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「――てな感じでね、この『水の匣』事件っていうのが、いま、この辺りで話題になっているみたいなんだ」
とは、場面は上海のスカイバーに戻って、ドン・ヨンファが説明を終えた。
「けっ、何が、てな感じでね、だ」
キム・テヤンが舌打ちしつつ、
「むぅ……、そんな、事件があるとは、ねぇ……」
と、その横、カン・ロウンが深く感心した様子で唸る。
まあ、このSPY探偵団という、仮にも探偵サークルみたいなもののリーダーであるから、お前が一番に知っておくべきだろという話だが。
すると、その時、
――ピ、ュッ――!!
「あッ、べしッ――!?」
と、ドン・ヨンファが、突然の奇声をあげた。
胸でなく、顔にかけられた液体――
「う、ぅ……、ぐぅ……」
拭いながら、ドン・ヨンファが見た。
その先には、
「……」
と、パク・ソユンがゴルゴ13のごとく、水鉄砲を構えていた。
「なッ!? 何をするだァッー!! ソユンッ!!」
「ああ? せっかく、水の話をするからさ? 水つながりで、いいじゃない」
「よかないって!」
「ああ、あと、さ? ヨンファ? ここに、いいフォークがあるじゃない? せっかくだからさ? アンタのカナリンの線を、3本線にしてあげよっか? アディダスみたいに」
「何だよ? その、脈絡ないの。てか、カナリンじゃなくて、ロールスロイス・カリナンね。わざと間違えてるだろ」
と、ロブスターの皿のフォークを手にして言うパク・ソユンに、ドン・ヨンファがつっこんだ。
そのようにしつつ、
「まったく……、本当に、鬱陶しいヤツらだな」
と、顔をしかめるキム・テヤンに、
「は? ヨンファは、鬱陶しい枠かもしれないけど、私は鬱陶しくないぽよ」
「けっ、お前も十分に鬱陶しいってんだよ!」
「そうだよ。そもそも、人に水鉄砲をかけるなんてふざけたことする人間が、鬱陶しくないわけないじゃないか」
「は? それは待つぽよ。ふざけているようでふざけて水鉄砲をかけたかもしれないし……、ふざけいるようでふざけないで水鉄砲をかけたかもしれない、ぽよ」
「いや、その、『ぽよ』と水鉄砲なんて、100人中99人が、ふざけているようにしか見えないだろ」
と、ドン・ヨンファがつっこんだ。
そうしながらも、
「とりあえず、明日のイベントに支障がないよう、その辺にしておきなよ、ソユン」
「はぁ、」
と、カン・ロウンが、パク・ソユンを気遣って言った。
グラスを置きながら、
「それで、その、水の匣ってのを、いつ調べるわけ? せっかくの、面白そうな事件だし」
と、パク・ソユンが聞いた。
すなわち、このような変わった事件があれば、首をつっこむのがSPY探偵団である。
「う~ん……? そう、だなぁ……?」
キム・テヤンが、考えるように唸り、
「まあ、明日の、空いた時に調べるか……? あるいは、ソユンの、イベントが終わった後にでも調べようじゃないか」
と、カン・ロウンが言った。