36 黄色の、クレヨンしんちゃんの組ちょ――、もとい園長先生ふうのハイブランドのシャツ
それはさておき、
「“それ”が可能にしたのが、アクアボンバの会場の、【動く水】なのだな?」
と、ベテラン刑事が聞き、
「ええ、そうです」
と、AQ社研究チームのリーダーが答えた。
また、調査員の女が、
「この、【ポリウォータ】に、外部からワイヤレス送電などの、何らかエネルギーを供給することで、水を、“動かす”ことができる……。それを以って、“水の塊”を、まるでドローンのように操作したり……、あるいは、“入れもの”がないにもかかわらず、立方体のような形を保持させたりできる――」
と、説明したのを合図にし、
「ほう? “それ”を考えれば、今回の、アクアボンバでの件も、一連の【水の匣】のケースも、説明できるな」
「――ということで? ス・ミンジュン、お前たちの製品、技術が、“何らかの形で関わっている”ということで、確定で、いいな?」
と、ベテランふうの刑事たちが、ス・ミンジュンに圧を強めていく。
「う、うっ……!? そ、そんなっ、」
ス・ミンジュンの表情が、ますます悲壮になる。
また、刑事・捜査員のひとりが、
「AQ社に関する、あらゆる通信の記録――、また、出入りしている人間も調べ出せてもらったが、中には、“怪しいもの”も、ありますね?」
と、ノートパソコンを見せる。
そこには、さすが、中国警察の捜査力か――、膨大な通信記録を調べ上げるとともに、今回の事件に関わっている可能性のありそうなものを、AIやビッグデータ解析などのふるいにかけていた。
「そうですね。“それらのこと”もあわせて、詳しくは、ひとまず署で話を聞かせてください」
女刑事が言って、他の刑事たちよりは“優しい形”で、ス・ミンジュンに近づいた。
「そ、そんなっ……!? わっ、私は、やってないッ!!」
ス・ミンジュンが、泣きそうな顔になる。
それだけでなく、
「研究員、従業員の方にも、何人か、来てもらいます」
「ち、ちょっ――!?」
「ちょっと、待ってください!」
と、刑事たちの連行しようとする手は、研究員たちへも及ぶ。
そうして、
――グワ、シッ――!!
と、刑事たちが強引にも、
「ひぃっ!?」
と、怯えるス・ミンジュンを、拘束しようとした。
その時、
「――ちょっ、ちょっと、待ってッ――!!」
と、突如として、男の声が響いた。
「「「「「――!?」」」」」
刑事たち、それから、ス・ミンジュンたちAQ社の者たちも同時に反応する。
「あ、ん……?」
「誰、です――?」
と、ベテラン刑事と女刑事が反応しようとしたところ、すぐ時間差で続けて、
「待つぽよー!!」
「「「「「「ぽよ――!?」」」」」」
と、こんどは『ぽよ』と叫んだ女の声に、
――ガ、クンッ――!!!
と、皆が、ギャグマンガのようにコケにかかる!! もしくは横転しにかかる――!!
「「「ぽ、ぽよ……?」」」
何人かが、顔を見合わせる。
日常的には聞くことのない、【ぽよ】との、強烈なことばであるから仕方がないだろう。
その、声のしたほうを見ること――
黄色の、クレヨンしんちゃんの組ちょ――、もとい園長先生ふうのハイブランドのシャツ姿のドン・ヨンファと、白と青を基調としたヘソ出しスタイルに、白のカチューシャのキマった、パク・ソユンのふたりであった。
なお、何ゆえか――? ふたりの額には、ピタッ――と、何か【葉っぱらしきもの】がくっついているという。
そんなふたりの姿を見て、
「あっ――? よっ、ヨンファッ――!!」
と、まず、ドン・ヨンファの友人のス・ミンジュンが、真っ先に声をあげた。
続いて、
「ああっ!? 何者だっ!! お前たち!!」
と、声を荒げてベテラン刑事と
「そうですよ。というか? 『ぽよ』って何ですか? 『ぽよ』って?」
と、こちらはクールな様子を変えることのなく、女刑事が、パク・ソユンに問うてくるも、
「ぽよ」
と、パク・ソユンは、それだけ答える。
その答えに、
「……」
と、女刑事は動じないまま、目で静かな圧をかける。
まあ、“かける”だけ、ムダなのであるが……
そんな、パク・ソユンの【ぽよ】は放っておき、
「――で? 何者だ? お前たち」
「ス・ミンジュン氏とは、お知り合いなのですか?」
と、刑事たちが、ふたりに尋ねる。
「あっ……? い、やぁ……、そ、のぉ……」
ドン・ヨンファが、ドギマギしていると、
「は? いや、その……、って、堂々と言えばいいじゃん?」
と、パク・ソユンがその態度が気にくわず、ドン・ヨンファをつっつきながらも、
「――そう、ね? ぽよ? 私たちは、探偵ぽよ」
と、答えた。
それを聞いて、
「「「「は、ぁぁ~? 探偵、だって――?」」」」
と、案の定、刑事たち捜査チームのメンツが、怪訝な顔をしてみせる。
また、ス・ミンジュンたちAQ社の面々も、
「「え――?」」
「「た、探偵……?」」
と、ドラマやアニメでしか視ないような展開に、すこし動揺する。
そんな、捜査する側とされる側が、ざわつく中、
「は、いぃ? アナタたちが、探偵、ですか……?」
と、女刑事も怪訝な顔をし、目の前のパク・ソユンに聞いた。
「ぽよ。探偵ぽよ」
パク・ソユンが、答える。
その横で、
「……」
と、ドン・ヨンファが、すこし顔を歪ませる。
その、思うところ、
【ぽよ】が多めってことは、いまは、【ぽよ】の“高設定”なんだろう。
まあ、ウザいこと、この上ないが……
そうしていると、
「いや、探偵て……、そんな、ドラマや小説じゃないんですから。――というより? さっきから、何なの? 【ぽよ】って?」
と、女刑事がつっこみながらも、その【ぽよ】の意味を問うも、
「ぽよ」
と、相変わらず、【ぽよ】としか返してこないパク・ソユンに、
「ああ……、もう、いいです……」
と、しまいには、呆れかえって黙ってしまった。




