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【神楽坂】ゴシック・フォックス調査譚シリーズ 【水の匣】  作者: 石田ヨネ
第三章 襲来、水の匣

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23 黒のアサシンドレス姿に、抜群のスタイル。 なおかつ、キツネ耳のついた長い黒髪の、美貌の女の形(なり)をした異界の住人




           (7)




「「「――あ、いつ?」」」


 と、先ほどのドン・ヨンファと同様、何人かの声が重なった。

 ゴーグル・サングラスに、DJオイスターとDJアクティブ・クラブ、と――、皆、“あいつ”なる存在について気になる。

 また、そこへ、

「あい、つ……、――って? 誰、だっけ?」

 ドン・ヨンファが、まだピンとこないで、首をかしげていると、

「ああ”? てめぇも、勘の悪いヤツだな!! あいつだよ、あ・い・つ!! あの、ドラえもんみてぇなタヌキ野郎のことだってんだよ!!」

 と、キム・テヤンがでっかい声で、答えを言ってきた。

「あっ、ああ……!! あの、タヌキさんのことか!!」

 ドン・ヨンファが、それで思い出し、掌をポン――と叩いた。

 まあ、タヌキではなくて、キツネなのであるが。

 

 そう、である――

 ここで、結論。

“あいつ”とはすなわち、妖狐の、神楽坂文のことである。

 黒のアサシンドレス姿に、抜群のスタイル。

 なおかつ、キツネ耳のついた長い黒髪の、美貌の女のなりをした異界の住人――

 いちおう、このカン・ロウンたちSPY探偵団とは、面識と交流があるという。

 まあ、交流というか、協力関係である。

 さながら、ドラえもんのように妖力や妖具を出してようにもらい、時には、ピンチの際に助けてもらったりもしていた。

 中でも、パク・ソユンは命の危機に瀕した際に、――例えば、“とある事件では、前述したように、チェーンソーで両手を切り落とされた挙句に、ギンピギンピの茶や、フッ酸に硫酸を飲まされるなどした事件――において、“ドラえもん扱いされる妖狐”の力によって、ズタズタになった口内、食道および胃やその周辺を、何事もなかったかのように、修復・回復してもらったこともある。

 もし、この妖狐の力がなければ、パク・ソユンもSPY探偵団も、いま存在していないのかもしれない。


 妖狐、神楽坂文についての説明はそこそこにして、本題へと戻る。

「た、タヌキだって――? ど、どういうことだ?」

 と、“タヌキ”との、もはやワザととしか思えない妖狐の蔑称べっしょうを耳にして、ゴーグル・サングラス男が、怪訝な顔で聞いてきた。

 その問いに、

「ああ、……“妖狐”って、漫画とか映画に出てくるだろ? “そいつ”が、いてな、」

 と、ここは、る・美祢八が横から入って答えた。

 それを聞いて、

「「「は――? 妖狐、だって……?」」」

 と、また数人が、疑問の声を重ねた。

 まあ、とは言え――、いま、この目の間で起きていることを考えるに、“妖狐という者”くらいいても、「まあ、そんなもんか」との思いが芽生えていながら。


 そこへ、カン・ロウンが、

「私たちは、世間一般でいうところの、“不可思議な事件を調査する”サークル活動みたいなことしているのですが……、その活動において、ですね……、この、タヌ――、いえ、妖狐の力を借りることが、ありましてね」

 と、説明するも、

「「「は、ぁ……」」」

 と、ゴーグルサングラスやDJたちは、まだ芳しくない反応をする。

 そんな様子の彼らに、カン・ロウンが再び、

「まあ、急に、妖狐などと言われても、おいそれとは信じられない気持ちは分かります。ただ、もう……、我々の、ヨンファと美祢八さんのふたりの異能力を用いても、この“水の匣”を何とかすることはできなかったゆえ……、“妖狐という存在”の手を、借りようと思っているのです」

 と、理解を得ようとする。

「妖狐、ですか……」

 パク・ソユンの、仕事仲間の女と、

「そんな、バカな、」

 と、ゴーグル・サングラスが、まだ信じられないとの顔をする。


 そこへ、DJオイスターが、

「とは言え……、もう、“それ”に頼るしか、ないわけだよな?」

 と、一か八か、賭けてみようかという気になる。

 それを聞いて、

「じゃあ……、頼む。その、妖狐とやらに、ソユンのことを、助けてもらってくれないか」

 と、ゴーグル・サングラスも、ここは信じてみるかと――、否、信じるしかないと意を決した。

「ああ……、分かった」

 カン・ロウンが、二人の言葉を受け取る。

 まあ、そもそもが、こんな話をしているうちに、さっさと連絡をしろという話であるが……


 そうして、カン・ロウンがスマートフォンを手に取る。

「ほんとうに、異世界にいる、妖狐ですよね――? に、電話が通じるんですか?」

 オレンジのDJ、アクティブ・クラブが聞くと、

「まあ、見とかれよ。オレンジの姉ちゃん」

 と、また横から、美祢八が変わって答える。

 その間にも、カン・ロウンは電話を発信しており、

 ――プルルルル……、プルルルル……

 と、こちらの世界と異世界間を隔てて、妖狐の神楽坂文を呼び出す。

 10秒か、15秒ほど鳴らしただろうか――?

 そこで、

 ――プルルルル……、プッ――

 と、ようやく、電話はつながって、

「もしもし、タヌ――、神楽坂さん、ご無沙汰しております。カン・ロウンです」

 と、カン・ロウンが、まず挨拶した。

 すると、


『おい、殺してやろうか――?』


 と、返ってきたのは、スピーカーモードのでっかい音であった。

 聞いて一同、

「「「「「は――?」」」」」

 と、思わぬ物騒な言葉に、驚愕した。

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