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魔導師、幼女の手に転生する  作者: りょう改
二章 学園編
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魔導師、遠足をする③

 近くで見ると、グラトニーブルームはとても大きく、迫力がある。遠くから見た時、あれほど美しいと感じたのに、ここまで近づけば近づく程、血管のように伸びる太い葉脈、茎に巻きついている触手など生々しさに不快感を感じた。

 ルイの話ではグラトニーブルームは視力が良くない。しかし、感覚が敏感で触った瞬間に気づいた時には触手


 メリー達はお互いの位置を確認し、合図を送る。

 ルイが合図を確認し、石ころをグラトニーブルーム目掛けて投げた。


 グチャ…

茎の中腹に当たり、鈍い音が鳴った後、石は転がっていく。

 グラトニーブルームはゆっくりメリー達の方向を向く。

 僕達を見つけたのか、花の真ん中の空洞は笑うように両端を釣り上げる。その空洞からは涎が滴っていた。


「ギャアアアアア!」


 鼓膜が破れそうになるぐらい甲高くまるで女性の声と勘違いしそうな叫び声をあげる。

 そして、メリー達に向けて触手を伸ばした。

「うわぁ!?」

 メリーは剣を用いて、触手を切り落とす。

 切り落とされた触手は行き場を失い、蛇のように動き出す。

 全ての触手を切り落とされたこの状態になったら僕らに攻撃をしてこないだろうが、気味が悪い。

 触手を切られたかと思うと、触手が再生し、すぐにいくつもの触手がメリー達に向かって、攻撃してくる。

「ハァ、この触手、パンチはあんまり効きにくいみたい…後ろに下がるね!」

メリーと目を合わせた後、リンは後方に下がる。

メリーだけで触手を防ぎ切らなくてはならない。速さこそないが、絶えず襲いかかる触手を切っていくのは大変なのだろう。メリーも息が切れかけてきている。

「ッ!」

メリーの後ろから触手が伸びてきている。


バキッ!

触手が防御魔法に当たったのだろう。壁に当たったような音がして、触手が気絶するように地面に倒れる。

「ブーク!」

ブークが防御魔法を使っていたようだ。

「キュアアッ?」

どうして早く呼ばないの?と怒っているようだった。

メリーは呼吸を整え、剣を握り締める。

「ッありがとう!」


メリーの後方からリンが声を上げる。

「メリー!準備出来たよ!」

「いくよ!煙魔法!」

 ルイは白い煙を舞い上がらせる。その煙は粒子が大きいようで、感覚の鋭いグラトニーブルームは、混乱するように触手を振り回す。今までは出ていなかった量の触手が大量に振り回される。

「あれが一気に出てきたら大変…」

メリーはその様子を見て、青ざめた。

「メリー!後ろに下がって!」

リンとルイが後方へ手招く。

 

たしか、ルイが煙魔法を使うのは一つの合図だった。





__________


「メリー、こっちは準備できたよ!」

 メリーが準備運動を終わらせた後、リンとルイが揃ってメリーの元へ集まった。

「こっちも万全!」

 リンはグラトニーブルームの元に行こうとするメリーを止める。

「あ、そうだメリー。魔法で巨大なモンスターを退治する方法って知ってる?」

「モンスターを退治?」

「メリーは剣と魔法どっちでも使えるじゃん?けど、モンスター退治は剣のイメージでしょ?」

 メリーは頷く。

 500年前も剣に魔法をかけるという事を除いて、魔法でモンスターを倒すなんて聞いた事がない。


「多くの魔導師が魔法のみでのモンスター退治は厳しいと思われていた。でも、それを可能にしたのが、師匠と同じ種族、ブレビナの魔導師。」

 ルイは俯き暗い顔をする。

「ブレビナの魔導師が考案し実際におこなったのは、相手に不利な条件になる魔法を積み上げ、相手の弱点である攻撃を与えること。」

「そ、そうなんだ…」

メリーはきょとんとしている。何が凄いのか分かっていないらしい。


 剣で相手の弱点を狙おうとしたら、頭や心臓を狙うだろう。魔法で同じ所を狙おうとしても、それは打撃的な攻撃であり、剣には敵わない。

しかし、魔法には属性という物がある。属性によって弱点である属性と逆にあまり効きにくい属性がある。

人間よりエネルギーが満たされやすく、エネルギーの循環が生命に直に繋がるモンスターは、弱点への魔法攻撃は致命傷となる。


500年前から弱点を解析しようとした魔導師は多くいた。しかし、弱点を探るには時間が掛かり、それだったら剣で倒そうという点に落ち着いた。

エレーヌ様が使った剣に魔法を掛けるというのは、人間相手が多かった。相手を火傷、感電などの状態にさせるのは効率が良かったのだろう。


「魔法による弱点を探るのは難しいんだよね。」

「な、なるほど。」

メリーは頭を整理するようにゆっくりと頷く。

「そこで、魔導師は弱点探索という魔法、弱体化魔法の基礎を作った。」

口があったら、僕は息を呑んだだろう。

リンは淡々と話し続ける。

「弱点探索魔法を使えば、相手が何の魔法に弱いかわかる。弱体化の魔法は今も研究されているけど、相手を弱らせるような魔法を掛けるの。それを用いた事でブレビナの魔導師は、1人でドラゴンを倒した。」

「す、凄い…」

ドラゴンと言われて、メリーは凄さが分かってきたらしい。

「今回はその魔法、合図をしたら私が使うから…」

ルイはゆっくり手を上げる。

「私はどちらかというと拳に魔法をかけて戦うからさ。でも今回は魔法メインになりそうだし…」

リンはグラトニーブルームの方を鋭い眼差しで見つめた。

————————————-






確かに、近くに行くだけであの触手の量に囲まれるのだ。剣で戦うのは難しそうだ…

僕は先ほどの話し合いを思い出してそう思った。


「弱点探索魔法っ!」

ルイは、暴れているグラトニーブルームに向かって魔法を打った。少し俯いたあと、顔をまっすぐあげる。

「わかった!あいつの弱点は爆発魔法と炎魔法。今から弱体化魔法をかけるから!」

ルイはいくつかの詠唱を行う。

煙が無くなってきて、触手がルイの方に向かって飛んでくる。


「ダメッ!」

メリーが勢いよくルイの元へ走り、剣を振り上げる。

ルイを襲おうとしていた触手が次々と斬られていく。

「ッ!メリー!ありがとう…」

ルイは落ち着かせるように深く呼吸をした後、続けて詠唱をする。

「〜〜〜、〜〜」

その言葉は、僕らには分からない言語だった。ルイの声は震え、泣いているようにも聞こえる。ルイの首に汗が流れる。周りのエネルギーがルイの元へ集まるような感覚がある。

覚悟を決めたようで、ルイは目を開ける。


「グラトニーブルームよッ!弱体化魔法にかかれ!」


そう言われると、衝撃波のような物がルイの周りから伝わる。その波はグラトニーブルームの動きをピタリと止める。


「今よ!アイツは次の攻撃を受けるまで動かない!そして、弱点はもっと効くようになっているから!」

ルイは頭を抑えながら、そう叫ぶように言う。


リンが立ちあがろうとすると、メリーはそれを止めた。

「私がやってみても良いかな?」

リンは目をパチクリした後、笑顔をメリーに向ける。

「私がルイの事を見てるから、派手にやっちゃって!」

メリーは剣を握り、構える。いつも祖母から教えて貰っていた構え。周りの音を気にしないぐらいメリーは集中をしている。


「フゥーー」


「あれ、もしかしてメリー、剣で倒そうとしてる?」

「ま、まさか。」


リン達は立ち上がり、メリーを止めようとする。その声はメリーに聞こえていなかった。


メリーは勢いよく地面を蹴り上げる。すぐにグラトニーブルームの近くまでやってきた。

「魔導師さん!さっき言ってたのって出来る?」

「えっ!剣に魔法を掛けるやつか?」

「もちろん!」


「ハァー」

僕はため息をつく。しかし、同時に正体もわからない高揚感も感じていた。

メリーも同じ感覚らしくずっと口角が上がっている。

「いくよ!」

メリーは大きく剣を振り上げた。

エレーヌ様が詠唱していた言葉を思い出す。


「剣よ、炎をまとえ!」


剣が赤く光りだす。

グラトニーブルームの頭部に剣が食い込んだ瞬間、剣から火花が上がる。花弁に引火し、すぐに火に包まれた。


グラトニーブルームは自分を守るように触手を身体に巻き付ける。しかし、周りに生えていた草や花に燃え移る。ジリジリと近づく炎に包まれていく。そして、言葉にならない叫びを上げ始めた。

萎れるように倒れる。塵のように消えてしまうまで、叫び声を上げていた。


「ーーッ」

爆風の最中、メリーは強く剣を握り締めた。









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