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夏――
スペインの、海岸――
太陽の、強い日差しが燦々とする下、スカイブルーの海が、
――グ、ワァァン!!
と、大きくせりあがる!!
2、30メートルと、まさにビルのような高さの大波。
そう――
ここは、大波に挑むサーファーたちの聖地、スペイン――ではなく、ポルトガルのナザレ。
大西洋の深海峡谷や、海岸線の形などの様々な要因によって、ヨーロッパのみならず、世界でも有数の大波が発生するスポットである。
そして、そんなナザレにて、今まさに最高点まで上昇しようとするビッグウェーブを、
――ズ、シャァァ!!!
と、切り裂くかのようにサーフボードで滑る、ひとりの女の姿があった。
白のカチューシャの目立つ長い黒髪を結い、キリッとした美人顔に、まさにモデルというべきスタイルの女――
実際にモデルとしても活躍している、韓国人DJのパク・ソユンは、この大波に挑んでいた。
水の、うねりは最高点に達し、そこから
――ザッ、パァァン――!!!
と、その形を崩しつつ、パイプのように巻いていく!!
その、パイプの中を
「……」
と、パク・ソユンは動じず冷静にして、サーフボードで滑り続ける。
そうしてついに、崩れ切った波をうしろにしながら、
――シャ、ァァ……!!
と、滑走しきった。
その、ビッグウェーブの頂点から崩れるループと、ひとつ間違えれば甚大な水に飲みこまれかねない、極限の緊迫の連続――
それを、
「――おい」
とここで、あろうことか――? どこからか、唐突に男の声がした。
「ん? 何?」
パク・ソユンが、ジトッ……とした目で声に答えると、
「全部、同じ顔じゃねぇーか」
と再び、中年の男のつっこむ声が返ってきた――
――――
――
――とここで、魔法かイリュージョンのように、男の声で場面は変わる。
スペインから遠く東へ離れること、中国は上海――
夜の、旧租界時代のレトロな洋館群の残る、外灘のスカイ・バーでのこと。
卓に置かれたスマートフォンの大きめの画面には、先の、パク・ソユンがビッグウェーブでサーフィンをするプロモーション的な動画が映っていた。
すなわち、パク・ソユンは、SPY探偵団の仲間らとともに、スカイデッキで酒を飲んでいた。