71 笑顔で近づいてくる人は信用できない
青商売術の本を読んで、方針が決まった白丸、大地、姫子は、灯油価格を決めてから、お上からのお達しを出そうとしていた。
姫子
「それで、いくらにするつもりなの?」
白丸
「明星油屋を親玉とする油屋連合は、9割の利益を付けて売っている。
これは計算が面倒だから、10割の利益を付けて売らせようと思う」
大地
「計算が楽になるけれど、どっちからも文句が出そうですね」
白丸
「明星油屋は9割の利益、吉田油屋は1割の利益だから、間を取らないで、足した10割りの利益で売らせることにする」
姫子
「普通は間を取って、5割にするんだと思うけれど」
白丸
「内町というか城下町は、俺が全ての灯油を仕入れて、領民に売っているから5割の利益で儲けを出せる。しかし、外町の場合は、小さな商店が別々に仕入れているから、5割では儲けが出ない。
この5割の利益には、人件費などの売る側の経費が含まれているからだ。
正味の利益は1割も残らない」
大地
「そうだね。とは言え、外町への干渉は最小限にしたいんだよね」
白丸
「その通りだ。冷たい言い方になってしまうが、俺の領民ではないからな。
俺の領地に勝手に住み着いている居候扱いだから、面倒を看るつもりはない。
つまり、不満を感じるなら、お帰り頂くつもりだからだ」
姫子
「あくまで、モンテ領の利益に反しない限り、モンテ領民に損害を与えない限り、
という限定条件があるということね」
白丸
「その通りだ。自分の領民が飢えていたり、生活が苦しいときには、容赦なく切り捨てさせてもらう。 嫌な言い方になるが、外町に住み着いたひとたちへの保護は、余裕がある範囲で、負担にならない限りという条件のもとで行う。 だから、当てにしてもらっては困る」
姫子
「それでいいと思うわ。 中途半端に助けるくらいなら、最初から助けるな。
余計に迷惑よ。」
姫子の表情が怖かった。嫌な過去を思い出した様子だった。
大地
「姫子、俺に出来ることがあったら言って欲しい」
姫子
「ええ、そのときは、最後まで助けてね」
大地
「もちろんだ」
白丸
「それでは、灯油の価格は現在の仕入れ値の2倍ということで、下級の灯油を1リットルを200バーシルとする。
中級の灯油を1リットルを200バーシルで売るものがいた場合に備えて、中級の灯油を1リットルを400バーシルと設定する。上級の灯油の価格は後日決定とする」
姫子
「上級の灯油の値段を決めなくてもいいの?」
大地
「中級の灯油さえないからね。
上級の灯油の値段はまだ要らないと思う。
それよりも、下級よりも質の悪い灯油を売ろうとする連中は、どうする?」
白丸
「そのときは、それは、下級の灯油ではない。
ひとをだます詐欺の罪で捕まえることにしよう。
あまり、複雑なルールだと覚えきれなくなって守られなくなってしまう」
姫子
「じゃあ、なるだけ簡単なルールにしましょう」
◇
モンテ領領主モンテフルーツ大公爵からのお達しの立て札が広場に建てられた。
===== お達し =====
灯油の販売価格は、次のとおりとします。
これよりも安く売った人は、お縄についてもらいます。
下級灯油 1リットル 200バーシル。
中級灯油 1リットル 400バーシル。
上級灯油については、考え中です。
===== お達し =====
これを読んだ明星油屋は、喜んだ。
親分
「この値段で売って良いなら、女性たちや子供たちに、新しい服を買ってやれそうだ」
荒くれ者AとBとC
「うれしいお達しですね」×3
◇
これを読んだ吉田油屋は、驚きのあまり、なにも考えられなくなってしまった。
吉田油屋の店主 こころの声
『いったい、なにが起こった?
なぜ、急に、販売価格を決められてしまった?
モンテフルーツ大公爵は城下町のことで精一杯だから、外町のことに構う余裕なんて無かったはず。
・・・
もしかして、昨日の剣士が、モンテフルーツ大公爵に報告したのか?
いや、あのような、どこにでもいるような剣士に、そんなツテが有るわけがない。
こうなったら、あの剣士様をおだてて、明星油屋を襲撃させよう。
そうすれば、良い見せしめになって、商売どころではなくなるだろう』
吉田油屋の店主は、急いで店に戻って、娘を呼びつけた。
そして、状況を娘に説明した。
吉田油屋の娘
「へえ、そんなお達しが出たんだ。
モンテフルーツ大公爵って、やるときはやるんだねえ」
吉田油屋の店主
「なにを気楽なことを言っているんだ?
この計画が失敗したら、せっかくの儲け話も消えてしまうんだぞ」
娘
「それは、まずいねえ。それで、どうすればいい?」
店主
「昨日の剣士様を利用するしかない。
あの強さで、明星油屋の連中を倒してもらえば、明星油屋を親玉とする油屋連合も、恐れるだろう。
そうなったら、モンテフルーツ大公爵のお達しに従うと命の危険があると思って、安売りをするだろう」
娘
「そんなに上手く行くかなあ?」
店主
「お前が剣士様と仲良くすれば、吉田油屋と関係があると思うだろう。
そう思わせれば、遠くにいるモンテフルーツ大公爵よりも、目の前の剣士様の方を怖がる。
そして、吉田油屋に合わせるべきだと気づくだろう」
娘
「わかったわ。まあ、色仕掛けなら任せてよ」
店主
「こころ強いな。頼りにしているぞ。
おや、噂をすれば影だ。
さっそく来てくれたぞ。
まずは、俺が引き留めておくから、素早く化粧をしてくれ。
なあに、お前なら化粧しなくても美しいが、少しの化粧でもさらに美しくなるからな。
じゃあ、なるべく早く来てくれ!」
娘
「5分だけでいいわ。あの程度の田舎者なら、それで十分よ」
店主は、ほほえんでから、剣士のもとに走って行った。
◇
店主
「剣士様、あのお達しを御覧になりましたか?」
白石白丸
「ああ、見たぞ。それがどうかしたか?」
店主
「よく読まれなかったのですか?
大変なことが書かれていましたよ」
白丸
「そうかなあ?
なにもなかったぞ」
白丸 こころの声
『姫子に何度も読まされたわ。
一度出したお達しは手直しできないんですよって』
吉田油屋の店主は、筋肉で無理やり笑ったような下心丸出しの気持ち悪い笑顔を向けてきた。
白丸 こころの声
『げ、気持ち悪い。ひとをだまして利用しようとする笑顔は、見ていて気分が悪い。
当の本人は、人当たりが良い最高の笑顔をしているつもりだから、質が悪い』
白丸
「実は急いでいてな。 では、さらば」
胸を当ててきた女性がいた。
吉田油屋の娘
「剣士様、あのお達しを御覧になりましたか?」
白丸
「ああ、見た。 実は、急いでいてな」
娘は、その場を立ち去ろうとする白丸の腕をつかんで、放そうとしなかった。
娘
「剣士様あ、じつはあ、あたし、剣士様にお願いがあってえ」
娘は色っぽい声を出しながら、白丸の腕にさらに胸を押し付けてきた。
白丸
「は、はなしてくれ」
くすくすと笑う声がした。
白丸の隠密 姫子だった。
姫子
「あら、あら、もてるわねえ。
へえ、かなり美しい娘じゃない。
色気も満点ね。
わたし、嫉妬しちゃうわ」
白丸
「冗談を言ってないで、助けてくれ」
姫子
「そこの美しいお姉さん、わたしたちは急いでいるのよ。
その手をはなしてくれないかしら?」
娘は、姫子の方を向いた瞬間に悟った。
これは勝てない。
娘
「彼女がいるなら言ってくれればいいのに」
娘は、白丸の腕をはなして、白丸から離れた。
姫子
「ありがとう、引いてくれて。
では、急ぎましょう。
遅れたら、商談がまとまらないわ」
姫子は、白丸の腕をつかんで、駆けて行った。
◇
白丸と姫子は、明星油屋の親分のところにいた。
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