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妖狐・神楽坂文の関心【09】 水の匣  作者: 石田ヨネ
第一章 上海、外灘、夜のスカイバーにて
1/12

1 妖狐、神楽坂文の関心



 前章で私達は、物質の状態は分子の熱運動によって決められることを知った。熱運動だけだと分子の集団は混沌としているが、この状態は分子の間に働く力によって一つの秩序ある状態になる。

 この立場から水を眺めると、水(液体)の構造はけっして不変なものではなく、たえず生成消滅を繰り返している。その平均寿命はわずか10^-12秒程度の想像もつかないくらい短い時間である。このことを強調するために、特にダイナミック(動的)構造と呼ぶ。

 水という物質の個性は水分子の構造にある。水分子は四本の腕をもっていて、その端を結ぶとちょうど正四面体ができる。水分子はこの形に似せた結晶をつくる。すなわち、氷は正四面体の格子からできている。水でもごく狭い範囲をみると、分子の並びは氷と似た配列を持っている。



**『ブルーバックス 水とは何か ――ミクロに見たそのふるまい』(上平恒)より




          (1)




 ――異世界、【神楽坂】――


 水――

 その、静謐にして清浄なさまは、時に、『明鏡止水』と喩えられ――

 またあるいは、清濁を織り交ぜながら流転し続けるさまは、『ゆく川の流れは絶えずして』と、無常観の象徴として謳われる。

 今回は、そんな、『水』に関するお話であるようです――


 ――とは、黒のアサシンドレスを身にまとったタヌキ――ではなくて、狐耳の妖狐、神楽坂文が独白のようにしながら、金沢は兼六園のような石橋の高見より、流れる清涼な水を眺めていた。

 また、その片手には、透明なグラスに、酒と思しき液体が並々と湛えられる。

「……」

 妖狐は無言で、まるで、いい目してサボっているかのように静かに佇む。

 すると、そこへ、


 ――ブ、シャァァッ!!


 と、突然のことか――!? 妖狐の顔面に、バケツ一杯の精いっぱいの水がぶっかけられる!!

「――!」 

 妖狐は反応するも、続けざまに、

 ――ドバァァッ――!!

 ――バッ、シャァァン――!!

 と、頭から正面後からと、連撃のように水をぶっかけられる!!

 同時に、神っぽいヤツはだいたい友達な、こちらの異世界の博徒連中が現れるや否や、

「オラァ!! 見つけたぞ!!」 

「さっさと、溜まった妖力のツケ、返さんかい!! コラァ!!」

「どうせ、返せないんでしょ? 犯していい? 犯していい?」

 などと、リンチのように詰められる。

 どうやら、チートクラスの妖力を持つものの、仲間らに借りがあるようだった。


「いやぁ、すんませーん。水に流してどうぞ」

「ああ” 絶対謝ってねぇだろ!!」

「おうよ! 水に流すって言って良いのはなぁ! 貸がある方だけなんだよ! んなことも知らねぇのか! クソポンコツクソダヌキ!」

「そうよ、バカなの? バカなの、アナタ?」

 などと、男女、あるいは触手といった怪物姿のものたちあわせ、水をぶっかけつつ妖狐をボロクソに攻め続けた。


 そうしながらも、

 ――サワ、ァァ……

 と、騒がしい妖狐たちなどとは関係なく、清涼にして静寂に、水は絶え間なく流れる。

 そして、話は、妖狐の関心を以って独白したように、『水』に関する話へと変わる。

 また同じく、場面も、異世界【神楽坂】から、ギャンブル好きの神々が創りし確率仕掛けの世界――、地球のある“こちらの世界”へと変わることに――

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