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第二十章 百花繚乱

「どこにあるのよ、私のロストソウル」


ユミルを気絶させ檻を脱走した葵は、手当たり次第に開けた部屋のひとつに宝物庫を見つけ、ぶつぶつ言いながらロストソウルを探していた。


「こんなことなら、さっきの女からちゃんと聞いてくるんだった」


戻って聞き出すことも考えたが、それはあまりにリスクが高い。ある程度の魔法は使えるが、実戦経験の浅い葵は、ギャンブルより確実性の無い手段は選べなかった。


「ハァ………」


一溜め息吐き、また宝物の山を漁る。

目も眩むような宝物も、今の葵には邪魔なだけ。

そもそも、宝石だとかそういった類のものに興味がない。

 腐った人生を捨て、人成らざる者として命を懸ける。それが全て。

まして、ロストソウルは悪魔としての証。レリウーリアの証。命を懸ける為の理由だ。探さずして、レリウーリアの象徴であるヴァルゼ・アークの下には帰れない。


「あ゛〜〜〜面倒い!」


ドカッと宝物箱を蹴る。

どうすべきか?選択はひとつしかない。リスクを覚悟で、ユミルのところまで戻るしかない。


「………チッ。しゃあない。もっかい締め上げるか」


手近にあった、きらびやかな剣を拾う。

ユミルの肉体を切り刻んででも聞き出す。そう気持ちを固め宝物庫を出る。


「動くなっ!」


「………面倒いなぁ」


後頭部を掻く葵を、ユグドラシルの近衛兵が取り囲む。


「よくもやってくれたわね!」


「フン。やっぱ殺しとけばよかった」


割って現れたユミルに、葵も顔を歪める。


「ちょうどいいわ。ユミル(あんた)!私のロストソウルはどこ!」


「ああ。それならロキ様に預けたままよ。諦めるのね。もう二度とあなたの手には戻らない。それとも、ロキ様に無謀な戦いを挑んでみる?」


「そう。でも、それもいいかもね。どっちにしろ、そのつもりでアスガルドまで来たんだし」


「随分な自信ね。この状況でよくまあハッタリ噛ませるわ。………さっきの礼はたっぷりしてあげる。お前達!死なない程度に可愛がってやれ!」


ユミルが命令すると、近衛兵達は即座に葵を襲う。

葵は、すかさず宝物庫から拾って来た剣で応戦する。


「私を魔王サタンだと知って戦いを挑むんでしょうね?ならその魂、二度と輪廻の奇跡に戻れないことを覚悟なさい!」


「くだらない!誰が死んだ後のことまで考えるのよ!」


葵に反論するユミルの言い分はもっともだが、近衛兵達は手を出せないでいる。


「何してるの!早くやりなさいっ!」


輪廻がどうとか、そんな難しい理由からではなく、本能………そう、生物として遺伝子に組み込まれた情報が、葵に関わるのは危険だと判断したのだ。


「アハッ。賢明な判断出来るじゃん」


あっという間に戦意を失った近衛兵達を押し退け、葵はユミルの前に立つ。


「あんたの部下はお利口さんだけど、あんたはどうかしら?」


「黙れ悪魔め!部下に頼らずとも、貴様一人くらい!」


「そ。なら遠慮はしないから」


サッと剣を振り、空を裂く。ゆっくり刃を頭上にかざす。

ただならぬ空気に、近衛兵達は、


「ユ、ユミル様!危険です!逃げましょう!」


警告するも、役に立たない部下の言うことにユミルが耳を貸すことはない。


「うるさいっ!お前達の指図は受けん!」


「いい根性してるじゃない。後悔しないでね」


狭い空間に風が起き、その風の流れに乗って花びらが舞う。


「花びら………?一体、どこから?」


思わず後ずさってしまう。単なるマジックのワケがなく、ユミルが花びらの一枚に触れると、指が切れた。同時に、葵が何をしようとしてるのか悟る。


「行くわよ!百花繚乱!!」


美しい花びらが、葵の意志に従い刃となって激しく舞う。


「散れ!儚き命の運命さだめと共に!!」


そして花びらは散開する。ユミル達の命を奪って………。


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