魔導師、精霊周回に参加する②
ガイアが魔法を詠唱すると、空間が移り変わる。気持ち悪い感覚の後、再び意識の途切れた事からさっきフレが使った魔法と同じ物を使ったのだろう。
フレが掛けた時とは違い、移動した場所は空中ではない。ちょうど地面に足をついた状態でメリーは目を覚ました。
「ここは…?」
メリーが辺りを見回すと、ガイアは手を招く。先ほど、ガイア達が居た場所のように此処は何もない。しかし、ガイアが手招いた方向にあった部屋は、強く光っているように見える。
「よぉ、お前ら元気だったか?」
ガイアは手を振った。部屋の真ん中にある丸い机を囲むように人が座っている。
その空間にいる人達は全員、見目麗しく、エネルギーの巡りから只者ではないとわかる。
「あら、久しぶりに参加したのね。」
そう声をかけていたのは、淡い水色の髪の女性。ガラス細工のような美しい洋服を着ており、儚い印象がある。パイプのような物でぷくぷくと泡を吹いている。
「早く終わらせよぉ。僕眠いし…ふわぁ」
黄緑色の髪でおさげをした少女があくびをする。服は物語に出てくる妖精のように色とりどりの花や草で作られているのだ。彼女は背中に大きな木を背負っている。
「何十年ぶりじゃないですかね!」
黄色い髪の毛の青年が嬉しそうに顔を綻ばせる。彼は白の気品のあるスーツを着ている。しかし、そのスーツが破れそうなぐらい筋肉があり図体がでかい。
「久しぶりですね、ガイアさん。」
読んでいた本を閉じ、こちらを向いたのはフラムフィだった。この前に見た老婦の姿ではなく、若々しく美しい姿、そして燃えるような青い髪、精霊としての本来の姿だった。
椅子に足を組んで座っていたフラムフィが何かに気づいたように、足を崩す。そして、呆然としながらメリーを指差した。
「な、なんで、お嬢ちゃんがここに?」
視線が一斉にメリーの元へ集まる。
すると、ガイアがメリーの肩に手を乗せる。
「まぁまぁ、俺はこの子に今回の話と関係あると思っただけだから…な?」
メリーは何回も頷く。フラムフィは心配そうにこちらを見ていた。
「まぁ、いいや。よくわかんないけどさっさと始めようよぉ。」
黄緑色の髪の少女が眠たそうに目を擦る。
「進めて良いのよね?」
淡い水色の髪の女性が尋ねると、それぞれが頷く。
「分かったわ。まず誰が来ているか確認するわね。」
「アルボレはいるわよね。」
「はい、はぁい。」
アルボレは手をひらひらさせながら上げる。
「アイツはアルボレ、木の原素精霊さ。この中では一番新参者の原素精霊なんだ。」
ガイアは小声でメリーに説明を始めた。
「そうなんですね…」
メリーはアルボレが背負っている木を見つめる。
「嬢ちゃん、これが気になるの?」
メリーの目線に気づいたようで、アルボレは木を指差す。
「あ、はい…」
「これは先代の木の原素精霊のソーリスだよ。」
「せ、先代?」
「うん…先代が辞めて木になりたいとか言うから僕が変わったの。」
「へ、へぇ」
メリーは内容についていけてないのか、考え込む。
「まぁ、そんなに考えこむなよ。此処にいるのは精霊達だ。人間の普通は通用しないさ。」
「そのぉ、初めて良いのよね?」
水色の髪の女性が少し苛立ちながら腕を組む。
「あぁ、俺らの事は気にしなくて良いからな。」
ガイアの様子を見て、不満そうに続ける。
「エレクは?」
「此処にいますよ!」
エレクは立ち上がる。身振り手振りが大きく、この空間にいる精霊の中で一番人間らしい格好をしている。
「アイツはエレク。雷魔法の原素精霊。アルボレの次に若い原素精霊だな。」
「なんと言うか…人間らしい?」
メリーが呟くとガイアは感心したように話し始める。
「よく気づいたな、アイツは人間と一緒に暮らしている精霊だから人間に見た目や言動が似てくるんだ。」
「カームは…今日は来てないのね。」
女性は手元にある本を軽くなぞる。紙に線が引かれていくと同時にページが一枚捲られた。
「カームっていうのは闇魔法の原素精霊だ。人見知りなのを除けば凄い精霊なんだけどな…」
「フラムフィは…」
「いるわ。」
フラムフィは凛とした態度で手をあげる。キラキラと赤く輝く目がこちらに向かれたが、すぐに別の方向に移動した。
「フラムフィ、焦ってるな。」
ガイアはニヤニヤと微笑を浮かべている。
「フラムフィは炎の原素精霊なんだが…」
説明を続けようとしたガイアの動きが止まる。
すると、息の止まりそうなほど美しい顔がメリーに近づく。
「なぁ、お嬢ちゃんとフラムフィの関係ってどんな関係?」
「え、いや…」
メリーはガイアの宝石のような目から視線を逸せなくなっている。
「その…」
「ちょっと…ガイアさん。」
フラムフィの明瞭な声に虚になっていたメリーの目がはっきりとしてくる。フラムフィは腕を引いてメリーを抱え込む。
「いやいや、ちょっと気になっただけさ。フォンス、続けてくれて良いから。」
「はぁ、ガイアさんは居るでしょ?」
「もちろんいる。」
再び、楽しそうにガイアはそう発した。
「ここ100回くらい集会に来てなかったけどね…」
「はは、そうだったかな…」
フォンスと呼ばれた女性は軽くため息をつく。
「知っての通り、フォンスが今日の進行をしますわ。」
フォンスはダンスを踊る前のように美しくお辞儀をする。僕がフラムフィから聞いた話だと原素精霊と呼ばれる精霊は闇、光、炎、水、木で構成される。
この様子だとフォンスは水の原素精霊なのだろう。
「では今回の議題についてお話しますわね。」
フォンスの一言にこの空間が静まる。100回も来ていなかったガイアが参加したのを見ると、今回は重要な話し合いのようだが。
「最近、精霊と人間の力の暴走が散見されますが…」
「ふむ。精霊にも影響しているのは大変だな。」
「どうも、とある精霊がそのような魔法を使っているらしいのですわ。」
その言葉を聞いて、フラムフィがメリーの腕を強く握る。フラムフィの顔を見ると、その顔はひどく歪めていた。




