44 月夜橋という逃げ道と後悔
ミエル、みやび、賢者カップルの4名は、【旧カニング公爵領】と【モンテフルーツ公爵領】の境界にある【月夜橋】に来ていた。
ミエルは、みやびと賢者カップルの3名に向かってから、話を始めた。
ミエル
「この【月夜橋】の正式名称は、【月夜モンテマニー橋】と言うんだ。」
3人は静かに聞いていたので、ミエルは話をつづけた。
ミエル
「150年前に、【渡日橋】、ええと、【3連アーチ大橋】と呼ぶ方が良いかな? が落ちたあとは、【月夜モンテマニー橋】だけが【モンテフルーツ公爵領】に行く唯一の手段になったんだ。」
みやび
「じゃあ、なんで、【3連アーチ大橋】を直さなかったのさ。お金が惜しかったのか?さ。」
ミエル
「橋を造る方法が分からないからだよ。直すことさえ出来ない。どんなにお金があっても出来なかったんだ。」
みやび
「じゃあ、仕方ないさ。」
ミエル
「【月夜モンテマニー橋】については、複雑だよ。ボクは、【旧カニング公爵領】の生まれだから、この橋が残ってて良かったと思っている。 【モンテフルーツ公爵領】に行けるからね。
だけどね、橋の反対側である【モンテフルーツ公爵領】のひとたちにとっては、この橋がなければ向こうから人が来ないのにって、思っているそうだよ。
同じ橋でも、生まれた場所によって、感じることが変わるんだ。」
賢者 男
「ミエルさん、深く考えると、気疲れします。 ミエルさんがどうしたいかを優先して良いと考えます。」
ミエル
「ありがとう。 ボクは、この橋を残したいんだ。 だからね、こっちに来てくれるかな?」
ミエルは、橋の下に進んでいった。 そして、ミエルが指さした壁には、12センチくらいの正5角形に黄色い星型が埋まっていた。
賢者 女
「綺麗な星ですね。」
ミエル
「【月夜モンテマニー橋】が150年前から残っている理由が、この星なんだ。
ボクが読んだ本によると、監察官ルナ様が毎月14日に【月の魔力】を補給していたと書かれていた。
ルナ様が亡くなったあとは、モンテマニー公爵の子孫が【月の魔力】を補給していたから、【月夜モンテマニー橋】が残っているんだ。 そして、ボクがこのことを知ったときには、【月の魔力】が補給されていないと気付いたから、ボクが【月の魔力】を補給しているんだ。」
ミエルは、月が見えるように、橋の下から出て、空の月に右手のひらを掲げた。 そして、左手のひらを星形に向けると、月の光がミエルを経由して、星形を照らした。
【月夜モンテマニー橋】の壁からの声
「【月の魔力】が補給されました。来月も補給お願いします。」
ミエルはさびしそうにいった。
ミエル
「ごめんね。 もう来れないかもしれない。」
【月夜モンテマニー橋】の壁からの声
「いままでありがとうございました。次の方が現れることを願います。」
ミエルは、みやびと賢者カップルの3名に向かって言った。
ミエル
「お待たせしました。 さあ、【月夜モンテマニー橋】を渡って、【モンテフルーツ公爵領】に行こうか?
みんなが逃げてきたときに、この【月夜モンテマニー橋】があれば、大丈夫だからね。」
ミエル、みやび、賢者カップルの4名が【月夜橋】を渡ったあとで、不運にも星型が取り外されてしまった。
泥棒
「いつもと違って、【月夜橋】の下が明るいと思ったら、こんなお宝があったなんてな。
ギルドに報告したら、高値で買い取ってくれそうだ。 いやあ、今夜はついているな。」
【月の魔力】を補給できる最期の機会になるかもしれないと考えたミエルが、いつもよりも多めの【月の魔力】を補給したから、目立ってしまったようだった。
◇
ギルドでは、スタンピードを退けた祝いの宴でみんなが酔っぱらっていた。
黒色騎士団の活躍で、モンスターの大行進は山の向こうへ走り去っていった。
無事にスタンピードをそらすことができた。
黒色騎士団はギルドメンバーたちに讃えられていた。
そして、戦いに参加しなかったミエルは、ボロカスに侮辱されていた。 「まちのひとたちは、逃げるんだ!」と言い続けるだけで、ミエルはモンスターの迎撃活動に参加しなかったからだ。
みんなが寝てしまったときに、大地が大きな音を立てて、揺さぶられた。
ギルドメンバーは初めて経験したことで、パニックになっていた。
ミエルが分からないと脅えていた恐怖がやってきたのだった。
【大地震】で、ギルドの城壁は崩れて倒れ、火事になった。
そのまま目覚めなかったひとは幸運だったかもしれない。
それからしばらくして、救いの雨が降り、火が消された。
しかし、ほっとしたのも束の間で、大嵐が来て、多くのものが飛ばされてしまった。
【台風】が来たのだった。 昼間でも恐ろしいのに、夜中だから、なお恐ろしい。
2つの恐怖に傷つき、多くの者たちが「痛い痛い」と叫び声をあげた。
ミエルは、【大地震】というものを知らない。【台風】も知らない。
だから、予知夢を見ても、原因を予想できなかったのでした。
◇
そして、夜が明けて、空が明るくなると、町にあったものとギルドにあったものの多くが吹き飛ばされて無くなっていた。
ひとびとは、なにが起こったかを理解することができずに、ぼーっと立ち尽くすしかなかった。
命が有っただけ良かったと人々が気を取り直したとき、とどめとなる出来事が起こってしまった。
昨夜に退けたはずのスタンピードが戻ってきた。 モンスターの大行進がやってきた。
モンスターの大行進は、【大地震】と【台風】から避難するための行動だったようだ。
そう理解したときには、もう遅かった。
手元に残ったわずかな武器を手にギルドメンバーたちは、勇敢に戦ったが、昨日の祝い酒が残っていて、いつものように戦えず、大勢の者がケガをして傷ついた。
黒色騎士団の4人は勇敢に戦ったが、魔力不足になった。
そのとき、知世が気付いた。
知世
「そこのひと、その星型をください。」
泥棒
「いや、これは俺のものだ。」
武神
「よこせ。」
武神は力づくで奪って、知世に渡した。
知世
「この星型から、ミエルさんの魔力を感じるわ。
ミエルさん、私たちに魔力をください。」
星型に貯められていた魔力を、知世、美花、武神、ラージャー公爵、そして、ギルドメンバーが使用した結果、モンスターたちは敵わないと理解して逃げ去っていった。
ラージャー公爵
「みんな、無事か?」
ギルドメンバーたち
「無事じゃねえよ。 おまえたちがいなかったら戦わなかったんだ。
余計なことをしやがって、どうしてくれるんだ。
こんなことになるなら、ミエルさんが言うように、逃げておけば良かった。」
黒色騎士団の4人は、ギルドメンバーたちに責められていた。
喜びの酒を飲んで寝ているところに、地震が来て家が壊れ、その後で来る台風にすべてを飛ばされた。もちろん、城壁も。
その状態で、魔物たちが戻ってきた。
ノワール貴族で構成される黒色騎士団への支持が、うらみへと変わる。
「余計なことをしなければ、嫌々でもミエルの言うことを聞いていた。そうなれば助かったんだ。」
ラージャー公爵 こころの声
『ミエルさんは、このことを心配していたのかもしれない。』
ギルドマスター
「みんなが賛成したことだろう。 黒色騎士団の4人を責めるんじゃない。」
ギルドメンバーたち
「だけどよう。 なあ。」
大親分 左近
「こうなったら、ここには住めない。 今からでも、【モンテフルーツ公爵領】に避難しよう。」
ギルドマスター こころの声
『ミエルさんの言う通りにするべきだった。』
◇
【モンテフルーツ公爵領】に避難する道中で、泥棒は、どこで、ミエルの魔力が込められた星型を手に入れたのか問い詰められていた。
泥棒
「拾ったんですよ。」
知世
「どこで、ひろったの?」
泥棒
「【月夜橋】の下です。」
大親分 左近
「【月夜橋】の下のどのへんだ?」
泥棒
「壁の近くですね。」
大親分 左近
「【月夜橋】の壁に埋まっていたんじゃないか?」
泥棒
「・・・」
ギルドマスター
「まさか、外したのですか?」
泥棒
「他の誰かに取られる前にってね。」
ようやくの想いで、【月夜橋】にたどり着いたら、【月夜橋】が崩れていた。
崩れて落ちた月夜橋を見たとき、ミエルが注意しているときに逃げていれば、向こうに渡ることが出来たのにと、すべての人たちが後悔した。
ギルドメンバー
「そんな、終わりだ。
向こうに行けない。」
大親分 左近
「おい、星型を取ったところに案内しろ。」
泥棒に星型があった場所に案内させて、星型をはめこんでみた。
【月夜モンテマニー橋】の壁からの声
「【月の魔力】を補給してください。あなたが補給できないなら、過去10回に補給した方のお名前を表示しますから、呼んできてください。
1回前(1日前): ミエル
2回前(1ヵ月前): ミエル
3回前(2ヵ月前): ミエル
4回前(3ヵ月前): ミエル
5回前(4ヵ月前): ミエル
6回前(5ヵ月前): ミエル
7回前(6ヵ月前): ミエル
8回前(7ヵ月前): ミエル
9回前(8ヵ月前): ミエル
10回前(9ヵ月前): ミエル
なお、【月の魔力】を補給する最適の日、もっとも良いは、14日の夜です。」
ギルドマスター
「ミエルさんは、最後まで【月の魔力】を補給してくれていたのですね。」
受付嬢
「ミエルさんは、みんなの安全を守ろうとしてくれていたのね。」
黒色騎士団の4人を中心として、多くのギルドメンバーが【月の魔力】を補給しようとしたが、だれも補給できなかった。
【月の魔力】を補給すれば、【月夜橋】が元通りになって、【モンテフルーツ公爵領】に行けるかもしれない。 そう願っていたが、【モンテフルーツ公爵領】に行くことは叶わぬことだと皆が無理だと悟って、あきらめた。
そうこうしているうちに地震の余波が来て、【月夜橋】の残った部分までもが崩れてしまった。
下敷きになった大親分は、ミサキの慈悲でふたたび人間への転生をゆるされた。
下敷きを免れた者たちも、モンスターとの戦いで疲弊して倒れていった。
再び夜が来た。
屋根も食べるものも残されてなかった。 【台風】に飛ばされたからだ。
多くの人の心の声
『ミエルの言う通りに逃げていれば、いまごろ、家の中で暖かい布団の中で眠れていたのに・・・』
希望を無くして、あきらめたひとたちは、抵抗することをやめて、モンスターに命を渡したのだった。
今回の地震は1ヵ月も続いて、旧ワイダー公爵領と旧カニング公爵領は、海の中に消えてしまった。
◇
未来知見の女神 ミサキ
「ミエルがいたから、ぎりぎり持たせましたが、あの土地の運命は決まっていたのです。
イウラとルウナの慈悲に生かされていたこと、【月夜橋】を語り継ぐことを忘れてしまったのだから。
ミエルは自分の安全を優先すると言いながらも、最後まで彼らを見捨てようとしなかった。
幼いころの約束を覚えていると分かって嬉しいですが、お人よし過ぎますね。
義理人情を忘れた人たちなど、放置しても良かったのです。」
第6章 黒色騎士団 ざまあ 終わり
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