62 支え合える組織にあるもの
ミエルは、お店の方針について話し始めた。
ミエル
「ひとが2人以上集まったら、組織の始まりだと思っている。
そして、組織とは支え合える関係であるべきだ」
みんなは真剣に聞いていた。
真帆は、強い視線でミエルの目を見ていた。
ミエル
「ただし、残念なことに組織は上下関係で成り立っている。
みんながちからを合わせるために必要なことなんだけれど・・・
多くの人は自分より下の順位にいるひとを作ろうとして、他人の弱点や欠点を探すことに時間と労力を割いてしまう。 これでは、組織として集まった意味がない。
ワカルさんや真帆さんがいた組織は悪い例だと判断した。
では、支え合える組織のひとが持っているべきものは、なにか?
それは、どんなことが有ろうとも、自分を大事にしてくれるひとがいることだ。」
ミエルは、みやびの顔を見た。
みやび
「どうしたのさ、ミエル?」
ミエル
「ボクの精神が安定している理由は、みやびが居てくれるおかげなんだ」
みやび
「おたがいさまさ、ミエル」
ミエル
「アランとアリスの信頼関係も素敵だと思っている。
ボクが見ていないところで、ふたりがどれくらい仲が良いかは知らないけれどね。」
アリス
「それは、もうね。
アランはワタシ無しでは生きられない身体になりました」
アラン
「アリスもそうだと嬉しいのだがな」
アリス
「さあ、どうかなあ?」
ミエル
「ワカルさんと真帆さんは出会ったばかりだけど、将来的には、未来ではボクたちのように仲良くなってくれたら、うれしいな」
ワカル
「ボクが真帆さんについて分かることは美しい容姿と賢そうな目と顔だけです。
ボクを大事にしてくれるひとかどうか、どんな考え方でどんな人柄なのか分からないので、これから、どうなるか分かりません」
真帆
「ワタシは、男性を好きになることは想像できません。 ですが、その反動として、好きになったら止まらないかもしれないと思います」
ミエル
「うん、かなり先の話だから、気にしないでね。
そして、組織にいる全員が誰かに愛されていると自信を持つことが出来たならば、義理人情を忘れずにお互いを助け合える関係になれるはずなんだ」
みやび
「ミエル、言っていることが、むずかしいさ。
なにを言いたいのさ?」
マーサ こころの声
『みやび、解説しましょうか?』
みやび こころの声
『ありがとう、マーサ。でも、ミエルから聞きたいさ』
ミエル
「ああ、ごめんね。 みんなが聞いてくれるから嬉しくなって、つい演説をしてしまいました。
そうだねえ、簡単に言うと【幸せ半分こ】だね。」
みやび
「【幸せ半分こ】?」
ミエル
「そうだね、たとえば、いま、グレープフルーツを食べるという幸せがありました。
みんなで仲良く同じだけ食べたよね」
みやび
「そうさね。 あっ、でも、ワタシはミエルから1つもらったから、半分こじゃないさ。
お返しすれば良かったさ」
ミエル
「今度は、ボクにも、アーンしてね」
みやび
「もちろんさ」
ミエル
「それでね、みやび。 話を続けるよ。
ワカルさんがいた店も、真帆さんがいた店も、【幸せ半分こ】が無かった。
だから、あんなひどい言い方をするひとがいたんだ。
これから、ボクたちが始める店では、【幸せ半分こ】できるひとだけを集めたい。
そして、店に来てくれる人とも、【幸せ半分こ】したい。
ということは、料理がまずいから金を払わないとか、タダで食わせろとかいうひとは、【幸せ半分こ】する気が無いひとだ。そういうひとたちは、店には入れない。来たら、追い出すことにする」
みやび
「よく分かったさ。ミエル、【幸せ半分こ】って良い言葉さ。
ワタシは、ここにいるみんなで【幸せ半分こ】したいさ」
アリスが拍手すると、アラン、ワカル、真帆も拍手をしてくれた。
もちろん、みやびも拍手をしてくれた。
ワカル こころの声
『あの店には、【幸せ半分こ】って、無かった。
ボクが分けてもらえなかっただけかもしれないけれど・・・
あのとき、みやびさんについて行くことにして良かったのかもしれない』
真帆 こころの声
『あの店には、【幸せ半分こ】って、無かったわね。
みやびさんは、お店の中にいたときよりは、子供っぽくなっているけれど、ミエルさんの長い話を分かりやすい言葉でまとめさせた。 【幸せ半分こ】という短い言葉にすべてが込められているわ。
あのとき、みやびさんについて行くと決断したことは正解だったわ。
いいえ、わたしが居るんだもの、絶対に正解にして見せるわ』
ミエルの話が終わったあとで、ボクたちは、理想の場所に空き家があることを知った。
モンテ領の領主モンテフルーツ様が管理していて、150年前から管理はされているが、誰も貸してもらえないという話だった。
もうすぐ夕方になるので、ボクたちは宿屋に泊まることにした。
翌朝、ボクたちは、領主様の屋敷に行った。
どうしても、あきらめきれなかったから、ダメもとでお願いすることにした。
厳しい言葉で断られる覚悟をしていたのだけれど、あっさりと貸してもらえた。
屋敷の執事
「旦那様から、あなたたちが来たら、あの家の鍵を貸すように言われています」
ボクは意味が分からなかったので、御礼を言うことが遅れてしまった。
ミエル
「ありがとうございます。
大事に住ませてもらいます」
店を開くためのスタートラインに立てたことを、ボクたちはとても喜んだのだった。
第7章 みやび覚醒、すべてを知る力
おわり
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