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私はおかしいのか? 世間一般的にはおかしいとか言われるけど私にはそうは思わない、だって好きなっちゃったんだから仕方ない。 私は本気!




来た、あの人だ。 また偶然会ったフリを装う。 待ち伏せしてたなんて超恥ずかしいし。




「あれ? おはよう、よく会うね」

「は、はひッ! そ、そうでよね、ははッ……」

「イツキお姉さんおはよう」

「おはよう来季くん」 




嬉しい! ちょっと話せた、一言だけだけどこれだけで今日も頑張れる。





私は新世イツキ、昨日17歳になったばかりの高校生だ。 親は居ない。 ううん、居たんだけど離婚してお母さんに引き取られた、新世もお母さんの苗字だ。 でも私はお母さんと険悪になった。 




離婚の原因はお母さんだ、厳しくて厳しくて息苦しいだけの毎日だった。 お父さんとも喧嘩が絶えなかった。 




お父さんは私を引き取れずに何処か行ってしまった。 お父さんにとっても私はその程度の存在で「イツキは可愛いね」ってよく撫でてくれたのもまやかしだったんだって気付いた時、感情が爆発してお母さんからも離れて今は一人暮らしをしている。




お金の方は大丈夫なんだろう、お母さんから祖母へと通して毎月生活費をくれる。 嫌われたんだろうね、まぁもうどうでもいい。 私は親にはもうお金くらいしか期待しなくなっていた。







◇◇◇








そんなこんなである日私は出逢った。




私は嘘をついた自分自身に。 親に期待なんかしてないはずなんだけど、どうしようもなく寂しくなった。




休日、外は雨、私は1人。 雨に打たれたい気分だった、どうせ私がいなくなってもどうでもいいんだとヤケになっていた。 例えばこうして人通りの少ない公園のベンチで丸くなっていて誰かに攫われてもどうでもいいか。 そう思って雨に打たれていた時だった、声が聴こえた。




「ねえお父さん、あそこに人居るよ」

「え? あ、本当だ」




ああ、2人の足音が近付いてくる。 顔を伏せているけど足音は近くなって……




「君、こんなところで雨に当たったら風邪引いちゃうよ?」

「はい、ごめんなさい」




雨が当たらなくなった、見上げると傘があった。 




「これあげるよ、だからこれ以上雨に当たっちゃダメだよ?」




私は再度俯いた。




「いいです、こんなところで縮こまってる変な女に傘あげても何もいいことなんてありませんよ」

「えッ? ああ、う〜ん、でもほら、君の親とか心配しちゃうよ?」

「大丈夫です、気にしないで下さい。 あなたに何がわかるんですか?」




刺々しい口調になってしまう、優しくしてくれたのに。 




「ごめんね、だからってやっぱり傘くらいはさした方がいいよ? 女の子がこんなところで雨に濡れてたらおじさんだって心配するよ」




心配? するんだ私に。 そう思って今度はその人を見る。




どこにでも居る、普通のおじさんだった。 少なくとも道端で通りすがろうと目もくれないパッとしないおじさん。 それとおじさんの子供だよね、小学生くらい? 不思議そうに私を見てる。




「…… どうしようもなく落ち込んだから、なんとなく雨に打たれたくなったんです。 それ以外何もありません」




心配してくれてるようだからこんなところで雨に打たれる理由を話した。 これで変な人だとわかっただろう、さっさとどこかへ行って欲しい。




「そっか…… そんな時もあるよね多分。 じゃあ傘はここに置いとくね」

「え?」




その人は私に触れないよう気を付けて私の肩と手に傘を預けた、そしてニコッと笑った。




私は雷に打たれたような衝撃が走った。 




なんでかはわからない、ヤケになっていたから? そういう気分だったから? 誰でも良かったの? でも言葉にならない、説明出来ない。




パッとしないけどとても優しい、優しい男の人。 でも上辺だけじゃなくて? ううん、そんなことより今は……




「あッ、ありがとう…… ございます。 あ、でも傘私に貸しちゃったらそっちが濡れちゃいます」

「あはは、大丈夫だよ。 うちすぐそこだから。 じゃあ来季ダッシュで帰ろう!」

「うん!」




行ってしまった…… 熱出たのかな? なんだか身体が熱い。




そしてその日の夜、本当に熱が上がってしまった。








◇◇◇








あの人は私の住んでるとこの近くだってわかったのはラッキーだった。 学校に行く途中であの人が通らかもしれない場所をいくつか目処を付け張っていると見つけた!




顔を見れただけで凄く嬉しかった。 それとあの子も居た、来季くんだっけ? 朝は一緒なのかな? この時は出ていくタイミングを逃したけど次は偶然を装って行くことにした。




「え…」

「あれ? もしかして君、あの時の子?」

「僕も覚えてるよー! あの時のお姉さんだ」

「そうです…… この前は失礼なことも言っちゃったような気もするし本当にすみません」

「あはは、いいよいいよ。 女子高生だったんだね。 あ、セクハラとかじゃないよねこれ?」

「ぜ、全然なんとも思ってないですから大丈夫です! あッ、あの時の傘…… 置きっぱなしにしてて」

「あれはあげるよ、といってもあんなおじんくさいのいらなかったかな?」

「いえ、そんな風に思ってませんから」




傘を返す口実でまた会いたい、出来れば一緒に通い……




そこで私は思った、これって私の初恋なんじゃ? でも待って、気持ちが先走りすぎてわかってたのにあえて考えないようにしてた、この人妻子持ち。 




そんな人に私が間に入ったら家庭崩壊しちゃうんじゃ…… 多分私の考えは世間一般的に健全じゃない方でこの人を追ってる。 私の初恋これで終わった?




心の中で「あ〜〜〜ッ!!」と声にならない声で叫んでいると……




「お父さんお弁当は?」

「あ、忘れてた、危ない危ない。 悪い来季、すぐ戻るから先に行っててくれ」

「いいよ、待ってるから」




私と来季くんがその場に残された。 




「ええと、来季くん?」

「うん! 2年1組、岡崎来季です! お姉さん背が大きいね!」




自己紹介してくれた。 背が大きいのはわかってる、176センチあるし。 同学年の小さい女子が少し羨ましかったりする。 というかなんならおじさんより少し大きいし…… 自分より背が大きい女はイヤかな?




「あ、私は新世イツキ。 高校生だよ、来季くんって良いお父さんだね」

「うん、ちょっとドジだけどね。 だから僕もお母さん代わりにいろいろお手伝いしてるんだ」

「お母さん代わり?」

「お母さん出て行っちゃったんだって」

「そう…… なんだ」




離婚…… ? 正直自分の家もそうだったから凄く複雑だったんだけど私の中で大きいのは「もしかして私が居てもなんの問題もなし?」だった。




「はぁッ、はぁッ、お待たせ来季…… あれ、君も待っててくれたの?」

「お姉さんとお話ししてた」

「こら来季、お姉さんも学校あるんだから」

「いえ、間に合いますので…… わ、私、新世イツキっていいます。 高校は新庄に通ってて、だから近いんですここから」

「あー、そっか! 新庄だったんだね。 僕は岡崎英一郎、工場勤務してます」




英一郎さん、英一郎っていうんだ。 わぁー、名前教えてもらっちゃった。 




その日から私は英一郎さんの出勤通路を通ってから学校に行くことになった。




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