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第十六章 得る為に

第ニ階層へ続く塔を目前に、当然行かせまいとはばかるロキのアスガルドの戦士達。

その数、およそ三千。もちろん、第一階層だけでだろう。

自分達の住まう世界を火の海にされ、穏やかでいられるわけもなく、殺気が津波のように押し寄せて来る。


「あ〜あ。愛子お姉様が派手にやっちゃうから」


裏腹に、結衣は“楽しそう”に言った。


「ぐだぐだ言ってねーで、とっとと殺っちまおうぜ!」


悪い方の愛子がまだ人格を支配している。戦いが終わるまでは戻らないだろうと、みんな諦めている。


「ではでは」


翔子はニ基のバズーカのロストソウルを構え、一気に蹴散らすつもりでいる。


「みんな!翔子が道を開いたら塔の中まで突っ走るのよ!」


美咲の指示を受けて、全員が準備をする。


「いいよ、翔子」


そして、整ったことを那奈が促すと、


「エネルギー充填120%!行くよ、みんな!」


翔子のロストソウル・波動砲の銃口に青白い粒子が集束して行く。


「発射〜〜〜〜〜ぁ!!」


周りの空気を震わせて、敵陣を“粉砕”する。と、同時に、全員が塔を目指す。

“粉砕”仕切れなかった敵が襲って来るが、それは各々が振り払う。

初めての実戦。緊張だとか不安はあったが、身体が動いてくれる。訓練以上の成果を、誰もが手応えとして実感している。


「あれ?千明ちゃんは行かないの?」


そんな中、一人翔子の傍に千明が残った。


「あんたのロストソウルじゃ、接近戦になったらアウトでしょう?だから、私が手伝ってあげようってのよ。クスクス」


「さっすがぁ〜!頼りになるね!」


そして千明は、離れた場所にいる仲間達の下まで瞬間移動し、


「さあ、早く行って。後は私と翔子で片付けるから。もっとも、すぐに追いつくでしょうけど。クスクス」


黒く長い髪を掻き上げて叫んだ。

雑魚は引き受けた千明に同意したように、波動砲から第ニ波が撃たれ、美咲達が先へ進む時間を作る。


「千明………」


「早く!」


残して行っていいものか美咲はたじろいだが、


「任せたわよ!」


その決意を信じ、第ニ階層を目指した。

塔の中へ進んだ美咲達を阻止しようと、敵が群がって来る。


「悪魔の力………存分に使わせてもらうわ!ベルフェゴール!!」


自分に力を与えた悪魔。その真価を発揮させる。

サファイアのように深いながらも透明感のある刃の剣、ブルーノイズ。六条の光がそのまま刃から飛び出て敵………もはや烏合の衆を“勝手に”切り裂いて行く。

意志が、悪魔としての自覚が形になった瞬間だった。

翔子も同じだろう。竜神ティアマトの力を、余すことなく使っている。

楽勝。そんな言葉が頭を過ぎった矢先、氷の刃が飛んで来た。


「!!」


千明は高く跳ね上がり、到達点を失った氷の刃は、烏合の衆へ突き刺さる。


「誰!?」


「悪魔ってのは遠慮が無いのね」


現れたのは、白い絹のような髪、紫のルージュをして、白いローブを纏った女性。


「クスクス。それは悪かったわねぇ。遠慮が無くて」


千明は睨み合いながらも、微笑む。烏合の衆のリーダーだと悟ったからだ。


「私は暗黒王ベルフェゴール。あなたの名前、聞こうかしら?」


「よろしくてよ。私は第一階層の番人、フレイヤー。聖王ロキ様の銘により、あなた達を始末します」


どうやら氷が武器のようで、無数の刃となりフレイヤーの周りに出現する。


「さあ、覚悟なさい。アスガルドの地を汚した罪を償ってもらいます!」


「残念ねぇ…。私は悪魔だもの。汚してなんぼよ。それを罪だなんて言われたら、商売上がったりになっちゃうわ。クスクス」


フレイヤーを静かに嘲笑する。


「フッ………その余裕、いつまで持つでしょう」


対して、フレイヤーもまた静かに対応する。


「試してみれば?」


千明がブルーノイズを構え走り出した。

戦略なんて何もない。眼前をはばかる敵に、ただ勝負を挑む。

悪魔であることの自信を得る為に。


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