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水の匣  作者: 石田ヨネ
■■ 1 ■■ 上海、外灘、夜のスカイバーにて
2/3


 リーダーの、小太りに丸サングラスの中年が、リーダーのカン・ロウン。

 今しがた、こち亀のセリフのようなツッコミを入れたのが、チジミ屋台のオヤジこと、キム・テヤン。

 それから、黄色の、クレヨンしんちゃんの組ちょ――、もとい園長先生のようなスーツを着た、キノコヘアーで、財閥のボンボンのドン・ヨンファがメンバーである。

 なお、このスカイバーの料理であるが、米・中の折衷ともいうべきか、彩られるロブスターに上海ガニの高級感。

 そして、それら料理とともに、カラフルかつアーティスティックなカクテルを愉しめるという、お洒落さも兼ねそなえていた。

 

 さて、バーの紹介はそこそこに、話に戻る。

 先ほどの、キム・テヤンのつっこみに、

「いや、けっこう違うし。よく、見るぽよ。表情豊かな私を」

 パク・ソユンが、改めてスマホの画面を見せる。

「ああ”? 『ぽよ』じゃねぇってんだよ! ぽよ、じゃ、」

 キム・テヤンが、パク・ソユンの『ぽよ』の語尾に反応し、さらに激しくつっこむ。

 ちなみに、このパク・ソユンだが、ときどき語尾に『ぽよ』がつくという。

 そして、その『ぽよ』のつく頻度だが、パチンコのように、日によって設定みたいなものがあるという。


「ほら、見るぽよ。波に乗る前の、緊張して、こわばる表情……。パイプをくぐる時の、極限まで集中した表情……。それから、フィニッシュしたあとの、解放感あふれる表情を」

「けっ、徹頭徹尾、ほぼ全部同じ表情だろが。免許証か、パスポートの写真みてえによ」

 と、改めて画像を見せるパク・ソユンに、キム・テヤンが同じようにつっこむ。

「まあ、確かに、言われてみるとそうだな」 

 リーダーのカン・ロウンと、

「うん。僕も、そう思う」

 と、キノコヘアーのドン・ヨンファが、半ばヘラヘラした様子で同意する。

 すると、

「は? 何が、『僕もしょー思う』、よ?」

 と、パク・ソユンが少々イラっとした様子をみせる。

 次の瞬間、


 ――コッ、ポォッ――!!


「――うぐッ!?」

 と、電光石火の早わざか!? ドン・ヨンファの鼻と口を、パク・ソユンが水の入ったコップで塞ぐ!! 

「うっ!? うごごォッ――!!」

 ドン・ヨンファが叫びながら、ジタバタと藻掻もがく。

「ほら、ほら? どう? ヨンファ? 口と鼻で、同時に飲む水の味は」

 表情変わらずに、ジトッとした目で、パク・ソユンがドン・ヨンファをコップで塞ぎ続ける。

「お、おいおい、ソユン、」

 ここで、リーダーのカン・ロウンが心配する様子をみせ、

「ったく、何やってんだよ! てめぇらは、よぅ」

 と、キム・テヤンが、鬱陶しそうに呆れる。

「はぁ、水、飲ましてあげてるぽよ」

 パク・ソユンは、ふたりに答えながら、


「ねぇ? 知ってる?  人間って、さ? コップ一杯の水で溺れることもあるの?」 

「ゴボッ――!! お、溺れッ――、溺れるッ!!」

「ねぇ、知ってる? ジョジョの、荒木飛呂彦も、さ? コップ一杯の水ので、溺れそうになったことあるの」

「ゴボボッ!! だ、誰か助けッ――、て、テヤ、ロウン!! 助ッ、けてッ!!」

 と、パク・ソユンがドン・ヨンファを拘束し、コップ一杯の水で溺れさせんとするも、

「おい! その辺でやめとけって、うるせぇんだよ! てめぇらは、よぅ!」 

「ああ。そろそろ、離してやりなよ、ソユン」

 と、キム・テヤンとカン・ロウンの二人に宥められ、

「はぁ、仕方ないわね。解放したげる」

 と、ようやくドン・ヨンファを放してやった。


 ――ドサッ……!


 と、ドン・ヨンファが、崩れて落ちる。

「ゴホ、ゴホッ……!! ハァ……、ハァッ……!」

 呼吸が乱れつつ、

「はぁ、はぁ……、も、もうッ!! 何するだ、ソユン!!」

「はぁ、だから、水を飲ませたって言ったじゃん?」

「いッ、や! どうやって、飲むんだよ!? そんな、鼻と口から!」

 ドン・ヨンファは抗議する。

 まあ、口からだけ、器用に飲もうとすれば、飲めないこともないかもしれないが。

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