17 チームとモダチー
(1)
そうして――
DJ・SAWこと、パク・ソユンのステージが始める。
パールつきカチューシャはそのままに、ラフなシャツを脱いで、水着姿になるパク・ソユン。
大胆なパフォーマンスに、美貌に、抜群のスタイル――
披露すると同時、
――ワァァァッ――!!!!!
と、男女ともに、大歓声があがる。
「「「ソー、ウ!! ソーウ!!」」」
「「「ソユンー!!」」」
などと、DJネームと、本名のソユンの入り乱れたコールが盛り上がる。
そうして、序盤の数曲回したのち――
途中で、件の、『あいすクリーム』のミックスになる。
そうすると、お決まりの『ルビィちゃーん!!』、『何が好きィー!!』の部分を変えて、
「「「「「ソウ、ちゃぁ~ん――!!」」」」」
と、フロア――まあ、プールなのであるが――、がDJソウへと呼びかける。
すると、
「は、ぁ”~”い――!!」
と、DJソウことパク・ソユンからは、先ほどの、ゴーグルサングラスたちに披露したミッキー声が返ってくる!!
その、思わぬ返しを聞いて、
「「「「「――!?」」」」」
と、フロアの、観衆は大いに驚愕し、
――ガ、クッ――!!
と、皆がコケかけ、大横転しにかかる!!
その、思うところ、
(((((何故にッ!? ミッキーマウスみたいな声ッ――!?)))))
と、皆のバイブスの、心の声が一致する――!!
そうしながらも、
(((ま、まあ、いいか……)))
と、それ以上気にしても仕方がないので、次のセリフへと、
「「「「「何がッ、好きぃぃー!!!!」」」」」
と、問いかける!!
原曲どおりであれば、ここは『チョコミントぉ~、よりも、ア~ナ~タァ♥』
と来る。
もしくは、『チョコミント』のところが、そのアーティスの好きなアイスへとアレンジされる。
しかし、このDJソウこと、パク・ソユンは、
「ぽよミントォ~!! よりも、あぁ~”、なぁ~”、たぁ~”~”!!」
と、来た。
それも、相変わらずの、ミッキーの声で。
またしても、フロアが、
「「えっ――?」」
「「ぽよミントって、何?」」
「「てか、『ぽよ』って、何?」」
「「ねぇ、何なの? 『ぽよ』って、何なの? 『ぽよ』って」」
と、ざわつき、困惑しにかかる。
――そのようにしながらも、パフォーマンスは続いていく。
中盤の、盛り上がるイケイケの曲では、
「ワッ――! ワッ――!」
と、パク・ソユンは、テンション高くマイクパフォーマンスをしてみせる。
その様子は、普段の、ドン・ヨンファたちといる時からは考えられない、イキイキとした表情である。
それを見ながら、
「けっ……、いつも、ワッ、ワッ、言ってんな、あいつ」
と、キム・テヤンが、舌打ちしながらしかめっ面で言い、
「いや、まあ、マイクパフォーマンスだからね」
と、ドン・ヨンファが答える。
それから、またしばらくして――
トラックは、同じく日本の、『チーム友達』のリミックスへと変わる。
原曲では、『チーム友達、チーム友達、――』と、くり返すべきところを、
「チームとモダチー……!! チームとモダチー……!!
と、DJソウ=パク・ソユンは、マイクパフォーマンスする。
それを聞いているうちに、フロアは
「「えっ――?」」
「「チーム友達じゃなくて、チームとモダチーって、言ってるよね……?」」
「「モダチー??」」
などと、やはり困惑気味にざわつく。
ドン・ヨンファも、
「何か、確かに、『チーム友達』ってよりも、『チームとモダチー』って言ってるように聞こえる、ね……」
と、確かに、『チームとモダチー』と聞こえるのを否定できない。
「何け? 滑舌悪いんけ? あの、おばty――、いや、ソユンは、」
美祢八が、露骨に『おばちゃん』と言いそうになるのを訂正して言った。
「ん? いま、おばちゃんって、言いかけたでしょ? 美祢八」
ドン・ヨンファが、それに気がついて、
「さ、ぁ? そう、おばちゃんって聞こえたっちゅうことは、普段から、おばちゃんって思っとるんやないけ?」
「いや、いや……! 何を言って、」
と、美祢八の言葉に、ドン・ヨンファが慌てて見せる。
まあ、もし、パク・ソユン本人の前で“おばちゃん”呼ばわりでもしようものならトンデモない。
首を絞められた挙句、異能力で具現化したチェーンソーなどの“凶器”を向けられることになるのは明白であるからだ。




