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魔導師、幼女の手に転生する  作者: りょう改
二章 学園編
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魔導師、本を盗む①

僕らが学園に戻った時、すでに日が登り始めていた。深い青色だった空が、火のような真っ赤な色に包まれる。

「メリー!」

寮に戻ると、リンは部屋の机に座っていた。扉が開く音が鳴ると、リンは扉の方向を振り向く。メリーを見つめると、柔らかい笑顔を見せる。とても優しい顔だった。

「リンちゃん、実は…」

「ううん。知ってるよ。」

リンは部屋の隅を見つめる。

「師匠が教えてくれたんだ。ほら…」

部屋の隅にはルイが立っていた。姿は少し透けていて、窓から入ってきた光によってほのかに煌めいている。

「ルイさん…!」

「メリー、こんな事に付き合わせちゃってごめんね。」

優しく微笑んでいる。

「どうしてって顔してるね?実は魔法で意思だけを分離していて…」

メリーは勢いよく、ルイに向かって走る。メリーは壁に衝突し、頭にたんこぶができる。

「え、ちょ…」

ルイは唖然としている。

「ぎゅっーとしたくて!」

「っ!」

ルイは、メリーを抱きしめた。今のルイは実体がない筈なのに、左手で触れた彼女の身体はほのかに体温を感じた。

ルイは小恥ずかしそうに、ゆっくりと立ち上がる。

「どのくらいルイさんはここに?」

「数時間だよ…でも日が開けたらこの魔法は終わっちゃうからさ…」

「そう…なん…だ。」

メリーは目に涙を溜める。

「ちょ、ちょっと、泣かないで!私、メリーにね。教えたい魔法があってね、残ってたの。弱体化魔法なんだけどね。」

ルイは弱体化魔法について詳しく伝えた。

話してくれた弱体化魔法とは興味深いものだった。元々弱体化魔法はルイ達の種族のブレビナに伝わる魔法だった。それをルイが人間でも取り扱えるように組み替えたらしい。教わった魔法の構成をよく読んでみたが、面白い。こんなにも奇抜な魔法の組み合わせは見たことが無かった。それを人間でも扱えるようにしたルイは卓越した魔法使いだろう。

「ルイは凄いな…」

僕が小さな声で呟くと、メリーは何かに気づいた顔をする。

「あ、あの。魔導師さんって知ってますか?ログ=マルニエっていう。」

何を言い出すかと思えば、メリーは僕の事を説明し始めた。

「知ってるけど、魔法を作ったって人でしょ?」

「そ、その人が私の左手に居るんですけどっ!魔導師さんが凄いってルイさんのこと褒めてました!」

ルイとリンは目をパチクリさせる。

「そ、そうなの…?」

「はいっ。ルイさんはこんなにも凄い魔法を作ったから、きっと凄い魔導師として名前が残ります!」

「フフッ。」

ルイは口元を手で隠しながら笑う。

「ありがとう!そんな魔導師さんに褒められるなんて嬉しいね!」

「し、信じてる…?」

「もちろん!信じてるよ。メリーが言っている事だもん!」

ルイの身体がキラキラと輝き始める。

「あぁ、もう、持たないみたいだね…」

ルイは笑顔を見せる。

「ル、ルイさん」

「リンとメリーに会えて良かった!この学校で2人のやりたい事全部やってね。」

「師匠っ!」

「じゃあね。」

光がルイを包んでいく。空が赤から雲ひとつない澄んだ青色に変わった時、ルイは消えていった。

2人はルイが消えた後もルイが居た部屋の隅をずっと見つめていた。

メリーの目覚まし時計がなり、2人は顔を上げる。

「そういえば、これどうするか聞いてなかった…。」

メリーはポケットに入れていた指輪を取り出した。ルイが指輪にずっと魔法をかけていて摩耗したのか、少し黒ずんでいる。

「もし、良ければ指輪もらって良いかな?」

リンがメリーの手に握ってある指輪をジッと見つめる。

「もちろん。きっとルイさんもリンちゃんに渡したかったと思うから。」

メリーはリンの小さな手のひらに指輪を乗せた。

その瞬間、指輪が少し輝いて見えたのは気のせいだろうか。



————————————————-


エレーヌ様がメリーの体に移ってから数日が経った。リンはあの後落ち込んでいたようだが、最近は回復して部活など新しい事にも挑戦していっているらしい。

 メリーに、契約した精霊の事について尋ねてみたが、メリーもよく分からないと言っている。実はエレーヌ様がメリーの精霊でなんて言っても信じてもらえるかは分からない。ナルヤに相談をしようと思ったが、最近はナルヤが騎士団の用事で忙しいらしく、余り学園に居ない。

エレーヌ様が消えてしまう時、最後に言っていた言葉を思い出す。

『私500年前で、待ってるから。戻ってきてね。』


早く過去に戻る為に、禁書を盗まなくてはならない。

僕はメリーに図書館に行く事を提案した。



「相変わらず、本でびっしりだね。」

「寸分も狂わず整頓されてるしな…」

授業が終わった後、メリーは図書館の奥に位置する禁書庫の近くに訪れた。途中で何回も止められそうになったが、ライブラリアの証である、バッチを胸に付けていると見逃された。ナルヤの言う通り、ライブラリアに入って正解だったようだ。


しかし、禁書庫に近づけば近づくほど、監視の目が多くなる。周りを見渡すと、10人ほどのライブラリアに尾行されているようだった。

「メリー、付けられてる。」

メリーも気づいていたようで、小さく頷いた。

「今からメリーの足音を消す。撒けるか?」

メリーは合図を送るように、手をグッと握る。

「消音魔法よ、メリーの足音を消せ。」

僕が詠唱をすると、メリーの足音は聞こえなくなる。メリーは強く、床を蹴り上げた。

メリーは禁書庫とは逆の方向に走っていく。尾行者もメリーを追うが、足音のならない上に、素早く動くメリーに翻弄され、メリーから離れていく。

消音魔法は偵察などでよく使われていた魔法で、音を消し、相手に気づかれにくくする。

再び周りを確認すると、メリーを尾行していた人達は居なくなっていた。

「もう居ないみたいだ。」

メリーは安心したようで息を吐いた。

図書館の奥に進むと、雰囲気に似つかない重そうな石の扉を見つけた。質素だが、厳かな雰囲気のある扉、入るのに躊躇してしまいそうになる。

「これが、禁書庫…?」

「そうだろうな…」

メリーはキョロキョロと辺りを見回す。

「入っちゃっても良いかな?」

「でも、今は昼だ。ライブラリアも多く巡回している。」

「様子見っていうのは?」

「まぁ、様子見なら…」

僕の言葉を聞いたメリーはすぐに扉に体重をかける。メリーが力を入れると意外にもゆっくりと開きはじめた。


コツコツコツ

靴の音が近づいてくる。

「人が来たぞ…!」

メリーは目に見えて焦りはじめ、「わ、わわ」とブツブツと呟く。

「ちょ、ちょっと落ち着け。今から、逃げればなんとか…」

「っ!」

メリーは禁書庫の扉を開け、勢いよく部屋の中に飛び入る。


バタンッ

大きな音が立ち、石の扉が閉ざされたのだった。

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