第5章:鉱山の街と硫黄の試練
翌朝、三人は鉱山の街へ向けて出発した。
エレメンタから東へ、馬車で半日の距離。街の名は『サルファタウン』。硫黄の街、という意味だ。
馬車の中で、オクシアが地図を広げた。
「サルファタウンは、硫黄鉱山で栄えている街よ。硫黄は、火薬や薬品の原料になるから、需要が高いの」
「でも、最近は魔物の被害が増えてるって聞きました」
ナトリが心配そうに言った。
「鉱山の奥に、強力な魔物が巣食ってるらしいわ。ギルドも討伐依頼を出してるけど、まだ成功した冒険者はいないって」
「レベルはどれくらい?」
「推定レベル8から10。私たちには、まだ厳しいかもしれない」
秀城は少し緊張した。自分はまだレベル6。二つ以上レベルが上の敵は危険だ。
「でも、硫黄使いのサルファさんに会うだけなら、危険はないはず。鉱山の奥まで行かなければ」
馬車は平原を進んでいった。道は整備されていて、ところどころに道標が立っている。
二時間ほど走ったところで、前方に山が見えてきた。
「あれがサルファ山脈ね」
灰色がかった山々が連なっている。山肌には、黄色い部分が見える。おそらく硫黄の鉱脈だろう。
さらに一時間進むと、山の麓に街が見えてきた。
サルファタウン。
エレメンタよりは小さいが、活気のある街だった。建物は石造りで、煙突から煙が立ち上っている。おそらく、硫黄を精製する工場だろう。
街に入ると、硫黄の匂いがした。刺激的な、独特の匂い。
「うっ、臭いですね...」
ナトリが鼻を押さえた。
「硫黄の街だから仕方ないわね」
馬車は街の中央の広場で停まった。三人は馬車から降りた。
「まず、この街のギルドに行きましょう。サルファさんの居場所を聞かないと」
サルファタウンのギルドは、エレメンタのものより小さかった。二階建ての木造建築で、看板には剣と鶴嘴が交差している。
中に入ると、数人の冒険者が食事をしていた。皆、汚れた作業着を着ていて、鉱山作業員のようだ。
「いらっしゃい」
カウンターから、筋骨隆々とした男性が声をかけてきた。五十代くらいだろうか。顔には古い傷跡がある。
「エレメンタから来た冒険者です。サルファ・ブリムストンさんを探しているんですが」
「サルファか。あいつなら、今日は鉱山にいるはずだ」
「鉱山に?」
「ああ。硫黄の採掘と、魔物の監視をやってる。鉱山の入口に詰所があるから、そこで会えるだろう」
「ありがとうございます」
三人はギルドを出て、鉱山へと向かった。
鉱山の入口は、街から少し離れた山の斜面にあった。
大きな洞窟の入口で、その前には木造の詰所が建っている。何人かの作業員が、鉱石を運んでいる。
詰所に近づくと、一人の女性が出てきた。
年齢は二十八歳くらい。黄色い髪を短く切り、同じく黄色い瞳をしている。作業服を着ていて、腰にはつるはしと短剣を下げている。
顔には自信と強さが滲んでいた。
「あんたら、見ない顔だね。旅の冒険者かい?」
「はい。エレメンタから来ました。サルファ・ブリムストンさんを探しているんですが」
「私がサルファだ。で、何の用だい?」
「実は、転移者の方が、硫黄の元素を習得したいと...」
ナトリが説明を始めた。
「転移者?」
サルファは秀城を見た。鋭い目つきで、値踏みするように。
「ああ、噂は聞いてる。全元素習得能力を持ってるってやつだろ?」
「はい」
「で、私に硫黄を教えろと?」
「お願いできますか?」
サルファは腕を組んで考えた。
「いいだろう。だが、条件がある」
「やっぱり...」
秀城は苦笑した。みんな、何か条件をつけてくる。
「最近、鉱山の奥に強力な魔物が出るんだ。『硫黄の悪魔』って呼ばれてる。そいつのせいで、奥の硫黄鉱脈に近づけない」
「硫黄の悪魔...」
「討伐を手伝ってくれ。成功したら、硫黄を教えてやる」
秀城は二人を見た。ナトリとオクシアは頷いた。
「分かりました。でも、推定レベル8から10の敵なんですよね?」
「ああ。だから、今すぐ行けとは言わない」
サルファは鉱山の入口を指差した。
「まずは、浅い層で経験を積んでくれ。レベルを上げてから、奥に挑む。それでどうだ?」
「それなら、安全ですね」
「じゃあ、決まりだ。今から案内してやる」
サルファはつるはしを手に取った。
「ついてきな」
鉱山の中は、松明で照らされていた。坑道は広く、レールが敷かれている。トロッコが鉱石を運ぶためのものだろう。
「鉱山は三層に分かれてる。第一層は浅い場所で、魔物も弱い。レベル4から6くらいだ」
サルファが説明しながら進んでいく。
「第二層は中間で、レベル6から8。第三層が最深部で、硫黄の悪魔がいる」
坑道の両側には、黄色い鉱脈が見える。硫黄だ。
「硫黄は火山活動で生成される。ここは昔、火山だったんだ」
「今は活動してないんですか?」
「休火山だな。でも、地下にはまだマグマが流れてる。だから、奥に行くほど暑い」
五分ほど進むと、坑道が広い空間に開けた。
そこは採掘場のようだった。壁面には硫黄の鉱脈があり、いくつかのつるはしが置かれている。
「ここが第一層の採掘場だ。さて、と...」
サルファが周囲を警戒した。
「魔物が来るぞ。準備しろ」
秀城たちは武器を構えた。
地面が震えた。そして、壁から何かが現れた。
巨大な芋虫のような生物。体長は二メートル。灰色の体に、黄色い斑点がある。口には鋭い牙が並んでいる。
╔═══════════════════════════╗
║ サルファワーム ║
╠═══════════════════════════╣
║ レベル:5 ║
║ HP:150/150 ║
║ MP:30/30 ║
║ 攻撃力:25 ║
║ 防御力:18 ║
║ 素早さ:10 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 弱点:火属性、水属性 ║
║ 耐性:物理 ║
╠═══════════════════════════╣
║ スキル: ║
║ ・硫黄ガス噴出 ║
║ ・かみつき ║
╠═══════════════════════════╣
║ ドロップアイテム ║
║ ・硫黄の結晶 ║
║ ・ワームの皮 ║
╚═══════════════════════════╝
「サルファワームだ!火か水の魔法で攻撃しろ!」
サルファが叫んだ。
「【炎の玉】!」
ナトリが魔法を放った。炎の玉がワームに命中し、爆発した。
弱点を突いた!
サルファワームに55のダメージ!
HP:150→95
「よし、効いてる!俺も!【水魔法】!」
秀城は水を生成し、ワームに向かって放った。水がワームの体を包み、冷却する。
弱点を突いた!
サルファワームに48のダメージ!
HP:95→47
ワームは苦しそうに身をよじった。そして、口から黄色いガスを噴出した。
「硫黄ガスだ!吸うな!」
サルファの警告に、三人は息を止めた。黄色いガスが周囲に広がる。目が痛い。刺激臭が鼻を突く。
「【酸素供給】!」
オクシアが魔法を唱えた。新鮮な酸素が三人を包み、ガスを吹き飛ばした。
「ありがとう、オクシア!」
「今だ、トドメを!」
「【炎の矢】!」
ナトリの魔法が、ワームの頭部に直撃した。ワームは悲鳴を上げて倒れ、光の粒子となって消えた。
╔═══════════════════════════╗
║ サルファワームを倒した! ║
╠═══════════════════════════╣
║ 経験値:40を獲得! ║
║ お金:25リアを獲得! ║
║ アイテム入手! ║
║ ・硫黄の結晶 x2 ║
║ ・ワームの皮 x1 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 経験値:90→130/350 ║
║ 所持金:129→154リア ║
╚═══════════════════════════╝
「やるじゃないか。連携もいい」
サルファが褒めた。
「この調子で、もっと戦闘経験を積め。レベルが上がれば、第二層にも行けるだろう」
その後、三人はサルファの指導の下、第一層で魔物を狩り続けた。
サルファワーム、硫黄コウモリ、マグマスライム...
様々な魔物と戦い、経験値を稼いでいった。
そして、三時間後——
╔═══════════════════════════════════╗
║ レベルアップ! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ レベル:6→7 ║
║ HP:210→245(+35) ║
║ MP:150→185(+35) ║
║ 攻撃力:34→40(+6) ║
║ 防御力:41→48(+7) ║
║ 魔力:60→70(+10) ║
║ 素早さ:32→38(+6) ║
║ 賢さ:49→57(+8) ║
║ 運:13→15(+2) ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 次のレベルまで:500経験値 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【元素融合強化 Lv.1】 ║
║ 効果:融合魔法の威力+15% ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【属性耐性 Lv.1】 ║
║ 効果:全属性ダメージ-10% ║
╚═══════════════════════════════════╝
「レベル7!それに、いいスキルが二つも!」
ナトリが喜んだ。彼女もレベル7に到達していた。オクシアはレベル8。
「よし、これなら第二層にも行けるな」
サルファが頷いた。
「休憩してから、第二層に挑戦するぞ」
第二層への入口は、さらに奥にあった。
坑道は徐々に下っていき、温度も上がってきた。汗が滲む。
「暑いですね...」
「第二層は地下深くだからな。マグマに近い」
サルファが説明した。
「魔物もより強力だ。油断するなよ」
第二層に入ると、周囲の様子が変わった。
壁は赤黒く、溶岩のような色をしている。地面からは熱気が立ち上り、ところどころで硫黄の蒸気が噴出している。
「ここが第二層だ。硫黄の濃度も高い。ガスマスクがない人は、呼吸に気をつけろ」
秀城は【酸素供給】の魔法を自分と仲間にかけた。新鮮な酸素が肺を満たす。
「便利な魔法だな」
サルファが感心した。
前方から、低い唸り声が聞こえてきた。
「来たぞ!」
暗闇から、三匹の生物が現れた。
犬のような形状だが、体は岩でできている。目は赤く光り、口からはマグマが垂れている。
╔═══════════════════════════╗
║ マグマハウンド ║
╠═══════════════════════════╣
║ レベル:7 ║
║ HP:200/200 ║
║ MP:50/50 ║
║ 攻撃力:38 ║
║ 防御力:30 ║
║ 魔力:25 ║
║ 素早さ:35 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 弱点:水属性 ║
║ 耐性:火属性、物理 ║
╠═══════════════════════════╣
║ スキル: ║
║ ・マグマ噛みつき ║
║ ・火炎放射 ║
║ ・体当たり ║
╠═══════════════════════════╣
║ ドロップアイテム ║
║ ・マグマの核 ║
║ ・火の魔石 ║
╚═══════════════════════════╝
「マグマハウンドだ!水魔法が有効だぞ!」
「任せて!【水魔法】!」
秀城は大量の水を生成し、三匹に向かって放った。水がハウンドたちを包み、ジュウッという音を立てて蒸気が上がった。
弱点を突いた!
マグマハウンドに65のダメージ! x3
HP:200→135
「よし、効いてる!続けて!」
ナトリとオクシアも魔法を放った。炎と氷の魔法が、ハウンドたちを襲う。
だが、ハウンドたちも反撃してきた。一匹が秀城に向かって飛びかかってきた。
「【マグマ噛みつき】!」
「くっ!【ダイヤモンド壁】!」
秀城は炭素魔法で防御壁を作った。透明なダイヤモンドの壁が、ハウンドの攻撃を防ぐ。
ダメージ軽減!
HP:245→225
MP:185→165
「硬い壁だな!」
サルファが驚いた声を上げた。
「でも、完全には防げない...!」
秀城は反撃に転じた。
「【水蒸気爆発】!」
水素、酸素、ナトリウムの三つの元素を融合させた。高温の水蒸気が爆発的に膨張し、ハウンドたちを包み込んだ。
融合魔法!元素融合強化!
マグマハウンドに98のダメージ! x3
HP:135→37
「すごい威力!」
「トドメだ!【炎の矢】連射!」
ナトリが三本の炎の矢を放った。それぞれがハウンドに命中し、倒した。
╔═══════════════════════════╗
║ 戦闘勝利! ║
╠═══════════════════════════╣
║ 経験値:150を獲得! ║
║ お金:90リアを獲得! ║
║ アイテム入手! ║
║ ・マグマの核 x3 ║
║ ・火の魔石 x2 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 経験値:130→280/500 ║
║ 所持金:154→244リア ║
╚═══════════════════════════╝
「やるな。レベル7の魔物を三匹同時に倒すとは」
サルファは感心した様子だった。
「この調子なら、もう少しレベルを上げれば、硫黄の悪魔とも戦えるかもしれない」
その後も、第二層で戦闘を続けた。
マグマハウンド、硫黄ドラゴン(小型)、炎の精霊...
強力な敵との戦いで、秀城たちは確実に成長していった。
そして、さらに二時間後——
╔═══════════════════════════════════╗
║ レベルアップ! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ レベル:7→8 ║
║ HP:245→285(+40) ║
║ MP:185→225(+40) ║
║ 攻撃力:40→47(+7) ║
║ 防御力:48→56(+8) ║
║ 魔力:70→82(+12) ║
║ 素早さ:38→45(+7) ║
║ 賢さ:57→66(+9) ║
║ 運:15→18(+3) ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 次のレベルまで:700経験値 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【二刀流 Lv.1】 ║
║ 効果:武器を両手に持てる ║
║ 攻撃速度+10% ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【魔力回復 Lv.1】 ║
║ 効果:戦闘外でのMP回復速度+20% ║
╚═══════════════════════════════════╝
「レベル8!」
秀城は拳を握った。これで、硫黄の悪魔と互角に戦えるレベルになった。
「よし、準備は整ったな」
サルファが頷いた。
「明日、第三層に挑戦するぞ。今日はここまでにして、街で休息だ」
三人は鉱山を出て、街へと戻った。
その夜、宿屋の食堂で三人は作戦会議をしていた。
「硫黄の悪魔...どんな魔物なんでしょうか」
ナトリが不安そうに聞いた。
「詳細は不明だけど、硫黄を操る魔物らしいわ。おそらく、毒ガス攻撃が主体」
オクシアが答えた。
「なら、【酸素供給】で対抗できるな」
秀城は考えた。
「それと、水魔法。硫黄は水に溶けるから、洗い流せるかもしれない」
「あと、塩素も有効かも。次亜塩素酸で消毒できる」
化学知識を総動員して、戦略を練る。
「明日、必ず倒そう」
三人は決意を固めた。
翌朝、四人は第三層への入口に立っていた。
サルファも一緒だ。
「第三層は危険だ。私も同行する」
入口の扉は、鉄製で頑丈だった。鍵がかかっている。
「この先は、通常は封鎖されてる。硫黄の悪魔が出てからは、特にな」
サルファは鍵を開けた。重い扉がゆっくりと開く。
中からは、熱気と硫黄の匂いが溢れ出てきた。
「行くぞ」
四人は第三層に入った。
第三層は、まさに地獄のような場所だった。
床は赤く光り、溶岩が流れている。壁からは硫黄のガスが噴出し、天井からは火山灰が降っている。
温度は五十度を超えているだろう。呼吸するだけで喉が痛い。
「【酸素供給】!」
秀城は全員に魔法をかけた。これで呼吸は楽になる。
「前方に注意しろ。悪魔は、この先の最深部にいる」
サルファが先導する。
溶岩を避けながら、慎重に進んでいく。
十分ほど進むと、広大な空間に出た。
そこは、巨大な火口のような場所だった。中央には溶岩の池があり、その向こうに巨大な影が見えた。
「あれが...」
影がゆっくりと動いた。そして、姿を現した。
悪魔、という名にふさわしい姿だった。
体長は五メートル。人型だが、体は黒い岩と硫黄でできている。頭には角が生え、背中には火の翼がある。目は黄色く光り、口からは硫黄のガスが漏れている。
╔═══════════════════════════╗
║ 硫黄の悪魔 ║
╠═══════════════════════════╣
║ レベル:10 ║
║ HP:500/500 ║
║ MP:200/200 ║
║ 攻撃力:55 ║
║ 防御力:45 ║
║ 魔力:60 ║
║ 素早さ:40 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 弱点:水属性、氷属性 ║
║ 耐性:火属性、物理 ║
║ 無効:毒、硫黄 ║
╠═══════════════════════════╣
║ スキル: ║
║ ・硫黄ガス噴射 ║
║ ・酸性雨 ║
║ ・マグマ生成 ║
║ ・硫黄爆発 ║
║ ・再生 ║
╠═══════════════════════════╣
║ ドロップアイテム ║
║ ・硫黄の魔石(大) ║
║ ・悪魔の角 ║
║ ・硫黄の結晶(特大) ║
╚═══════════════════════════╝
「HP500...!」
今まで戦った中で、最も強力な敵だ。
「グオオオオオッ!」
悪魔が咆哮した。その声は洞窟全体を震わせた。
「散開!攻撃が来るぞ!」
サルファの叫びと同時に、悪魔が口から硫黄のガスを噴射した。
黄色いガスが広範囲に広がる。
「【水魔法】!」
秀城は大量の水を生成し、ガスを洗い流した。水と硫黄が反応し、白い煙が上がる。
「【炎の矢】!」
ナトリが攻撃を開始した。炎の矢が悪魔に命中した。
悪魔は火属性に耐性がある!
ダメージが軽減された!
硫黄の悪魔に20のダメージ!
HP:500→480
「火が効きにくい!」
「水で攻めろ!」
「【水魔法】!」
秀城は水の奔流を放った。大量の水が悪魔を直撃した。
弱点を突いた!
硫黄の悪魔に85のダメージ!
HP:480→395
「効いてる!」
だが、悪魔は素早く反撃してきた。
「【酸性雨】!」
悪魔が手を振ると、天井から黄色い雨が降ってきた。硫酸の雨だ!
「まずい!【ダイヤモンド壁】!」
秀城は防御壁を展開したが、酸性雨は壁を溶かし始めた。
「くそっ、硫酸には弱い...!」
「【酸素障壁】!」
オクシアが追加で障壁を張った。二重の防御で、何とか雨を防ぐ。
「サルファさん、攻撃を!」
「任せな!【硫黄爆弾】!」
サルファが硫黄の塊を投げた。それは悪魔に命中し、爆発した。
硫黄の悪魔に40のダメージ!
HP:395→355
「私も!【氷の槍】!」
オクシアが氷魔法を放った。氷の槍が悪魔の胸を貫いた。
弱点を突いた!
硫黄の悪魔に95のダメージ!
HP:355→260
「半分まで削った!」
だが、悪魔の体が赤く光り始めた。
「【再生】!」
悪魔の傷が癒えていく!
硫黄の悪魔HP回復!
HP:260→310
「再生した...!」
「このままじゃキリがない!一気に畳みかけるぞ!」
サルファが叫んだ。
「メンデレ、お前の最大火力の融合魔法を使え!私たちが時間を稼ぐ!」
「分かりました!」
秀城は両手を前に出した。今まで習得した元素すべてを集中させる。
水素、酸素、炭素、リン、ナトリウム、塩素...
これらを組み合わせて、最強の攻撃魔法を創る。
「みんな、三十秒時間をください!」
「任せろ!【硫黄の壁】!」
サルファが硫黄の壁を作った。悪魔の攻撃を防ぐ。
「【炎の玉】連射!」
ナトリが牽制攻撃を続ける。
「【氷の槍】!」
オクシアも攻撃を続けた。
その間、秀城は魔法を構築していった。
「まず、水素と酸素で水...」
右手に水が生成される。
「そこに硫黄を加える...」
左手に硫黄の結晶を生成する。
「水と硫黄を反応させて...硫化水素...いや、違う!」
秀城は化学反応式を頭の中で組み立てた。
「水に硫黄酸化物を溶かして...硫酸!」
硫酸。強力な酸。最も腐食性の高い物質の一つ。
「H₂SO₄...水素二つ、硫黄一つ、酸素四つ!」
秀城の両手が激しく光った。透明な液体が生成される。だが、その液体からは強烈な魔力が放たれている。
╔═══════════════════════════════════╗
║ 新融合魔法創造! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 【硫酸】 ║
║ H₂+S+O₄ (水素x2+硫黄+酸素x4) ║
║ コスト:45MP ║
║ 威力:超大 ║
║ 効果:強力な腐食ダメージ ║
║ 防御力を無視する ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 警告!この魔法は危険です! ║
║ 使用には細心の注意を! ║
╚═══════════════════════════════════╝
「完成した!みんな、離れて!」
三人は急いで後退した。
「食らえ!【硫酸】!」
秀城は生成した硫酸を、悪魔に向かって放った。
透明な液体が空中を飛び、悪魔の全身にかかった。
「グギャアアアアッ!」
悪魔が絶叫した。体が激しく発光し、煙を上げている。硫酸が、悪魔の岩の体を溶かしていく。
╔═══════════════════════════╗
║ 融合魔法!元素融合強化! ║
║ クリティカルヒット! ║
║ 防御力無視! ║
╠═══════════════════════════╣
║ 硫黄の悪魔に235のダメージ! ║
║ HP:310→75 ║
╠═══════════════════════════╣
║ 継続ダメージ発生! ║
║ 毎秒10ダメージ! ║
╚═══════════════════════════╝
「すごい威力!」
悪魔は苦しみながらも、最後の力を振り絞った。
「【硫黄爆発】!」
悪魔の体が膨張し始めた。自爆攻撃だ!
「まずい!爆発するぞ!」
「させるか!【水蒸気爆発】!」
秀城は追撃魔法を放った。高温の水蒸気が悪魔を包み込んだ。
悪魔の自爆と、秀城の魔法が同時に爆発した。
轟音。
爆風が四人を襲った。
「うわあああっ!」
秀城は吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。全身が痛い。
ダメージ!
HP:285→180
MP:225→135
視界が霞む。だが、意識は保っている。
煙が晴れると、悪魔の姿はなかった。光の粒子となって消えている。
╔═══════════════════════════════════╗
║ ボス討伐成功! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 硫黄の悪魔を倒した! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 経験値:350を獲得! ║
║ お金:200リアを獲得! ║
║ アイテム入手! ║
║ ・硫黄の魔石(大) x1 ║
║ ・悪魔の角 x2 ║
║ ・硫黄の結晶(特大) x3 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 経験値:280→630/700 ║
║ 所持金:244→444リア ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 称号獲得! ║
║ 【悪魔殺し】 ║
║ 効果:悪魔系の敵に+20%ダメージ ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 特別ボーナス! ║
║ 新魔法習得により経験値+100! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 経験値:630→730/700 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ レベルアップ! ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ レベル:8→9 ║
║ HP:285→330(+45) ║
║ MP:225→270(+45) ║
║ 攻撃力:47→55(+8) ║
║ 防御力:56→65(+9) ║
║ 魔力:82→95(+13) ║
║ 素早さ:45→53(+8) ║
║ 賢さ:66→77(+11) ║
║ 運:18→21(+3) ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 次のレベルまで:900経験値 ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【危険物取扱 Lv.1】 ║
║ 効果:危険な魔法の制御が容易に ║
║ 暴発リスク-50% ║
╠═══════════════════════════════════╣
║ 新スキル習得! ║
║ 【魔力増幅 Lv.1】 ║
║ 効果:魔法威力+10% ║
╚═══════════════════════════════════╝
「レベル9...」
秀城は立ち上がった。体は痛いが、回復ポーションを飲めば治る。
「みんな、大丈夫か!?」
「ああ、何とか...」
ナトリとオクシアも無事だった。少し傷ついているが、致命傷ではない。
「サルファさんは?」
サルファは壁に寄りかかっていた。額から血が流れている。
「大丈夫だ...ちょっと頭を打っただけだ」
「【癒しの息吹】!」
オクシアがサルファを治療した。傷が癒えていく。
「ありがとう...助かった」
サルファは立ち上がった。
「やったな...硫黄の悪魔を倒した...」
四人は顔を見合わせた。そして、笑った。
「やったぞ!」
「勝ちました!」
「お疲れ様!」
戦いは終わった。
鉱山を出ると、太陽の光が眩しかった。
サルファタウンに戻ると、街の人々が歓迎してくれた。
「硫黄の悪魔を倒したって本当か!?」
「すごい!もう安全に採掘できるぞ!」
「冒険者たちに乾杯!」
その夜、ギルドで祝賀会が開かれた。
食事と酒が振る舞われ、冒険者たちが次々と祝福の言葉をかけてきた。
秀城は酒が弱いので果実ジュースを飲んでいたが、それでも気分は高揚していた。
「メンデレ」
サルファが近づいてきた。
「約束通り、硫黄を教えてやる。明日、時間あるか?」
「もちろんです」
「よし。じゃあ、明日の朝、鉱山で」
翌朝、秀城はサルファと共に鉱山の第一層にいた。
「硫黄の元素は...複雑だ」
サルファは硫黄の結晶を手に取った。
「硫黄は、生命と死、両方に関わる元素だ」
「生命と死?」
「生命に必要なアミノ酸には、硫黄が含まれている。でも、硫黄は有毒なガスも作る。硫化水素、二酸化硫黄...」
サルファは真剣な顔で言った。
「硫黄は、矛盾を抱えた元素なんだ。それを理解しないと、硫黄とは共鳴できない」
「矛盾...」
秀城は考えた。矛盾。自分の人生も、矛盾だらけだった。
科学者を目指したのに、会社員になった。自由を求めたのに、束縛されていた。
でも、今、この異世界で新しい道を歩いている。
「矛盾を受け入れるのは...難しくないです」
秀城は微笑んだ。
「俺自身が、矛盾の塊ですから」
「なら、簡単だな」
サルファは秀城の前に立った。
「目を閉じろ。硫黄をイメージしろ。黄色い結晶、火山の匂い、そして...二面性」
秀城は目を閉じた。
硫黄。黄色い元素。火山の元素。
「硫黄は燃える。青い炎を上げて。でも、その炎は有毒なガスを作る」
燃える。秀城の心も燃えている。でも、その炎は時に苦しみも生む。
「硫黄の声を聞け」
秀城は意識を集中した。
すると、感覚が生まれた。熱さと冷たさ。光と闇。生命と死。
すべてが混ざり合っている。
「...聞こえる」
燃えたい、でも恐れられる。必要とされたい、でも避けられる。
それは、秀城自身の感情だった。
認められたい、でも自信がない。成長したい、でも失敗が怖い。
「俺は...矛盾を受け入れる」
その瞬間、秀城の体が黄色い光に包まれた。
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║ 重要!元素習得! ║
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║ 【硫黄(S)を習得しました!】 ║
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║ 原子番号:16 ║
║ 元素記号:S ║
║ 分類:カルコゲン ║
║ 特性:可燃性、毒性、二面性 ║
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║ 習得可能魔法: ║
║ ・硫黄弾(コスト:10MP) ║
║ ・硫化水素(コスト:18MP) ║
║ ・二酸化硫黄(コスト:20MP) ║
║ ・硫黄爆発(コスト:30MP) ║
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║ ステータス上昇! ║
║ 魔力:95→100(+5) ║
║ 攻撃力:55→58(+3) ║
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║ 重要!融合魔法解放! ║
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║ 【硫酸】は既に習得済み! ║
║ 戦闘中の創造により習得! ║
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║ 【硫化水素】║
║ H₂+S (水素x2+硫黄) ║
║ コスト:22MP ║
║ 効果:猛毒ガス生成 ║
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║ 【二酸化硫黄】║
║ S+O₂ (硫黄+酸素x2) ║
║ コスト:20MP ║
║ 効果:漂白・殺菌 ║
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║ 【硫化ナトリウム(ソディウムサルファイド)】║
║ Na₂+S (ナトリウムx2+硫黄) ║
║ コスト:25MP ║
║ 効果:腐食・還元 ║
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║ 【二硫化炭素】║
║ C+S₂ (炭素+硫黄x2) ║
║ コスト:28MP ║
║ 効果:可燃性溶媒生成 ║
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║ 魔力が100に到達! ║
║ 特別ボーナス! ║
║ スキル【魔力の奔流】習得! ║
║ 効果:魔法詠唱時間-20% ║
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「七つ目の元素!そして、融合魔法が五つも!」
サルファが驚いた。
「それに、魔力が100に...すごい成長速度だな」
秀城は自分の手を見た。七つの元素の力が宿っている。
「ありがとうございました、サルファさん」
「礼には及ばない。お前が悪魔を倒してくれたおかげで、街は救われたんだ」
サルファは秀城の肩を叩いた。
「これからも、頑張れよ。全元素習得、応援してる」
「はい!」
その日の午後、三人はサルファタウンを出発した。
馬車でエレメンタに戻る途中、秀城はステータスを確認した。
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║ ステータス ║
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║ 名前:メンデレ・秀城 ║
║ レベル:9 ║
║ 職業:元素使い ║
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║ HP:330/330 ║
║ MP:270/270 ║
║ 攻撃力:58 ║
║ 防御力:65 ║
║ 魔力:100 ║
║ 素早さ:53 ║
║ 賢さ:77 ║
║ 運:21 ║
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║ 習得元素:7/118 ║
║ ・ナトリウム(Na) ║
║ ・塩素(Cl) ║
║ ・酸素(O) ║
║ ・水素(H) ║
║ ・炭素(C) ║
║ ・リン(P) ║
║ ・硫黄(S) ║
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║ 習得融合魔法:15 ║
║ ・塩結晶(NaCl) ║
║ ・水魔法(H₂O) ║
║ ・水蒸気爆発 ║
║ ・次亜塩素酸(HOCl) ║
║ ・二酸化炭素(CO₂) ║
║ ・メタン(CH₄) ║
║ ・炭酸ナトリウム ║
║ ・リン酸(H₃PO₄) ║
║ ・リン化水素(PH₃) ║
║ ・硫酸(H₂SO₄) ║
║ ・硫化水素(H₂S) ║
║ ・二酸化硫黄(SO₂) ║
║ ・硫化ナトリウム ║
║ ・二硫化炭素(CS₂) ║
║ (他、未発見の組み合わせ多数)║
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║ 習得スキル:10 ║
║ 所持金:444リア ║
║ 経験値:30/900 ║
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「七つの元素、十五の融合魔法...」
まだ道のりは長いが、確実に前進している。
「次は、どの元素を狙いますか?」
ナトリが聞いた。
「窒素だな。CNOPSの最後の一つ」
「窒素使いは、北の国境にいるんでしたっけ」
「ええ。でも、北は遠いわ。旅の準備が必要ね」
オクシアが地図を見た。
「エレメンタから北の国境まで、馬車で三日。途中、いくつかの街を経由する」
「長旅になりますね」
「でも、その途中で他の元素使いにも会えるかもしれない」
秀城は窓の外を見た。夕日が沈みかけている。
「この調子で行けば、一年以内に半分くらいは習得できるかな」
「絶対できますよ!」
ナトリが励ました。
「それに、私たちもまだまだ強くなります。レベル10目指して頑張りましょう!」
馬車は夕暮れの平原を進んでいった。
三人の冒険は、まだ始まったばかりだ。
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