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魔導師、魔法を作る②

フラムフィはヘスティアを大きく振り上げた。その剣筋はモンスターの鎧に当たる。

モンスターは大きく吹き飛び、木にめり込んだ。しかし、モンスターの鎧には傷がついていない。

「もしかして剣を通さないの…?」

メリーが心配そうに呟く。


「グァウ…!」

モンスターは辺りを見渡しながら起き上がる。フラムフィと目が合うと素早く森の奥に逃げていってしまった。

「…呆気なかったな。」

「フラムフィの事を怖がって逃げ出しちゃったのかな?」

メリーが嬉しそうにぴょんぴょんと飛び跳ねているのを見た後、フラムフィは俯き考え込みはじめた。


「…いや、!メリーちゃん伏せてくれっ!」

何かに気がついたのかフラムフィはメリーに大きな声で伝えた。メリーもよく理解はしていなかったようだが、急いで頭を下げる。


「炎よ、私に集え!」

フラムフィが詠唱をする。すると、ヘスティアに纏っていた炎が成長する。ついには炎が周りの木々を超えるほど高く伸びていた。

「ハァッ!」

フラムフィは勢いよくヘスティアを横に振る。

周りの草が燃えていく。そして今まで茂みに隠されていた地面があらわになっていった。

「っ!?」

メリーが顔を上げると周りには何十体ものモンスターが剣を持ち奇襲をしようと隠れていたのだ。

モンスター達はバレたと言わんばかりに、一斉にケタケタと笑い声を上げる。

「…っ」

メリーはフラムフィの裾を小さな力で握る。その手は震えていた。


メリーが恐怖を覚えても仕方がない。周りにはお化けのような頭の無いモンスターが気味の悪い笑い声をあげながら囲んでいるのだ。この様子だとアイツらは、炎魔法も効かない上、剣も通らない。

「なぁ、ログ、攻撃の効かないモンスターなんていると思うか?」

「え、いや、それはありえないと思うが…モンスターも生き物だからな…」

「そうか…」

フラムフィは笑みを浮かべる。

「ログ、500年前に私に掛けてくれた魔法覚えているか?」

500年前の戦争中に、後ろから不意をつかれ、何十人もの騎士に囲まれた事があった。

あの時は確か…

記憶が鮮明になっていく。あの時はフラムフィに魔法をかけた。精霊純化魔法。500年経った今でも精霊についてはよく分かっていないらしいのだが、精霊は人間のエネルギーのような物でほぼ構成されている。

そこで僕はとある魔法を思いついたのだ。

精霊を魔法として扱えないだろうかと。

今思い返せば、やけくそな考えだ。そんな事を思いつくぐらい切羽詰まった状況だったわけだが。

精霊純化魔法には二つの制約があった。一つ目の制約は魔法をかける精霊は自分が契約した精霊だけというもの。二つ目はエネルギーの使用が両方とも7割近くのエネルギーを失うという大きなデメリット。

その上、魔法の威力は完全に精霊の力に依存する。

しかし、フラムフィ程の原素精霊を魔法にすると、決して人間が到達出来ないほどの威力の魔法を出せるのだ。

「でも…」

僕はメリーの顔を見つめる。

エネルギーが7割無くなってしまうのは、僕達が入れ替わる原因になってしまうかもしれない。

「っそうか。メリーちゃんにも影響があるのか…」

フラムフィも気づいたようで、メリーから目を逸らした。

それに気づいたメリーはフラムフィに飛び掛かるように、身を乗り出す。

「だっ大丈夫だから!エネルギーを使う事になっても私は大丈夫!」

メリーはニコリと微笑む。しかし、その笑顔からは焦燥も感じられた。


「グェアア!」

僕らの事をあざ笑うのを飽きたのか、モンスター達は石を投げ始める。

いつ大勢で襲いかかってくるかは分からない。

「精霊純化魔法をやろう…フラムフィ」

「えっ。でもメリーちゃんが…」

メリーは首を横に振る。

「ううん。いいの!倒しちゃって!」

「っ!分かった。」

フラムフィは準備は出来たと言うようにメリーの左手をまっすぐ見つめる。


「精霊純化魔法よ、フラムフィを純化しろ」


フラムフィの身体がキラキラと輝く。その輝きがメリーの身体に集まってくる。

「ログ、メリーちゃんを群れの中心につれていってほしい。」

頭の中にフラムフィの声が響く。メリーの様子を見るが、メリーにはこの声は聞こえていないようだった。


「メリー、モンスターの群れの真ん中に向かってくれないか?」

僕の言葉にメリーは驚いた表情をみせる。「あ、うん!わ、分かった!」

目を見開いた表情のままメリーは地面を蹴り上げた。


メリーが急に群れの中央に突っ込んできた為、モンスター達は剣を構え始める。


メリーが中心に付くと、モンスターが一斉に襲ってくる。

「ギャァ!ギャァ!」


「こ、ここまで来たよっ!?どうすれば…!」

メリーは剣を震える手で握り直す。メリーの前にぼうっと明るい火が現れる。

「フラムフィ…?」


「メリーちゃんに伝えて、安心してってね!」


頭の中に聞こえた声は優しかった。気づくと辺りはいくつもの火の粉に囲まれていた。蛍が道を案内するために照らすように。


「フラムフィよ、森を燃やせ!」

「もちろんいいわ!」

強い風が吹き荒れる。青い炎に纏われた宝石のようなフラムフィが風を切り裂くように現れる。その手にはヘスティアを持っていた。その眩しさにモンスター達は目を瞑り始める。


空中から飛び降りたと同時にヘスティアを地面に突き立てると、地面からメキメキという音がなり衝撃波が伝わる。

「うわぁっ!」

地面が揺れた事で、モンスター達はバランスを崩している。

フラムフィはそれを見逃さなかった。

「ログ、メリーの事をガードして!それくらい出来るエネルギーは残ってるでしょ?」

「防御魔法!」

メリーを囲むように防御魔法を組み立てる。

それを見たフラムフィは挑戦的な笑みを浮かべた。ヘスティアを構え、深くしゃがみ踏ん張るようなポーズを取る。すると、ヘスティアの先端から炎が勢いよく燃え始める。

「ハァ!」

ヘスティアがモンスターに当たると、鎧が溶け貫通する。彼女はヘスティアを振り回す。ヘスティアに当たったモンスター達は苦しむこともなく、ドロドロに溶けていってしまった。

フラムフィは落ち着かせるように深く深呼吸をする。


「これは、やりすぎでは?」

僕が尋ねると、きょとんとした顔で辺りを見回す。

「まぁ、そうかも…」

辺りは一面焼け野原になっていた。

外からの光が届かないほど生い茂っていた木々は全て炭になってしまっている。

「また、アルボレに頼まないと…」

フラムフィは気まずそうに、頭を抑える。

「それにしても、私のヘスティアを通さない鎧って…」

フラムフィは焼けこげた地面に鎧だけ残っているモンスターに近づく。

「…!」

何かに気がついたのかフラムフィはメリーを手招く。

重い足取りでメリーが近づくと、中心だけ溶けている鎧が落ちていた。

「何か気づく事ない?」

フラムフィが尋ねると、メリーは考え込む。

「す、凄い威力…ってこと?」

メリーが首を傾げると、フラムフィは目をパチクリさせる。その後、吹き出すように笑い始めた。

「あはは、まぁそう言われて悪い気はしないかな。でもそこでは無いんだよね。ちょっと見て欲しいんだけど…」

フラムフィは鎧に手を触れる。


すると紫色の魔法陣が浮かび上がった。

「これは…?」

フラムフィは唾を飲み込む。

「これ、私達が追っている暴走事件の被害者と同じ魔法が掛かっている…」





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