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メリー、ギルドに行く②

今回は少し残酷な描写があります…

苦手な方はブラウザバックをしてくださいm(._.)m


「早く隠れよう。今は戦っても勝てないだろう。」

「…うん。」

私は近くにあった草むらに隠れようとゆっくり歩き始めた。ウルフ系のモンスターにバレない様に慎重に。足は恐怖で震えていた。


「リー、メリー…」

女性の声が聞こえて足を止める。

「メリー、私が力を貸すわ。名前を呼んで。」

頭の中で声が反響している。

「でも…隠れないと。」

「いいの?。ログに良いところを見せるんじゃないの?」

「ッ。」

気がつくと拳を作り、強く握っていた。

「さぁ、呼んで…」

浮かんだ名前はやはりボヤけていて、形も意味も理解できない。

頭の中にあるボンヤリした音を復唱する。


「◾︎◾︎◾︎◾︎…手伝って!」

まるで見知らぬ言語を意味もわからず真似をするように。そして叫ぶように。


「ウフフッ。わかったわ。」


足が勝手にモンスター達の方へ運ばれる。

「メリー!?」

魔導師さんは驚いているようだった。

糸に引っ張られているように勝手に手や足が動く。

手が腰にある鞘を触る。勢いよく取り出した剣は普段より数倍も軽く、大きく感じられた。

しかし、いつも身近にあった、その剣が薄気味悪い物に感じる。

グリップを握ると、足は勝手に前へ動いた。狼の元へ近づいていく。

私が力強く振りあげた剣が狼の顔や身体を傷つける。しかし、メリーの身体の二倍ほどある狼はなかなか怯まない。

「クッ。」

普段の数倍も速く剣を振っているからだろう、メリーの身体がよろめく。

「グルルッ!」

その隙を見て、狼がメリーの方へ勢いよく飛び出してきた。

メリーは反射的に目を閉じる。

「魔導師さんっ!」



その時だった。

狼の元へ引きずられるように近づいた。

「ッ!」

目を開けると、狼の真下にいるようだった。


「さぁ、今よ。」

頭の中に響く声は今までより鮮明に聞こえた。

メリーは剣を上に突き上げた。






重く響く唸り声を上げ、ウルフ系のモンスターは私に覆い被さるように倒れた。

剣に刺さったモンスターから多くの血を浴びる。


「うっ!」

まるで自分の物ではないかのように思えていた身体に感覚が戻る。

吐きたくなる程の血の匂い。口に入ってきた鉄の味。

ラビラットとは全然違う、生き物の暖かさが失われる感触を直に感じた。

◾︎◾︎◾︎◾︎に言われて剣を握った時と同じ感覚がした。


呼吸がどんどん荒くなる。


「はぁはぁはぁ」


「メ…」

周りの音を心臓の音がかき消す。

「はぁはぁはぁはぁはぁ」


「メリー!」

「ま、魔導師さん?」

「大丈夫か…」

「呼吸が荒れていた。あのままだと…。まず、深呼吸をしてくれ。」

ゆっくりと深呼吸をした。ようやく、周りの風の音、虫の音が聞こえて来る様になった。

モンスターを倒した時よりは落ち着いているが、まだ心臓の音は止まらない。思い出すと、また呼吸が荒くなる。

「…500年前は血の匂いなんて嗅ぎ慣れていた。モンスターだけでなく人間すら倒してた。」


自分の弱さを実感して目に涙がたまる。

これじゃ、魔導師さんが頼ってくれ無いのもあたりまえだ…


「でも、それは戦争があった時代の一人の騎士の話だ。メリーは幼い子供だ。…そう、まだ幼いんだ。」


「ッ!」

「だから、好きなだけ泣いても良いだよ。」

「ゥウ、」

涙がポロポロと流れてくる。止めることは出来ないようだった。

泣いてもいい。幼くてもいい。

その言葉は私の心の穴を埋めるようだった。


私が思いっきり泣いた後、静かな時間が過ぎた。

魔導師さんも、私も何も話さなかった。静かなのが心地よかった。


「本当の事を言うよ。」

ログはゆっくりと話し始める。

「前も一回言ったけど、僕はもう一回、転生を行いたかった。

それも過去に戻るものを。」

「…うん。」

「転生をしたら、僕はエレーヌ様を助けたかったんだけどね。」

「エレーヌ様を助ける…」

ログは言いづらいそうに、少し躊躇ってから話し始める。

「そう。それをする為なら王を…殺す事だって、国を滅ぼす事だってなんでもするつもりだった。」

先程持っていた剣の感触を思い出した。


再び沈黙が流れる。

先程流れた時間より、生暖かく居心地の悪いように感じる。

私は深く深呼吸をした。

魔導師さんも何かを話そうとしている。何を言おうとしているか分かった。

その言葉より速く言わなくちゃ。

「私…手伝うよ。」

「いや、でも」

「良いの!元々手伝うって話だったし、エレーヌみたいになる為にも…」

精霊と一緒に剣を握った時に気がついた。

あの精霊は、私が経験した何千倍の苦しみを剣で得ていたのだろう。そして彼女はきっと…


「私も、エレーヌを助けたいもん!」

自分の口から余りにも大きな声が出たので少し驚いた。魔導師さんも驚いたようで目を見開いていた。

「ッ!い、今よりずっと辛い事があってもか?」

「うん。」

意思は固かった。きっと断られても一人で転生について調べるくらいに。


「…わかった。それなら共有したい事が多くある。」

「うん!」

ふと、顔を上げると銀髪の青年が見えた。銀色の髪が月明かりに照らされてキラキラと輝く。彼の丸い眼鏡の中にある宝石のような緑の目は信念を持つような強い眼差しをしている。しかし、その眼差しには少し冷酷なものも感じられた。その目を見つめられると息をするのさえも忘れてしまいそうだった。


彼はもしかして…

「ま、魔導師さん…?」

瞬きをするとその姿は目の前から消えてしまった。

「メリー?どうしたんだ?」

魔導師さんは何も気づいていないようだった。

「もしかしたら、魔導師さんの姿が見えたかも…」

「僕の姿?僕はメリーの左手だろう?」

「そ、そっか。そうだよね。」

狼のモンスターと戦って疲れて、幻を見たのかもしれない。

しかし、呼吸も奪われるような瞳が偽物なのだろうか。

右手を見ると、モンスターと戦ってからずっと震えたままだった。落ち着かせるために深呼吸をする。

瞼を閉じても、彼の姿がずっと離れなかった。




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