甘い香りは運命の恋~薄幸の天使Ωは孤高のホストαに溺愛される~(短編)
白亜が窓を開けると、晴れた青空が広がっていた。
冬の空は、うすい水色で、雲一つない。
マンションの4階だから、遠くまで見渡せるけど、そのぶん冷たい風が入ってくる。
頬にぶつかる風は冷たいけど、嶺二に買ってもらった暖かいパーカーのおかげで、寒くない。
「白亜、何してるんだ?」
部屋に入ってきた嶺二が、白亜を呼ぶ。
「あっ!」
ふりかえるより先に、背中からぎゅっと抱きしめられた。
嶺二は、白亜より頭一つ分ほど背が高い。
すっぽりと嶺二の腕の中におさまった白亜は、顔をあげて、嶺二を見つめる。
冷たく見えるけど、白亜には、やわらかく微笑んでくれる。
白亜の大好きな人。
そして白亜の、運命の番。
「ママと、お話してました!」
ママは白亜が子どものころに、空の向こうの、天国へ行ってしまった。
それからずっと、白亜はママに届くように、いつも空に話しかける。
「お話できたか?」
「はいっ」
白亜がうなずくと、嶺二が頭をナデナデしてくれる。
白亜は、天使のように純粋なまま、大人になった。
だから話し方も少し幼いけど、嶺二はそれを優しく見守ってくれる。
その証拠に、嶺二のキリッとした鋭い瞳は、白亜を見るとやわらぐのだ。
いまも、口元に笑みを浮かべて、白亜を見下ろしている。
「ママに、何を話してたんだ?」
優しい声でたずねてくる。
白亜は頬をゆるめて、嶺二の手をぎゅっとつかんだ。
「ママが言ってました。ボクが大きくなったら、ママよりもすきな人に会えるって」
ママと一緒に暮らしていたころ、そんな話をしてくれた。
そのとき、白亜はママと約束したのだ。
「大すきな人を見つけたら、何があっても、そばにいるって」
そう言って、ママと指切りをした。
あのころ、大好きな人は、ママだけだった。
でも、いまは、もう一人ふえた。
ママよりも大好きな嶺二に出会って。
つめたく暗い部屋で、虐められて過ごした日々が。
先の見えない、灰色の世界だったのが。
あっという間に、明るさを取り戻した。
「白亜」
嶺二が、白亜の体をくるっと回して、正面から顔をのぞき込んでくる。
カッコよくて、優しくて。
とっても甘い香りがして、とろけるくらいに、大好き。
嶺二の側にいるだけで、嬉しくて、好きの気持ちがあふれてくる。
「レージくん」
大好きな嶺二を見上げると、おでこにちゅっとキスをくれた。
それから、頬にも、唇にも、甘いキスをくれる。
「ふふっ、くすぐったいです」
笑い声がこぼれてしまう。
でも、嶺二のキスは優しくて、甘くて、気持ちいい。
いっぱいキスしてくれた後、真剣な顔で口を開いた。
「俺が、お前を守ってやる」
嶺二の真剣な眼差しに、胸がドキドキした。
もう十分に、守ってくれてるのに。
白亜は腕を伸ばすと、嶺二にぎゅっと抱きついた。
嶺二に出会ってから。
あの寂しくて、つらい日々は、忘れてしまった。
嶺二が、ぜんぶ変えてくれたから。
「大すき、レージくん」
どれだけ好きと伝えても、足りないくらいだ。
だって白亜は、嶺二と出会って、信じられないくらい幸せになった。
自分がオメガだなんて知らなかったのに。
アルファの嶺二と出会って、たくさんの「初めて」を知った。
「白亜。好きだ」
嶺二が微笑んで、優しくキスをする。
「ずっと、お前の側にいる」
「はいっ!」
嶺二にぎゅっと抱きつくと、髪を梳くようになでてくれた。
大好きな、甘い香り。
大好きな、嶺二の温もり。
白亜が飽きるまで抱きついていても、嶺二はおこらなかった。
だまって、抱きしめてくれて。
ねだると、またキスをしてくれて。
大好きな人と一緒にいられる幸せに、飛びあがりたいくらいの幸せを感じていた。
(終)
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