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魔導師、幼女の手に転生する  作者: りょう改
二章 学園編
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魔導師、遠足をする②

 ルイがあの青年に許可をとり、僕の家に入れてもらえることになった。

「魔導師さんってこんな家住んでたんだ。」

「確かに、もっと豪邸かと思ってた…」

 リンは僕家を見て、しみじみと言う。

 青年が辿々しく、扉の鍵を開ける。

木で作られたドアを押すと、キィキィと音がなる。500年も経っているのだ、ここまで綺麗に残っているのも珍しい。

 中は少し埃っぽいだけで、昔と何も変わらなかった。

 部屋の中には、最低限の洗面所やシャワー室以外は、本棚に囲まれており、木の机が部屋の隅に置いてあった。

「どちらかというと書室みたい?」

 リンがぐるぐる室内を回りながら、本棚に手をかける。

 僕は何百冊もある本の中から、とある本を探しにきた。

 メリーに一番端っこにあった本棚の元へ向かってもらう。

 一つ、入った時から目に止まる本があった。暗い青の高級感のある装丁に金色で文字と絵が書いてある。

「あの、厚い本を取ってくれないか?」

 メリーは頷き、精一杯背伸びをして本に手をかける。左手にも重さが伝わる。

 そこには、「ロスペルテナの怪談話」と書かれていた。

「怪談…」

 メリーは眉間に皺を寄せる。きっと怖い話が苦手なんだろう。

「メリー?何見てるの?怪談?」

 リンがメリーの肩を叩く。

「あ、うん。」

「私、怪談好きなんだ!メリーも?」

 メリーは必死に首を横に振る。

「苦手なのかぁ…私、読んでみてもいいかな?」

 入り口で待っていた青年にリンは目線を送る。青年は頷く。

「へぇ…ここの地方の怪談話なんだ。井戸から鳴り響く悲鳴…2時になると聞こえる鐘の音…」

 メリーは耳を塞ぎ、目を瞑っている。

「…?、これ何だろう。」

 リンは本を机の上に載せ、埃を払う。覗いてみると、字が所々掠れていてよく見えにくくなっていた。

「魔女の呪い?

 この地に1人の少女が引っ越してきた。彼女は町の者と仲良くしようと作物がよく育つ方法を教えた。しかし、彼女はこの地の物によく思われていなかった。ついに彼女を迫害するようになる。少女は、森へ逃げようとしたが、町民は山にある貯水槽に魔女を閉じ込めた。そこから夜な夜な貯水槽から泣き喚く声が聞こえた。少女を閉じ込めてから1年近くたった時、この土地の作物が全て枯れ、井戸の水は全て無くなってしまった…」

「この話、今の状況と似てない?」

 ルイとメリーも本の周りに集まる。

「魔女っていうのは魔導師のことかな?」

 リンが尋ねると青年は首を振った。

「こんな話、初めて聞きました…」

 確かこの本は僕が生まれる前に作られ、それを誰かから貰ったのだった。

「や、山に行ってみない?」

 メリーが恐る恐る尋ねる。

「もしかしたら原因がわかるかもしれないし…」




 僕らは青年と別れてペルテナ山に登ることになった。

 ペルテナ山は町の近くは枯木が多かったが、山を登るにつれてまだ影響の受けていない木が多くみられた。

 登るといってもそこまで高い山ではなく、昔はハイキングコースがあり、体力自慢の町民は1時間で帰ってくることもあった。

「わぁ!遠足みたいだね!」

 リンはスキップをしながら、歩いている。

「周りをよくみて、落ちないように!」

 ルイはリンのハイペースについて行っている。

「2人とも早いな…って!?」

 メリーはどんよりしながら、道を辿々しく歩いている。いつも元気なメリーがここまで暗い表情をしているところは見たことがない。

「だ、大丈夫か?」

 メリーは目を逸らす。

「笑わない?」

「いや、笑わないが…」


「もしお化けにあっちゃったらと思うと…」

 メリーは顔を隠しながら、小さな声で言う。

「…フッ」

「ねぇ!今、笑ったでしょ!」

「笑ってないよ。」

 メリーは頬を膨らませる。しかし、怖い話が苦手なメリーが、山を登る事を提案するとは…

 なんだかメリーの成長を感じた。



「ここが、貯水槽…」

 光も遮られるような大きな木々の中に、数百年も昔のものであろう石造りの建物がポツリと経っている。

 乾いた風がこの場所を不気味に感じさせる。メリーは手を強く握った。

 僕がここに暮らしていたときでさえも、この貯水槽は使われていなかった。別の土地に新しい貯水槽が出来ていた気がする。

「なんか神殿みたい…」

 ルイは建物の前にある石の看板の埃と枯葉を魔法で退けた。

「…?凄い昔の字体だ。私は読めない…」

 メリーがその看板の近くによる。

「魔導師さん、これ読める?」

 メリーは僕にコソコソと声をかける。

 字を読んでみると500年より前の字体で、僕が授業でかろうじて習っていたものだった。分からない文字は飛ばしてメリーに伝えていく。

「…貯水槽。ここに…眠る。って書いてあるのかな。」

「え?メリーはそんな字も読めるの…」

 ルイは目をパチクリさせている。

「あはは、興味があって…」

 メリーは歯切れが悪そうに呟く。


「ここが話に出てた貯水槽なのかな?」

 リンが尋ねるとメリーは「そ、そうなのかな…」と声を震わせながら答えた。

「まぁ、入ってみないとね!」

 リンはそう言いながら、建物の中に入っていった。

「もう!勝手にいって!メリーは待ってても良いからね。」

 ルイもそう言いながら、リンを追っていく。

「待ってる?」

 僕がそう尋ねると、風が強く吹き荒れる。まるで悲鳴を上げるように…

「わ、私も行くっ!」

 メリーも走って建物に入っていった。


 建物の中には地下へ続く階段があり、中は冷たかった。半袖だったメリーは腕をさする。

階段に風の音が反響して、女性の泣いているような声が聞こえる。

きっと話にあった、泣き喚く声とはこの事だったのだろう。

 長い階段を降りた先には大きな空間があった。一番下の階段にリンとルイは立っていた。メリーは足を早める。

「はぁ、はぁ、リンちゃん、ルイさん。はやい…むー!」

 リンにメリーは口を押さえられた。

「メリー、あれ見て…」

 リンは静かに、奥の空間を指差す。

 大きな空間に、人と同じくらいの大きさの綺麗な青く光る花が咲いていた。暗闇である筈の空間が青く照らされている。

 その花を囲むように、小さな花や草が多く生えている。花にとっての楽園と言えるような場所だった。

「きれいだけど…」

 メリーが呟くように言うと、リンは横に首を振る。

 ネズミが大きな花に惹かれるように花の周りに近づく。

「チュー」

 ネズミが花に触れた。

 その時、花が大きく開き、舌が飛び出る。花はネズミを丸呑みした。

「ッ!」

 メリーは言葉にならないような掠れた声を上げる。

 花は物足りないと言うように、涎をポタポタと垂らす。

「あれは、雑食のモンスター、グラトニーブルーム。生えた場所の栄養や水分を全部吸い取る。きっと今回の町の水が枯れてしまったのもあいつが原因だね。」

 ルイは怯えているメリーに説明をする。

「普通だと、町全体あと森の一部の水を吸い取るなんて不可能だけど、あのデカさじゃね…」

 リンはメリーの顔を見た後、立ち上がった。

「私達で倒そう。彼はこの町を復興させたいと頑張ってたから…」

 ルイはため息をつく。しかし、その顔は優しく微笑んでいた。

「ダメって言いたいけど…きっとリンは1人でも行こうとするでしょ…」

「メリーはどうする?」

 リンはメリーの目をまっすぐに見つめる。

「わ、私も!」


「ちょっと準備運動をして良い?」

 そういってメリーは階段の踊り場で背中に背負っていた大きなバックパックを下ろす。そこにはいつも使っている剣が入っていた。

 メリーは一通り、覚えた技を繰り返した後、息を整えていた。

「ねぇ、魔導師さん…」

「どうしたんだ?」

「エレーヌってさ、どんな感じで戦ってたの?」

 急にエレーヌ様の事を聞いてきて、驚いた。

「どう言うって…」

「魔法と剣を使って戦ってたんでしょ?」

 エレーヌ様は確かに魔法と剣を用いて戦っていた。

「それは…」

 メリーに伝えても良いものか少し躊躇する。あれはエネルギーを多く消費する方法だった。

 メリーの顔を見つめる。

「ッ。」

 あぁ、この顔をされたら教えるしかない…そう思ってしまうほど、メリーの目は真っ直ぐだった。

「自分で剣自体に魔法をかけていたんだよ。例えば、剣に炎魔法をかけて切った瞬間相手を火傷させたりね。」

「凄いっ!わ、私も…!」

 メリーは身を乗り出す。

「多分、無理だ。剣を振う時だってエネルギーは使っている。そこに魔法での大量のエネルギー消費なんてまだメリーには耐えられない。」

「…そっか。」

 メリーは壁に身体をもたれかかる。

「私がもっと、魔法を上手く扱えたら…あっ!そっか!」

 メリーは跳ねるように起き上がる。

「ど、どうしたんだ?」

「魔導師さんに剣に魔法をかけてもらうのはどうかな?」

「あ、あぁ!確かにそれが出来たらエレーヌ様と同じ事を出来る!」


リンとルイが踊り場へやってきた。

「こっちは準備できたよ!」

メリーは力強く頷いた。

「こっちも万全!」

メリー達は、部屋の中央へ向かっていった。








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