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リーダーの、小太りに丸サングラスの中年が、リーダーのカン・ロウン。
今しがた、こち亀のセリフのようなツッコミを入れたのが、チジミ屋台のオヤジこと、キム・テヤン。
それから、黄色の、クレヨンしんちゃんの組ちょ――、もとい園長先生のようなスーツを着た、キノコヘアーで、財閥のボンボンのドン・ヨンファがメンバーである。
なお、このスカイバーの料理であるが、米・中の折衷ともいうべきか、彩られるロブスターに上海ガニの高級感。
そして、それら料理とともに、カラフルかつアーティスティックなカクテルを愉しめるという、お洒落さも兼ねそなえていた。
さて、バーの紹介はそこそこに、話に戻る。
先ほどの、キム・テヤンのつっこみに、
「いや、けっこう違うし。よく、見るぽよ。表情豊かな私を」
パク・ソユンが、改めてスマホの画面を見せる。
「ああ”? 『ぽよ』じゃねぇってんだよ! ぽよ、じゃ、」
キム・テヤンが、パク・ソユンの『ぽよ』の語尾に反応し、さらに激しくつっこむ。
ちなみに、このパク・ソユンだが、ときどき語尾に『ぽよ』がつくという。
そして、その『ぽよ』のつく頻度だが、パチンコのように、日によって設定みたいなものがあるという。
「ほら、見るぽよ。波に乗る前の、緊張して、こわばる表情……。パイプをくぐる時の、極限まで集中した表情……。それから、フィニッシュしたあとの、解放感あふれる表情を」
「けっ、徹頭徹尾、ほぼ全部同じ表情だろが。免許証か、パスポートの写真みてえによ」
と、改めて画像を見せるパク・ソユンに、キム・テヤンが同じようにつっこむ。
「まあ、確かに、言われてみるとそうだな」
リーダーのカン・ロウンと、
「うん。僕も、そう思う」
と、キノコヘアーのドン・ヨンファが、半ばヘラヘラした様子で同意する。
すると、
「は? 何が、『僕もしょー思う』、よ?」
と、パク・ソユンが少々イラっとした様子をみせる。
次の瞬間、
――コッ、ポォッ――!!
「――うぐッ!?」
と、電光石火の早わざか!? ドン・ヨンファの鼻と口を、パク・ソユンが水の入ったコップで塞ぐ!!
「うっ!? うごごォッ――!!」
ドン・ヨンファが叫びながら、ジタバタと藻掻く。
「ほら、ほら? どう? ヨンファ? 口と鼻で、同時に飲む水の味は」
表情変わらずに、ジトッとした目で、パク・ソユンがドン・ヨンファをコップで塞ぎ続ける。
「お、おいおい、ソユン、」
ここで、リーダーのカン・ロウンが心配する様子をみせ、
「ったく、何やってんだよ! てめぇらは、よぅ」
と、キム・テヤンが、鬱陶しそうに呆れる。
「はぁ、水、飲ましてあげてるぽよ」
パク・ソユンは、ふたりに答えながら、
「ねぇ? 知ってる? 人間って、さ? コップ一杯の水で溺れることもあるの?」
「ゴボッ――!! お、溺れッ――、溺れるッ!!」
「ねぇ、知ってる? ジョジョの、荒木飛呂彦も、さ? コップ一杯の水ので、溺れそうになったことあるの」
「ゴボボッ!! だ、誰か助けッ――、て、テヤ、ロウン!! 助ッ、けてッ!!」
と、パク・ソユンがドン・ヨンファを拘束し、コップ一杯の水で溺れさせんとするも、
「おい! その辺でやめとけって、うるせぇんだよ! てめぇらは、よぅ!」
「ああ。そろそろ、離してやりなよ、ソユン」
と、キム・テヤンとカン・ロウンの二人に宥められ、
「はぁ、仕方ないわね。解放したげる」
と、ようやくドン・ヨンファを放してやった。
――ドサッ……!
と、ドン・ヨンファが、崩れて落ちる。
「ゴホ、ゴホッ……!! ハァ……、ハァッ……!」
呼吸が乱れつつ、
「はぁ、はぁ……、も、もうッ!! 何するだ、ソユン!!」
「はぁ、だから、水を飲ませたって言ったじゃん?」
「いッ、や! どうやって、飲むんだよ!? そんな、鼻と口から!」
ドン・ヨンファは抗議する。
まあ、口からだけ、器用に飲もうとすれば、飲めないこともないかもしれないが。