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魔導師、精霊と口論する①

「はぁ~」

王都から帰って来てから、メリーは窓辺で外を見つめる事が多くなった。

今もメリーは窓辺でため息をついている。

「少し質問があるんだけど、ナルヤの事ってどう思ってるんだ?」

気になって堪らなかったから、ナルヤについて尋ねてしまった。

「えっ、ナルヤさん?どうって…かっこいいと思うよ。」

メリーはゴニョゴニョと口籠もっている。

500年前なんて周りに恋をしている人が身近にはいなかったから、どうやって接して良いかわからない。

ましてや、自分の弟子となんて…


確かにメリーの年は初恋のひとつやふたつ経験しているのが普通なのかもしれない。

しかし、ナルヤは500歳越えのほぼ不老不死だ。

歳の差恋愛なんて比じゃない。

でも、考え方を変えれば、彼女がもっと魔法に対して興味を持ってくれるようになるかもしれない。


「多分ナルヤも自分の精霊を持っていると思うんだが、メリーも自分の精霊を見に行かないか?」

「精霊?」

すぐに話に食いついて来た。

「僕達魔導師は、エネルギーが重要なんだ。でも、エネルギーはいつかなくなっちゃうだろ?そこでエネルギー供給に役立ってくれるのが精霊なんだ。」

精霊はエネルギーを供給してくれたり、代わりに魔法の手助けをしてくれる。

僕もかつては精霊を持っていたのだが、エレーヌ様が亡くなってから呼び出した事がなかった。数十年呼び出して居ないだけでも、精霊の契約が切れる。500年なんて僕のことを覚えても居ないぐらいだろう。

「でも、精霊なんて何処で見れるの?」

「500年前は精霊の住む地に出向いて、契約をしていたんだ。ナルヤが言ってたんだが、戦後に誰でも精霊の契約ができる所ができたらしい。言ってもペット感覚の小さな精霊らしいんだけどね。」

小さな精霊でも、エネルギー補助などの役に立ってくれる。

「メリーにとっても徳があると思うんだけどどうかな?」

「行きたい!」




ナルヤがおすすめしてくれた場所は王都よりの小さな村の中にある。祖母がメリーの遠出を許してくれるかが不安だったが、

「まぁ、ナルヤ様が。メリーに精霊をおすすめして!」

と大喜びだった。

メリーの祖母は昔からナルヤの大ファンだったらしく、遠出を受け入れてくれたのだった。



「ここの店のようだな。」

店に訪れると、ドアは少し苔が茂っていて、古臭く感じる。ドアノブにかけられている木の看板には《Open》と彫られていた。

「ここで会っているんだよね?」

「多分…」

ナルヤの進めてくれた店だが少し心配になる。

「まぁ、変な店だったらすぐ出ていこう。」

メリーは頷いて、恐る恐る扉に手を伸ばす。

扉から変な音が鳴りながら、ゆっくりと開かれた。

中は外の見た目の通り、雑貨屋のような見た目だった。

「いらっしゃい。」

店の奥からは、白髪の老婦が出てきた。

老婦はオリエンタルな動きやすい服を着ており、かけている眼鏡から少しキラキラと輝く赤い目がのぞく。

「君は、精霊をみに来たのかい?」

下がりかけた眼鏡を上にあげながら、老婦は棚をあさる。

「はい。」

メリーは緊張しながら返事を返す。

「精霊と契約はした事があるかい?」

「初めてです。」

「…そうなの。じゃあ私が君にピッタリの精霊をみてあげるわ。」

老婦は棚から水晶など様々な道具を持って、メリーの前に立つ。

「お、お願いします。」

「そんなに気張らないで。」

老婦はにっこりと笑う。

水晶に触ると、老婦は真剣な顔になり、まるで部屋そのものの空気が変わったように感じた。老婦は何らかの呪文を唱える。

すると、老婦が持っていた道具が空中に浮かぶ。

「凄い!」

「そうだろう?これからお嬢ちゃんのエネルギーを見て、ぴったりな精霊を決めていくからね。」

老女は目を瞑り、魔法に集中している。

「?、エネルギーが手に偏っている。なんだこりゃ!?」

老婦は急に焦り始めた。

しかも、しゃがれた声が段々と若々しく、はっきりとしてきている。


「まさか。お前はログ=マルニエか?」


「え…」

メリーも僕も名前を呼ばれて驚いた。

「うわ!転生魔法を使って勝手に未来へ行ったログかしら。」

メリーは恐る恐る老婦に尋ねる。

「もしかして魔導師さんのお知り合いですか?」

「そうよ。…あれ?もしかしてこの幼女の手にでも転生したのね?滑稽な奴だわ。」

老婦の話を聞くに僕との知り合いだそうだが。僕はこの老婦を知らない、ナルヤのように準不老不死の魔法を行った誰かなのだろうか。こう言ってはなんだが、準不老不死の魔法に使ったにしては姿が老けている。

「きょとんとしているようだから、見せてあげましょう。ほらね。」

老婦が大きなお団子状の髪を解いた。すると、白髪だった長い髪の毛が青緑色に変わり、赤い目がいっそう輝いた。そして、姿が若く美しい女性の姿に変わる。彼女の炎のように輝く髪には見覚えがあった。

「私の名はフラムフィ。炎の元素精霊よ。ログ=マルニエの精霊の1人なの。」

フラムフィは契約した精霊の1人だ。元素精霊とはその元素系列の根源となる精霊で、フラムフィならば炎の精霊全ての根源なのだ。しかし、精霊との契約は10年過ぎたら切れるはずなのだが。

「お嬢ちゃん、昔は契約書を作って精霊と契約していたの。このログ=マルニエは、契約書にインクを落としていて契約期間が10年から1000年になっていたのよ。もちろん確認してなかった私も悪いんだけどね。」

「契約した本人が居なくなったら普通は解除されるのに、未来に転生しているもんだからずっと解消されてないのよね。」

「そ、そうなんだ。」

メリーは目をパチクリさせたままだ。

「あ、えっと、魔導師さんがいるって事が何で分かったの?」

「それは、精霊はオーラが見えてるからね。オーラっていうのは人間の性質みたいなものが形として出ている感じなんだけど…

契約者だといっそう強く読み取れるの。今でもオーラによって、あのにくったらしいログの驚いている顔が見えるわ。」

フラムフィは面白そうに左手をじっと見つめる。

「でも精霊が王都近くにきて、人間の近くで暮らしているなんて…」

僕は驚いて、口ずさんでいた。

多くの精霊達は人間とは離れた場所に居た。このフラムフィだって山奥の秘境のような所にいたんだ。契約の時は大変だった。

「ログ、500年も経ったのよ。私達の生活も変わるわ。」


「「!?」」


僕の声が普通に聞こえている?メリーと入れ替わっている時以外今まで誰にも僕の声が伝わっていることは無かったのに。

「そんなに驚くことかしら?500年は経っているのよ。

私みたいに人間界で暮らしている精霊も少なくはない。」

「あぁ、それも驚いたんだが、僕の声が聞こえていた事に驚いている。普通は聞こえないんだ。」

メリーは僕の言葉に何回も頷いている。

「ん?、ログの声が普通の人間には聞こえてないってことかしら?」

フラムフィは宙に浮かび、考えているような姿勢になる。

考えついたのかフラムフィは宙に浮いたまま、メリーに顔を近づける。

「もしかしたらログは転生をして、精霊と似たような存在になっているのかもね。」

フラムフィの目が眩しいくらいに輝いていた。


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