魔導師、不老不死の魔法を知る②
ルイは不老不死に身体が耐えられなくなったと言った。
ふと今日、不老不死についてメルが話していた事を思い出した。
「耐えられないって…」
メリーが単語を理解するようにゆっくりと呟いた。
「ここ数ヶ月、手の震えや目が霞みを感じることが多くなった。とても速いスピードで老化をしていると気付いたんだ。あと…」
ルイは言うのを躊躇するように言葉が詰まる。そして、ルイは恐る恐る手を見せる。
手には古めかしい指輪をしている。何かの紋章と魔法陣がかいてあり、特殊な物だとわかる。
「これを取るとね…」
ルイが指輪を少し動かす。
ポタポタ
屋根から雨水が漏れているようなそんな音がする。
指を見るために俯いていたメリーは顔を上げた。
「っ!?」
思わずメリーは声が掠れる。
ルイは涙のような液体が顔に流れていた。しかしそれは涙ではない。ルイの手や髪が液体のように溶けていたのだ。
「これが身体が耐えられなくなったと思う原因で…」
ルイはその状態で淡々と説明を始める。ルイの足元にはどんどん液体が溜まっていく。
「っ!」
メリーは指輪をルイの指に押し込んだ。
すると、液体のようになっていた部分はルイに吸い寄せられるように元通りになる。
「…な、治る方法は無いの?」
「無いよ。」
その言葉にメリーはピタリと固まる。
「だって、指輪をしたら、形を保ててるし…」
ルイは首を横に振る。
「指輪をしたままだと、身体はそのまま姿を保てるだろうね。でも、エネルギー量は着実に減っていく。いつかは倒れたままになるかもね…」
「そんな、」
メリーはルイの顔を見られなくなったのか目をそらす。そのままメリーは俯いた。
「この状態での世界は痛くて苦しいんだ。この指輪を取ってしまって、溶けて消えてしまったら楽になるんじゃ無いかって思ったよ。でもリンに何も言わないわけにはいかないから。」
ルイはいつもと変わらない優しい笑顔を向ける。この笑顔の裏でも彼女は痛みに耐えているのだろうか。
「…っリンちゃんとよく話してみたら!」
リンが急に立ち上がり、大きな声を出したので、ルイは驚いた顔をみせる。
「リンと?」
「うん。リンちゃんだったらかけた魔法の事知っているかもしれないし。あと…」
少し言葉を詰まらせる。
「何も伝えられないのはすごく不安になるから…」
メリーはルイの顔を真っ直ぐ見つめる。
「…分かった。話してみるよ。」
次の日、ルイはリンと話し合いをするようで数時間部屋から出てこなかった。日が暮れてきた頃、部屋の中からリンが泣く声が聞こえたのだ。
「リンちゃんっ…」
メリーは部屋の中に入ろうと、ドアノブに手を伸ばす。
「メリー。入っちゃダメだ。」
僕が声をかけるととメリーは動きを止める。
「でもっ!」
「メリー、2人で話す時間は大切なんだ。」
「っ。そう、だよね。」
メリーは扉の横で座り込んだ。
「魔法ってさ。なんでも出来ると思ってたんだよね。」
「ああ。」
「でも、こう言う時、魔法でも解決できないんだね…」
メリーは空を仰ぐ。
「…魔法は全然万能じゃ無いさ。エレーヌ様の時だってそうだった。」
500年前まで僕は魔法はなんでも出来ると思っていた。あの日、僕が戦場に駆けつけエレーヌ様の死体をみた時、何度も何度も治療魔法をかけた。
エネルギーが尽きかけた時、鈍く殴られるような頭痛と共に僕は気付いたんだ。魔法は万能では無いと。
ガタッ
勢いよく部屋の扉が開き、リンが飛び出す。目が赤く腫れ、涙を流していた。リンは逃げるように、寮の出口の方へ行き、外へ出ていってしまった。
ルイは遅れて、部屋から出てきた。辺りを見回した後、悲しそうな表情をして唇を噛む。
「あっメリー、待っててくれたんだね。」
メリーに気づいたようで、こちらに振り向く。
「う、うん。今リンちゃんが…」
ルイは静かに頷いた。その顔は、困ったように笑っている。
「リンがもう知らないって言って出ていっちゃった。」
「そんな…もう一回リンちゃんと話してくるっ!」
メリーがリンを追いかけようとした時だった。
「グッ!」
ルイは部屋の前で苦しそうにしゃがみ込む。
「ルイさん!?」
メリーがルイに向けて手を伸ばすが、ルイはその手を取るのを拒む。
「あー。私そんなに長く無いのかもね…」
独り言のようにルイは小さな声で呟く。
ゆっくり壁に寄りかかりながら起き上がった。
「ねぇ、メリー。私の指輪を取ってほしいんだ…」




