 ║

╠═══════════════════════════╣

║ 装備変更! ║

║ 武器:ダガー→鉄剣 ║

║ 攻撃力:58→76(+18) ║

╚═══════════════════════════╝

「さて、約束通り、鉄の元素を教えてやろう」

フェルムは炉の火を消した。

「鉄の元素は...強さと、犠牲だ」

「犠牲?」

「鉄は強い。だが、そのためには犠牲が必要だ。熱に耐え、叩かれ、削られる」

フェルムは秀城を見た。

「お前も、この三日間で痛みに耐えただろう。それが犠牲だ」

秀城は頷いた。確かに、苦しかった。

「だが、その犠牲の先に、成長がある。強さがある」

「...はい」

「鉄の声を聞け」

秀城は目を閉じた。

鉄。強靭な金属。武器や道具の材料。

「鉄は錆びる。でも、それでも使われ続ける。なぜなら、鉄は必要とされるから」

必要とされる。

秀城も、誰かに必要とされたい。

「鉄は孤独じゃない。炭素と結びつき、鋼になる。他の元素と協力する」

協力。仲間。

秀城にも、今は仲間がいる。

「鉄の声を...」

意識を集中する。

すると、感覚が生まれた。硬さ、重さ、そして...温もり。

「聞こえる...」

強くなりたい、役に立ちたい、守りたい。

それは、秀城自身の願いだった。

この世界で、仲間を守りたい。誰かの役に立ちたい。

「俺は...強くなる」

その瞬間、秀城の体が銀色の光に包まれた。

╔═══════════════════════════════════╗

║ 重要!元素習得! ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 【鉄(Fe)を習得しました!】 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 原子番号:26 ║

║ 元素記号:Fe ║

║ 分類:遷移金属 ║

║ 特性:強靭性、磁性、酸化性 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 習得可能魔法: ║

║ ・鉄壁(コスト:15MP) ║

║ ・鉄刃(コスト:12MP) ║

║ ・磁力操作(コスト:20MP) ║

║ ・鉄鎖(コスト:18MP) ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ ステータス上昇! ║

║ 攻撃力:76→80(+4) ║

║ 防御力:65→72(+7) ║

║ HP:330→350(+20) ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 重要!融合魔法解放! ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 【(スチール)】 ║

║ Fe+C (鉄+炭素) ║

║ コスト:25MP ║

║ 効果:武器・防具の強度を大幅強化 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 【酸化鉄(アイアンオキシド)】 ║

║ Fe₂+O₃ (鉄x2+酸素x3) ║

║ コスト:22MP ║

║ 効果:赤熱の刃、磁力強化 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 【硫化鉄(アイアンサルファイド)】 ║

║ Fe+S (鉄+硫黄) ║

║ コスト:20MP ║

║ 効果:火花発生、着火剤 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 【リン酸鉄(アイアンフォスフェート)】║

║ Fe+P+O₄ (鉄+リン+酸素x4) ║

║ コスト:28MP ║

║ 効果:エネルギー貯蔵、持続強化 ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 特別ボーナス! ║

║ 修行による習得! ║

║ 経験値+150! ║

╠═══════════════════════════════════╣

║ 経験値:30→180/900 ║

╚═══════════════════════════════════╝

「やった!鉄を習得した!」

ナトリが歓声を上げた。彼女たちも見守っていたのだ。

「それに、融合魔法が四つも!」

「よくやった、メンデレ」

フェルムは満足そうに頷いた。

「お前は、鉄の本質を理解した。これからも、鍛錬を怠るな」

「はい!ありがとうございました!」

秀城は深く頭を下げた。

「じゃあ、行くといい。お前の旅は、まだ続くんだろ?」

「はい。次は、クリスタルシティへ」

「そうか。クリスタルシティなら、銀使いや金使いもいるだろう。頑張れよ」

フェルムは手を振った。

「ありがとうございました!」

三人は鍛冶場を後にした。


その夜、宿で秀城はステータスを確認した。

╔═══════════════════════════╗

║ ステータス ║

╠═══════════════════════════╣

║ 名前:メンデレ・秀城 ║

║ レベル:9 ║

║ 職業:元素使い ║

╠═══════════════════════════╣

║ HP:350/350 ║

║ MP:270/270 ║

║ 攻撃力:80 ║

║ 防御力:72 ║

║ 魔力:100 ║

║ 素早さ:53 ║

║ 賢さ:77 ║

║ 運:21 ║

╠═══════════════════════════╣

║ 習得元素:8/118 ║

║ ・ナトリウム(Na) ║

║ ・塩素(Cl) ║

║ ・酸素(O) ║

║ ・水素(H) ║

║ ・炭素(C) ║

║ ・リン(P) ║

║ ・硫黄(S) ║

║ ・鉄(Fe) ║

╠═══════════════════════════╣

║ 習得融合魔法:19 ║

║ (既存15+新規4) ║

╠═══════════════════════════╣

║ 所持金:444リア ║

║ 経験値:180/900 ║

╚═══════════════════════════╝

「八つ目の元素。まだまだ先は長いけど...」

秀城は窓の外を見た。明日は、クリスタルシティへ。

そこで、どんな出会いが待っているのだろう。

「楽しみだな」

秀城は笑って、ベッドに横になった。


感想等お待ちしています。


次回予告10/28(火)

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