魔導師、500年ぶりに弟子と会う②
「貴方が抵抗するなら、僕は受け入れるよ。」
そう言いながら物凄い速さで無属性の魔法を投げてくる。
威力も相当上がっているようで、防御魔法をしていても、後ろに押されていく。
「流石先生だ。腕は鈍ってないようだね。」
「いや、まだ…君のいう先生とは…」
僕はナルヤの攻撃を受け、言葉を返すので精一杯だった。
「確かに、まだ分からないよね!」
彼は機嫌がいいのか、鼻歌を歌いながら魔法陣を空中に描いている。
魔法の書き換えを行うのに魔法陣はとても重要な役割を果たす。魔法陣には扱う魔法の情報が全て載っているのだ。強化を入れたい時は魔法陣に直接書き込まなければならない。しかし、その中から強化をしたい点を正確に選ばないといけないため、書き換えは時間がかかる物なのだ。
ナルヤのように戦っている相手の目の前で書き込むなどあり得ない。彼は油断をしている。そうなら早めに決着をつけた方がいい。彼に本気を出されては、今の僕は勝てる気がしない。
今のうちに彼を拘束魔術で拘束してしまおう。
(鎖よ、拘束せよ)
ナルヤの元へ素早く伸びていった鎖は鈍い音を立て壊された。
拘束魔術もガードで反射された!?
500年前は、単純な動きをする拘束魔術は簡単に相殺、避けることができた。よって拘束魔法は防御するものとして捉えておらず、ガードには拘束魔術を防ぐという式が載っていなかった。
この500年で防御魔法は進化しているのだろう。
「うーん。まぁ速さは良いんだけど、今は拘束魔法ってほとんど使われてないんだよね。それより、今魔法を作ったんだけど、先生に見てほしいんだ。」
ナルヤは僕の弟子で1から100を作り出す天才だった。
彼の横から魔法陣がいくつも出現する。
「ッ!」
魔法陣から無属性の魔法弾が何個も組み合わさり、時間差で飛んでくる。ガードを急いで展開する。
ガラスが割れるような音が鳴り、ガードが破られる。
「ガード破りの魔法!?」
500年前はもちろんそんな魔法は無かった。
ガードを壊される毎に貼り直していたら、この身体ではすぐにエネルギー切れを起こすだろう。
ナルヤは僕がログ=マルニエだと言う事は分かっているように見える。
どうやったらこの戦いは終わるのだろう。なぜナルヤが500年も生きているかはわからないが、そんな彼にエネルギー切れを狙うのも難しそうだ。
打った魔法もガードによって防がれてしまう。
「…!」
…そうか、僕もガード破りの魔法を作ればいい。
メリーの身体は剣の鍛錬によって速いスピードを持っている。だからガードとそのスピードを使えば。
ナルヤの攻撃を避けながら、式を組み立てる。当たりそうなものはガードで防いでいく。エネルギーはどんどん削れていっている。しかし、魔法を作り終えるまでには間に合うだろう。
「できた…!」
ナルヤにできるだけ接近する。
この魔法は極限まで速さに特化している。
「!?」
ナルヤは僕が近づいたのを見てガードを構築した。
しかし、僕が近づいてくるとは思っていなかったのだろう。防御魔法に揺らぎが見える。
「防御破壊魔法よ、ナルヤのガードを割れ!」
魔法というものは、ナルヤが無属性魔法を自分の手のように自由自在に操るように、使う人が魔法に及ぼす影響は少なからずある。魔法は使う人によって同じ魔法でも効果が変わる事だってあるのだ。
振動させるイメージを防御魔法に組み込む。
そして、僕のガードが彼のガードに当たった時、振動が彼のガードの内側から崩す。
バキンッ!
僕のガードよりもより重い音がして割れた。
ただガードに振動を加えただけでは、彼のガードは壊せなかっただろう。メリーのスピードによって速くなった振動のおかげで破壊ができた。
ガードが破れた反動でナルヤは軽くよろける。
その隙を逃さないように、拘束魔法を唱える。
「クッ!」
ナルヤの足と腕が魔法によって拘束された。
「もう、いいんじゃないかな。」