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元の姿

「はい。はい。自分でなにを言っているのかわかっているのか?今日のレオンは飲み過ぎだ」

 ノアは苦笑いしながら、ぐでんぐでんのわたしを起こして、肩を組んで一緒に歩いてくれる。

 ノアはやっぱり優しい。

 真っすぐに歩けないこんな状態になったわたしを置いて行かないなんて。

 大聖堂暮らしになった最初の頃は麓の行き帰りによく山の中に置いて行かれたのにな。


「ノア様。ご面倒をお掛けします」

「…う、うん」


 夜風が気持ち良い。ノアはそれ以上はしゃべることなく、寮までゆっくり運んでくれた。



 なんとか、ひどく酔っぱらい、意識が朦朧とするレオンを寮の部屋に連れて帰ることができた。

 こいつがこんな風になるまで飲んだところを見たことがない。

 それにさっきの「ノア様」ってなんだ。

 あの一瞬はレオンが綺麗な女に見えた。俺も相当酔っているらしい。

 

 申し訳ないが見た目より筋肉があるレオンが重くて、ベットに投げ捨てるようにドサッとレオンを下した。

 すると、カランカランと音がして、なにか軽い金属のような物が床に落ちた音がした。

 なにが落ちたのかと視線を床に落とすと、銀色の指輪がコロコロと転がっている。

 (落ちた物はこれか)


 慌てて指輪を拾い上げて、指輪を手に取った。

(この指輪、今朝レオンが左手の人差し指にしていた指輪じゃないか)


 レオンをベットに乱雑に置いたから、その勢いで指輪が外れたのだろう。指輪を元に戻してやろうと、レオンが眠るベットを見る。


「なっ……!!!!」


 レオンが寝ているはずのベットに白いドレスを着用した女が眠っている。

 薄暗い月明りだけの部屋だが、見間違えではない。

 俺はたったいまレオンをこのベットに下したはずだ。たった今…のことだ。

 やっぱり俺も相当酔っぱらっているのだろうか。

 いまの状況が理解できずに、ただ唖然とベットの側に立ち尽くして、白いドレスの女を凝視したまま、必死にこの状況を理解しようとする。


 5秒は時間が止まっていたと思う。

 ずっと見ているが、やっぱりレオンは白いドレスを着た女になったと思う。

 女の顔をじっと見る。

 流れるような真っすぐな髪でレオンと一緒の光るような金髪にきれいな顔立ち。

 レオンが女ならこんな綺麗な感じか。まるで月の国からきた聖女のような…

 聖女…


「アグネス?」


 まさか、本当にアグネスなのか?レオンの妹のあのアグネスなのか?


 ベットで眠る女の肩を軽くゆすってみる。

「アグネス、アグネスなのか?」


 白いドレスの女が気だるそうに薄目を開ける。

「?もう少しだけ…寝かせて…」

「アグネスなのか?」

「…ん?…そうだよ…」


 それだけ言うと、女は再び瞳を閉じた。


 やっぱりアグネスだ。でも、なぜ。

 彼女は山奥の大聖堂にいまも軟禁されているはずだ。

 俺はレオンの指から落ちた銀の指輪を握りしめていた。


 アグネスが起きるまで待つしかない。待ってアグネスから事情を聞かなければ。


 目の前にアグネスがいる。俺の婚約者になるはずだった令嬢。

 毎月1回だけレオンだけが許される面会の時に、俺は自分の正体を隠し、レオンの従者として面会に付き添っていた。

 もちろん、面会室にはレオンしか入れない。扉が開く瞬間にだけアグネスの姿を見ることができた。

 それだけで俺はよかった。



「よく寝たわ」

 目がパチッと覚めたがまだ部屋は暗い。いまはまだ夜明け前なんだろう。

 起き上がろうとすると原因不明の頭痛がするし、謎の吐き気もする。喉もカラカラだ。

 わたし、ひどく体調が悪いけど、どうしてこんなに調子が悪いのだろう。


 人の気配がして横を向くと、机の椅子をベットの側に持ってきて座り、こちらをじっと見ているノアがいた。


「ノア!」

「やっと目が覚めたか。聖女アグネス殿」

「えっ?」

 えっ?驚きで上体を起こすと、自分の長い金色の髪の毛が腕や顔にかかることに気づいた。

 手を見ると、手荒れが酷い小さな手に戻っている。手首や腕も細く、さっきまでの均整のとれた筋肉がない。


「ノア…いまなんて…」

「聖女アグネス殿だよな」

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