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魔導師、ドラゴンと対峙する②

「いくよ!魔導師さん!」

メリーは襲いかかってくるリザードに次々と剣を当てていく。僕達の作戦はリザードをなるべく魔法無しで無力化し、ドラゴンの攻撃を援軍が来るまで耐えるというものだ。

「あ、あの子は…誰なんだ。」

鎧の男はその踊るような剣技に見惚れている。

「まさか、あの子リナーヴ大尉の娘さんでは?」

「…!、写真で見たことがあったが…」

「リナーヴ大尉の娘さん?いつも自慢はしてたが、あんなに剣を扱えたのか。」


メリーは剣を持つ手が震えていた。

「メリー、大丈夫か…?」

「大丈夫だよ…」

大丈夫と言っているが額には汗をかいている。早めにこの戦いを終わらせなくては。

リザードが横にやってきていた。

このままだと剣がメリーにあたる。ガードが間に合わない…

「!?」

リザードは尻もちをついて倒れる。

鎧の男がリザードにメリーを庇うように体当たりをしていた。

周りではカキンッと剣と剣がぶつかり合った音が鳴る。メリーは目を見開く。鎧の騎士達がリザード達と戦っていた。

「君!リナーヴ大尉の娘さんだろう?」

「我々がリザードを倒す!君がいなくなったら大尉はひどく悲しまれてしまうだろう。ここは任せてくれないか。君は…」

「私、ドラゴンの方にいきます!」

「…任せたぞ。」

メリーは急いでドラゴンの方へ走っていく。

後ろでは鎧の男達の話し声が聞こえてきた。

「いいんですか、あの娘は幼いのにドラゴンを託して。」

「何があったらすぐに助けに行くさ…でも娘さんの剣技を見たくなってしまった。」

メリーはより強く剣を握りしめ決意を露わにした。


ドラゴンとの距離は数メートルにもなっていた。

「メリー、少し提案がある。」

メリーはぴたりと足を止めて、木陰でしゃがむ。

「魔導師さんの作戦にしたがうよ」

「じゃあ、メリーはドラゴンをよろめかせてくれないか。」

「わかった!!」

メリーは立ち上がり、剣を構える。ドラゴンは鼻息を荒くしメリーを見つめる。その姿を見ると、メリーは逃げるように再び木陰に隠れた。

「ちょっと待って…あの大きなドラゴンを…?私の力でどうやって…」

メリーの剣だけであのドラゴン倒すのは難しいだろう。しかし、よろめかせる事ができたなら可能性はある。

僕は周りを見回す。ドラゴンの後ろには1ヶ月前に凍らせた事のある湖があった。

「…よし。」

「メリーはドラゴンの翼を傷つけるだけでいい。」

「それでいいの?」

メリーは不安そうに尋ねる。

「できるかい?」

メリーはコクリと頷く。その後すぐにドラゴンの元へ駆け出していく。

「メリー、5秒後にドラゴンが攻撃を出してきそうだ。その時、飛行魔法を使う。」

「分かった!」


刻一刻と時間が迫る。ドラゴンは大きく息を吸う。

ドラゴンの攻撃はエレーヌ様の後ろで何度も見ていた。このドラゴンの攻撃が500年前と同じなら何が来るのかわかる。

「メリー行くよ!飛行魔法よ、空に飛ばせ!」

飛行魔法によって大きく空へ飛び上がる。やはりドラゴンは炎を纏った息を吹いた。

ブレスを履いている間は隙ができる。

ドラゴンは息を吐くのに集中して周りが見えていない。

「翼をっ、狙う…!」

メリーは落下しながらドラゴンの翼に剣を突き刺す。ドラゴンは苦しそうに声を上げ、メリーが必死に掴んでいる剣を振り落とそうとする。

「ハァァ!」

メリーはドラゴンの翼を蹴り上げ、剣を右上に振る。ドラゴンの翼はパタリと折れ曲がった。

「メリー、湖に向けてドラゴンに攻撃をするんだ。」

メリーにこの声が聞こえているかは分からない。メリーはただ一心不乱に剣を振り上げる。

着地と共にメリーは素早くドラゴンに剣をおろし、その攻撃はドラゴンの腹へあたった。

「ドラゴンは翼に水平を保つ機能がある。だから、翼を傷つけられた状態でバランスを崩したら…」

ドラゴンがよろめいた。

「あとは、僕の番だ。」


「水よ、動け」

水は形を自由に変える事ができる。魔法とも相性のいい物質だった。

湖の水は手のようにドラゴンの足を掴み、湖の中へ引き込む。ドラゴンは必死に逃げようとするが、平衡感覚を失った身体では上手く動けない。

数秒後にはドラゴンは大きな音と飛沫を立ててドラゴンは湖へ落っこちた。

湖へ引き込めたら僕たちの勝ちだ。

「湖よ、凍りつけ!」

湖が氷に覆い尽くされていく。

ドラゴンや水飛沫さえも氷になった。


ドラゴンが氷漬けになったぐらいで死ぬことは無い。しかし、氷が溶ける頃には、王国の騎士達がドラゴンを倒すだろう。

「メリー、流石だ。よくやったよ。」


「そんな、魔導師さんはもっと凄かった!」

「でも、メリーが翼を折ってくれなければ、湖に落とさなかった。そうだろう?」

メリーは恥ずかしそうに顔を手で隠す。

「えへへ。あのね、魔導師さんに、美しいって言われたの嬉しかった。」

「あ、あれか…」

つい口走ってしまった事を後悔する。きっと、メリーの左手は熱くなっている。

「ねぇねぇ、どこが美しかった?」

「いや、それは…秘密だ。いつか教える。」

「えー!今教えてよ!ま導…師さ…」

メリーの顔から笑顔が消え、頭を抑えた。そして、地面に倒れるようにうずくまる。

「メリー!?ぐっ!ぼ、僕も視界が…」

エネルギー不足時の鈍い痛み、眩暈の感覚。

意識はそこで途切れた。









「!?」

目が覚めるといつもの小さなベッドがある部屋ではない、簡素なものになっていた。メリーの部屋のように、絵本やぬいぐるみは置いていない。ベッドは白のシーツを敷かれており、柔らかく包み込むような陽だまりの匂いは無い。ここはメリーの部屋では無いようだ。しかし、ベッドの横にある窓に反射しているのはメリーの顔だった。

またメリーに入れ替わっているようだ。

これまでの事から入れ替わりの条件は、魔法を使いすぎることではあるだろう。しかし、どれほど使うと入れ替わりが起きるか、何をしたらメリーは意識が戻るかなどわからない事は多い。

窓から外をみると、見覚えのある街並みだった。

ここは、王都なのか。

500年前と比べてやはり栄えているが、劇的に街並みは変わっているわけではない。

何故王都に、その疑問はすぐに分かることになった。

「メリー!大丈夫だったか?まさかエネルギー不足だなんて。」

扉を急いで開けたのは、森で見た騎士の鎧を着た男。しかし昨日の男達よりも装飾は豪華で、体格が良く、頬についている傷跡から手練れだとわかる。髪はメリーよりも明るい茶色。顔からして30代くらいにみえる。そして、メリーと同じ緑色の目をしている。

その顔はメリーの机で見た事があった。

「…パ、パパ?」

男はメリーの顔をジッと凝視する。

「…」

「あぁ!良かったよ。元気になって!確か最後に会ったのは3ヶ月前かなぁ。みるみる成長してるように見えるよ。」

メリーの父は少し悩む素振りを見せたが、久々の再会に目を潤わせている。

「わ、私も寂しかった…」

「メ、メリー!」

鎧が抱きしめようとして、被さってくる。メリーの小さな身体では潰されそうになっている。鎧の人達が言っていたリナーヴ大尉とはメリーの父の事だったのだろう。メリーの親にメリーとして会うなんて考えてもなかった。すぐにメリーに変わりたい。

「実はお父さんが応援に駆けつけた時は、もうすでにドラゴンは倒されていたんだ。でも、聞いたところによるとそれはメリーが倒したって!魔法も練習してたなんてな。子供の成長は早いって本当だったんだなぁ…」

メリーの父は自慢げに語る。

「でもな、家へメリーを送り届ける前に、それを騎士の本部へ通信魔法で話しちゃったんだよ。」

「え」

「そしたら、うちの司令官様でもあるナルヤってやつがメリーに会いたいって。凄いな〜!メリーはこの年でもうナルヤに一目置かれるなんて!」

身体中から汗が噴き出ている気がする。

ナルヤにこの状態で会う?考えたくない。

ナルヤは僕の弟子の中で1番、過去に戻る魔法を使う事を反対していた。そんなナルヤに魔法を使った後に出会うなんて…

しかし、ナルヤは500年前の人間だ。500年間も生きているなんて考えられない。僕が知っているナルヤとは別人だと信じたい。

「ナルヤがメリーが目が覚めたら訓練場に来るように言っていたよ。目が覚めてすぐで申し訳ないが、行ってくれるかい?」

僕は、ゆっくりと頷いた。













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