23 黒のアサシンドレス姿に、抜群のスタイル。 なおかつ、キツネ耳のついた長い黒髪の、美貌の女の形(なり)をした異界の住人
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「「「――あ、いつ?」」」
と、先ほどのドン・ヨンファと同様、何人かの声が重なった。
ゴーグル・サングラスに、DJオイスターとDJアクティブ・クラブ、と――、皆、“あいつ”なる存在について気になる。
また、そこへ、
「あい、つ……、――って? 誰、だっけ?」
ドン・ヨンファが、まだピンとこないで、首をかしげていると、
「ああ”? てめぇも、勘の悪いヤツだな!! あいつだよ、あ・い・つ!! あの、ドラえもんみてぇなタヌキ野郎のことだってんだよ!!」
と、キム・テヤンがでっかい声で、答えを言ってきた。
「あっ、ああ……!! あの、タヌキさんのことか!!」
ドン・ヨンファが、それで思い出し、掌をポン――と叩いた。
まあ、タヌキではなくて、キツネなのであるが。
そう、である――
ここで、結論。
“あいつ”とはすなわち、妖狐の、神楽坂文のことである。
黒のアサシンドレス姿に、抜群のスタイル。
なおかつ、キツネ耳のついた長い黒髪の、美貌の女の形をした異界の住人――
いちおう、このカン・ロウンたちSPY探偵団とは、面識と交流があるという。
まあ、交流というか、協力関係である。
さながら、ドラえもんのように妖力や妖具を出してようにもらい、時には、ピンチの際に助けてもらったりもしていた。
中でも、パク・ソユンは命の危機に瀕した際に、――例えば、“とある事件では、前述したように、チェーンソーで両手を切り落とされた挙句に、ギンピギンピの茶や、フッ酸に硫酸を飲まされるなどした事件――において、“ドラえもん扱いされる妖狐”の力によって、ズタズタになった口内、食道および胃やその周辺を、何事もなかったかのように、修復・回復してもらったこともある。
もし、この妖狐の力がなければ、パク・ソユンもSPY探偵団も、いま存在していないのかもしれない。
妖狐、神楽坂文についての説明はそこそこにして、本題へと戻る。
「た、タヌキだって――? ど、どういうことだ?」
と、“タヌキ”との、もはやワザととしか思えない妖狐の蔑称を耳にして、ゴーグル・サングラス男が、怪訝な顔で聞いてきた。
その問いに、
「ああ、……“妖狐”って、漫画とか映画に出てくるだろ? “そいつ”が、いてな、」
と、ここは、る・美祢八が横から入って答えた。
それを聞いて、
「「「は――? 妖狐、だって……?」」」
と、また数人が、疑問の声を重ねた。
まあ、とは言え――、いま、この目の間で起きていることを考えるに、“妖狐という者”くらいいても、「まあ、そんなもんか」との思いが芽生えていながら。
そこへ、カン・ロウンが、
「私たちは、世間一般でいうところの、“不可思議な事件を調査する”サークル活動みたいなことしているのですが……、その活動において、ですね……、この、タヌ――、いえ、妖狐の力を借りることが、ありましてね」
と、説明するも、
「「「は、ぁ……」」」
と、ゴーグルサングラスやDJたちは、まだ芳しくない反応をする。
そんな様子の彼らに、カン・ロウンが再び、
「まあ、急に、妖狐などと言われても、おいそれとは信じられない気持ちは分かります。ただ、もう……、我々の、ヨンファと美祢八さんのふたりの異能力を用いても、この“水の匣”を何とかすることはできなかったゆえ……、“妖狐という存在”の手を、借りようと思っているのです」
と、理解を得ようとする。
「妖狐、ですか……」
パク・ソユンの、仕事仲間の女と、
「そんな、バカな、」
と、ゴーグル・サングラスが、まだ信じられないとの顔をする。
そこへ、DJオイスターが、
「とは言え……、もう、“それ”に頼るしか、ないわけだよな?」
と、一か八か、賭けてみようかという気になる。
それを聞いて、
「じゃあ……、頼む。その、妖狐とやらに、ソユンのことを、助けてもらってくれないか」
と、ゴーグル・サングラスも、ここは信じてみるかと――、否、信じるしかないと意を決した。
「ああ……、分かった」
カン・ロウンが、二人の言葉を受け取る。
まあ、そもそもが、こんな話をしているうちに、さっさと連絡をしろという話であるが……
そうして、カン・ロウンがスマートフォンを手に取る。
「ほんとうに、異世界にいる、妖狐ですよね――? に、電話が通じるんですか?」
オレンジのDJ、アクティブ・クラブが聞くと、
「まあ、見とかれよ。オレンジの姉ちゃん」
と、また横から、美祢八が変わって答える。
その間にも、カン・ロウンは電話を発信しており、
――プルルルル……、プルルルル……
と、こちらの世界と異世界間を隔てて、妖狐の神楽坂文を呼び出す。
10秒か、15秒ほど鳴らしただろうか――?
そこで、
――プルルルル……、プッ――
と、ようやく、電話はつながって、
「もしもし、タヌ――、神楽坂さん、ご無沙汰しております。カン・ロウンです」
と、カン・ロウンが、まず挨拶した。
すると、
『おい、殺してやろうか――?』
と、返ってきたのは、スピーカーモードのでっかい音であった。
聞いて一同、
「「「「「は――?」」」」」
と、思わぬ物騒な言葉に、驚愕した。




