表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔導師、幼女の手に転生する  作者: りょう改
二章 学園編
29/46

魔導師、星と踊る

「どうして…メリーの身体にエレーヌ様が…」

「この身体のエネルギー量が一気に増えたわ。彼女の精霊であった私がこの身体に乗り移れるようになったのもそのおかげね。」

「メリーの精霊はエレーヌ様だったのですね。」

僕がブークと統合して、メリーが多くのエネルギーを得たのだ。

エレーヌ様は月に小さな手を伸ばす。見た目はメリーなのに、動きの一つ一つがエレーヌ様のようで500年前に戻ったのでは無いかと錯覚を起こす。

もし転生魔法が成功したらこのような光景が見られるのだろうか。

「僕、魔法を使って過去に戻りたいのです。」

そういったら、どんな顔をするのだろうか。

エレーヌ様はそんな僕を見通すように、クスリと笑う。

「ねぇ、500年後の王都を見て回りたいの。いいかしら?」



僕らはこっそりと学園の門を抜け出し、王都の街を歩く。こんなにも静かな王都は初めてだった。街は寝静まっていて、昼間の王都とは雰囲気も異なる。

僕は再び、メリーの手に戻っていた。その上、ブークはルイとの戦いが終わると逃げるように消えていってしまった。

「あら。あそこの屋台は何かしら。」

エレーヌ様はすでに閉まっている灰色の屋根が掛かっている屋台の前に行く。closeと書かれた看板の後ろには《《光るりんご》》と書かれていた。

「光るりんごって何かしら?」

エレーヌ様は首を傾げる。

「確かメリーが、ピカピカと光るりんごが最近流行っているといってました。雑誌でも多く取り上げられていると。」

エレーヌ様は口を隠して、笑う。

「フフ、なにそれ。面白い。」

エレーヌ様の足音が王都によく響く。この世界で僕ら2人しか居ないようだ。


「お嬢ちゃん、こんな夜中にさ。歩いてたら危ないよ。」

誰かがエレーヌ様の肩を軽く叩く。振り向くと、ニヤついた柄の悪い男性の二人組がいた。

「ご忠告ありがとうございます…祖母の家に訪れようとして道に迷っていましたの。」

エレーヌ様は腰を下げ、丁寧なお辞儀をした。それを見て男性達はコソコソと話し始める。

「もしかして、良いとこのお嬢ちゃんでは?」

「誘拐しちまえば、金になるかもしれねぇ。」


「じゃあ、俺らが案内してやるよ。何処に住んでいるんだ?」

エレーヌ様は静かに笑う。

「あちらの奥にある大きな家ですわ。」

いくつもの建物が並ぶこの街並みの中でもよく目立つ大きい家を指す。

「へぇ、俺ら近道知ってんだ。案内してやるよ。」

「まぁ!嬉しいです!」

月明かりも届かないような細い路地裏を進んでいく。男の手がエレーヌ様の口に触れた。すると力強く口を塞ぎ、もう1人の男性は腕を強く掴む。

「むー!」

エレーヌ様は大きく腕と足を振る。

「我慢してくれよ、金がもらえれば返してやるよ。」

「早く気絶させろっ!、お、おい!?」

男性は目を見開く。腕を掴んでいた男性が、泡を吹いて倒れているのだ。

「なーんてね。」


「グハァッ!」

エレーヌ様は勢いよく、男性の腹を殴る。

「腕を掴んできたヤツは、魔法を使って気絶させたんだけど。」

「ガアッ」

再び、みぞおちに向かって膝で蹴り上げる。男性は、胃液を吐いた。

「もっとやるなら、本気でやってよ。戦場だったら死んでたよ…」

ため息をつく。

「ア…助けてください…助けッ!」

男性はエレーヌ様に土下座をする。でも、メリーは口角を上げたままゆっくり話す。

「ダメよ。」

力を入れ、エレーヌ様は男性の胸ぐらをつかみ、顔を力強く殴った。顔は醜くへこむ。

殴られた男性は、白目を向いて、腕をダランとさせた。



「か、変わらず強いですね。」

「そうかしら。今の戦いは面白く無いものね。」

エレーヌ様は髪を手で払った。

路地裏から出ると月が僕たちの真上に来ていた。


「ねぇ、踊りましょうよ。いい灯だわ。」

エレーヌ様は僕に向かって右手を差し出す。僕は左手をその手に重ねた。エレーヌ様は美しく踊り始める。手の動き、表情の変化につい見惚れてしまう。500年前、エレーヌ様はダンスが苦手だった。負けず嫌いのエレーヌ様がパーティに参加すればするほど社交ダンスが上手くなっていくのに驚いたものだった。

周りから見たら1人の少女が美しく踊っているように見えるだろう。エレーヌ様の頭の中にはどんな曲が流れているのだろう。


「聞きたかったのよ。」

エレーヌ様は口ずさむように、僕に話しかける。

「ログは500年前から未来に来たんでしょ?」

「そ、そうです。」

「貴方は魔法を成功させるわ。」

僕は唾を飲み込む。彼女の目に恐ろしいほど吸い込まれる。


「私500年前で、待ってるから。戻ってきてね。」

「エレーヌ様…」

風がエレーヌ様の言葉を消していく。

「また…話しましょう。きっと…すぐ会えるわ。」

エレーヌ様は静かにそして悲しそうに笑う。その笑顔がやけに幼く見えて、つい手を伸ばしてしまう。その手は何も掴まない。虚しく、空気を掴むだけだった。




「魔導師さん…?」

メリーは辺りを見回す。

「どうして、外に出てるの?ルイさんはどうなったの?リンちゃんは?」

メリーは何かに気づいたように、ポケットを探り始める。

「っ!」

ポケットにはルイがつけていた指輪が入っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ