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魔導師、本を探す①

 僕は唾を飲み込んだ。

 禁書庫にメル、そしてナルヤが入ってきたのだ。

「それで、要件とは?」

 ナルヤが禁書庫の中を見回しながら、メルに尋ねる。

「あまり、見ないで欲しいのですが。貴方をこの部屋に入らせたくなかったんですけどね。今回は特例ですけど。」

「はは、ごめんね。」

 ナルヤのにこやかに微笑む姿を見て、ため息を吐く。

「本題に移るのですが、禁書庫にある本が盗まれたのです。」

「!」

 僕は無意識に木箱の縁を強く掴んでいた。

 メリーの事が入った時の魔法陣か何かでバレたのだろうか。

 ナルヤは表情を変えずに、頷く。

「ここの本棚にはかの大魔導師ログ=マルニエの転生魔法に関する文献が2冊あるのです。しかし一冊無くなってしまった…」

「それは…大変だな。」

 可笑しそうに返事をしたナルヤを見て、メルは苛立たしそうに腕を組む。

「貴方はログ=マルニエのお弟子様でしょう?もっと慌てるべきでは?」

「まさか、僕が疑われているのかい?」

「ずっと禁書庫に入りたいとの手紙を送っていましたよね。ここ最近、ぴたりとその連絡が来なくなった…怪しいと考えるのは普通では?」

「そんなわざわざ僕が禁書庫に出向いて本を盗むなんて煩わしいことしないよ。」

「はぁ?じゃあ、誰が盗んだと言うんですか?」

 言い合いがヒートアップしてきている。いつメルが魔法を使いナルヤに襲いかかるか分からない。

 すでにメモ帳に文書が写し終わっているが、このままだと長らくは木箱の外に出られないだろう。


「クシュンッ!」


 その音に禁書庫内が静かになる。

「ふぁあ、魔導師さん?本は見つかった?」

思わず深いため息が出てしまいそうになった。メリーはこの状況に気づいておらず、眠たそうにあくびをしている。

「メリー…木箱の外を見てくれないかい?」

「え?あっ!木箱に入ってる?」

 メリーが木箱から顔を出すと、目を見開くメルと笑いが堪えられずに吹き出しているナルヤがこちらを見つめていた。



「ライブラリアに入ったのは禁書を盗むためだったんですね。」

「いや、そう言うわけじゃっ!ない…です」

「はぁ、早く禁書を返してください。」

 メリーは僕の方をチラリと見つめる。

「大丈夫だ。すでに刷り上げ魔法は終わってる。」

「わ、わかりました。」

 メリーと一緒に木箱に入っていた本を手渡す。

「2冊目も盗もうとするなんて…」

メルは今2冊目と言った。僕達は確かに本棚から禁書を探していたが、僕の書いた本は一冊しか見つかっていない。

「はて?2冊目とは?」

 ナルヤは何か疑問を持ったようで、真剣な表情に変わる。

「すでに、一冊ここから持ち出しているでしょう?だからこの本を盗んだら2冊目になる。」

「わ、私初めてここの書庫に訪れたんです。」

「…?」

「リナーヴさん。ここは僕が説明するよ。」

 焦っているメリーを宥めるように、ナルヤは優しい眼差しを向ける。

「今回、僕がリナーヴさんをこの学園に推薦したのは、ログ=マルニエ先生の文献を盗んでもらう為。」

「なっ!」

 メルは目を見開き仰け反る。

「盗むと言っても、魔法で写してもらおうと思ってたんだ。」

「物体として盗まれてますが!?」

「そこなんだよ。僕らは実物の本を盗んでいない。そうだろう?」

メリーは必死に頷く。

 ナルヤは文献を使いたい理由やメリーが学園に入学した理由を詳しく説明した。


「まぁ、大まかな内容はわかりましたよ。」

 メルはメリーに鋭い視線を向ける。

「本を盗もうとした罰は大きいですよ。」

「うっ、はい…」


「盗まれた本を探してきてください。本が紛失したら探してくるのはライブラリアとしての規則です。」

「え…」

「手伝える事は手伝います。じゃあ、解散して良いですよ。」

ナルヤはメリーの近くによって耳打ちをする。

「意外と良いやつだろう?」

メルはため息をつく。

「早く帰ってください。貴方が禁書庫に居るって事が落ち着きませんから。」


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