35 悪口を運ぶ伝書鳩
ミエルは、ギルドにて、いつものように依頼を探していた。
ワタセがミエルに近づいてきた。
ミエル
「ワタセさん、どうですか? お身体の具合は?」
ワタセ
「ええ、大丈夫です。 それよりも、ミエルさん。 ギルドの中でAさんが言っていましたよ。」
ミエル
「Aさんって、どなたですか? ギルドに登録されている方と思いますが、全部を覚えているわけではないので、ワタシと関りがないひとだと思いますが。」
ワタセ
「姿が見えるだけで腹が立つ。 とっととギルドから出ていってほしいって。」
ミエル
「どうして、そんなひどいことを言うの?」
ワタセ
「みんなに聞いておきます。」
ミエル
「よろしくね。 ワタシがなにかしてしまったのかなあ。」
ミエルがとても悲しそうな表情を見せて下を向いた姿を見て、ワタセは嬉しくなった。
◇
2日目。
ミエルは、ギルドにて、いつものようにミエルが依頼を探していた。
でも、誰が見ても元気が無さそうに見えた。
ワタセがミエルに近づいてきた。
ミエル
「ワタセさん、どうですか? なにか分かりましたか?」
ワタセ
「いいえ、まだ調査中です。 それよりも、ミエルさん。 ギルドの中でBさんが言っていましたよ。」
ミエル
「Bさんって、どなたですか? ギルドに登録されている方と思いますが、全部を覚えているわけではないので、ワタシと関りがないひとだと思いますが。」
ワタセ
「賢者だからと威張りやがって。 頭をかち割ってやりたいって。」
ミエル
「そんな、ボクは静かに依頼を探しているだけなのに・・・
どうして、そんなひどいことを言うの?」
ワタセ
「みんなに聞いておきます。」
ミエル
「よろしくね。 ワタシはだれかに嫌われるようなことをしたのかなあ。」
ミエルが生きる希望を無くしたような表情を見せて下を向いた姿を見て、ワタセは嬉しくなった。
◇
3日目
ミエルは、ギルドにて、いつものようにミエルが依頼を探していた。
いや、依頼を探しているというよりは、うつろな目をして、死にそうな顔をして立っているだけだ。
ワタセがミエルに近づいてきた。
ミエル
「ワタセさん? また誰かがなにかを言っていたのですか?」
ワタセ
「ええ、その通りです。 じつは、ミエルさん。 ギルドの中でCさんだけでなく、みんなが言っていましたよ。」
ミエル
「みんながですか? またワタシの悪口だと思いますが。」
ワタセ
「協調性が無いとか、なにを考えているか分からないとか、暗そうで元気がないから、死ねばいいのにって」
ミエル
「どうして、そんなひどいことを言うの?
ううん、それよりも、ワタセさんは、どうして悪口を伝言してくるの?
なにが目的でワタシに言いに来るの?
もしかして、ワタセさんが思っていることを、みんなが言っているとウソをついているんじゃないの?」
ワタセ
「ボクではなく、みんなが言っていることですよ。」
ミエル
「もういい、もういらない。 ボクに話しかけないで、近づいてこないで。」
ミエルは両目にいっぱいの涙を浮かべながら、泣きながら大きな声でワタセに言い返した。
ギルドの登録者C
「おいおい、ミエルのようなギルドの嫌われ者に、人気者のワタセ様が話しかけてくださっているのに、なんだあ、その言い方は。 感謝して、身の程をわきまえろ。」
ミエル
「悪口を運ぶ伝書鳩に話しかけられて、感謝なんかするものか? 大大迷惑だよ。」
ギルドの登録者C
「なにおう。 口答えするのか? みんなあ、この泣き虫ミエルをやっちまえ。
みんなでかかれば、賢者の大呪文なんて、使えなくなるから、こわくねえぞ。」
ギルドの連中
「おお、そうだそうだ。 ミエルが悪い。」
追い詰められたミエルの死にそうな絶望した表情を見て、ワタセは最高に嬉しくなった。
ワタセ こころの声
『【共通の敵を作れば団結できる】とは、このことだな。 努力を始めて続けて成果を出せるものは、100人にひとりいるかどうか、ほとんどの人間がなまけものだからな。 成果や結果を出している者を集団で攻撃するという娯楽の誘惑には勝てないのさ。 クックックッ。』
◇
酒場の客B
「俺がワタセさんを通して、ミエルさんに質問したら、自分で調べろカスと言ったそうだが、本当か?」
ミエル
「そんなことは言っていません。 いちいちワタシに質問しなくても、ワタセだけでなくギルドのみんなも自分で調べて分かることだと思うよ。 とは言いました。 そうですよね。ワタセさん。」
ワタセ
「自分で調べろ! 脳が筋肉のバカって、言っていましたよね。」
ミエル
「そんなことは言っていません。 どこをどう曲げたら、そんな悪意がある言い方に変わるのですか?」
ワタセ
「ミエルさん、わたしはミエルさんが言った原文を一字一句たりとも変えずに言っているだけですよ。」
ミエル
「原文なんて、ひとことも残っていないじゃないか? なんのうらみがあるんだよ。」
みんなが騒いでいるところに、ギルドの医者と看護師の長が現れた。
ギルドの医者
「静まりなさい。 ミエルさんはなにを騒いでいるのですか?」
ミエル
「先生、ここにいるみんながワタシが言っていないことを言ったといって、非難してくるんだ。」
看護師の長
「言っていないことですか? あなたがそういう失礼な物言いをしたことは、みんなに知れ渡っていますよ。」
ギルドの医者
「ミエルさんは、精神が異常な御様子ですね。 だれも使用できない大呪文を使ったから、脳に負担が掛かって精神に異常をきたしたのではないですか?」
ミエル
「そんなことは、ありません。
ボクは正常です。」
ギルドの医者
「異常な人ほど、自分のことを正常というものです。 さあ、入院しましょうか? ミエルさん。」
ワタセ こころの声
『ミエルに、【言い逃れさせない】状況は、整ったな。 そろそろとどめを刺すときだな。
【精神を弱らせた後で黙らせる】 あと一歩でミエルは地獄行きだな。 クックックッ。』
看護師の長
「まだ、なにか言いたいことは有りますか? ミエルさん。」
ミエル
「どうして、みんなでワタシをいじめるのですか?
わたしがなにか悪いことをしたのですか?」
みんなの声
「おまえは存在自体が罪なんだよ。 生まれてきて、ごめんなさい。って、言えよ。」
ミエル こころの声
『ワタシは生まれてきたことが大罪だというのか? もう何を言っても誰も聞いてくれない。
もう声を出す気力も、ここから立ち去る元気も出ない。』
ミエルに物を投げてぶつけるひとたちが出始めた。 ミエルはちからなく倒れるだけだった・・・
???
「おまえら、静かにしろ!」
そのドスが効いた声に、場が静まり返った。
つづく
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