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良識のある異世界生活を  作者: 猫の甘噛み
19/20

19

目を覚ますとそこは病院だった。窓を見ると晴天である。俺はベッドから出ると、病室を闊歩し、何も興を唆るものがないと知ると、俄かに扉を開いてみた。するとそこには――

シャーロットがいた。

「お、おはよう」

ああ、おはよう。

「もう怪我の方は大丈夫なのかしら?」

ああ、大分な。

「そう……」

俺は一つ椅子を出してそこに座るように促す。シャーロットがそこに座ったのを確認すると、ベッドに入った。

俺のいない間に何かあったか?

「何も、ただ、ガイルとケインさんは突如現れた老人にボコボコにされたわ」

そうか、お前自身には?

「私?私は……」

ほら、お前、今日はぎこちないだろ。それに最近は俺を避けるし。だからなんでか気になってな。

「……そう、気づかれていたのね」

まあな。

「……あんたは何も思っていないわけ?」

ん?いや、そりゃ、シャーロットがそんな状態じゃ――

「私のことじゃなくってあなた自身のことよ!」

急に声を荒げたシャーロットに俺は呆然とする。

「その様子、絶対気づいてないわね……もういい。帰る」

お、おい!待て!

俺はシャーロットの腕を掴んで引き留める。

「離して!!」

いやだ!

「嫌じゃないでしょ!どうせ私のことなんか何にも思ってないくせに!」

何にも思っていない!?ふざけるな!俺がどれだけ心配して――

「だったらそれを証明してよ!」

俺はシャーロットの意味不明な言動に言い返そうと口を開きかけるが、彼女の涙に塗れたぐちゃぐちゃの顔を見て絶句した。

お、おい、なんだってそんなに泣いて――

その瞬間、彼女は胸に飛び込んできた。俺の胸の中で慟哭する。それに対して俺は抱きしめることしかできなかった。


泣き止まぬ彼女の慟哭を聞いた看護師などが何事かと集まるが、ナイスタイミングで来たマイケルが一瞬で状況を察知し、俺の病室に入れないようにしている。いつのまにか彼女の慟哭は止み、えずきながらこう語り始めた。

「アルには好きな人ができたこと、ある?」

好きな人?そりゃあもちろん、お前だって好きだし、マイケルだって好きだし……

「そういう意味じゃなくって、恋をしたことある?」

恋、か。俺は恋がきらいなんだ。第一、恋なんて誰にでもできるじゃないか。一回しか会ってない人、顔しかよくない人……俺はそこに特別感を感じないんだ。

「じゃあ例えば今まで長らく一緒にいて、一緒に遊んで、一緒に喋って……そんな人に恋をしたらどうかな?」

それはもはや恋とは言わないさ。相手のことを知って、それでも好きだと言うのなら、それは愛って言うんだ。

「愛……」

そうだ。だから俺はシャーロットを愛しているし、マイケルを愛しているし……

「その、私を愛しているっていうのは異性として?」

……異性として、か。そんなことは考えたことがなかった。そりゃそうだろ?俺たちの出会いは一王族と一公爵家だったんだから。そこに異性云々などは存在せず、あるのは品評だけだ。

「じゃ、じゃあ、どうしたらアルは私を異性として認識してくれるの?」

ん?おい、それはどう言う――

「いいから答えて」

異性として意識、異性として意識か……例えば俺が、こう、どきっとでもすればあるかもしれないな。

「へぇ、つまりドキッとさせて欲しいと」

おい、曲解がすぎるぞ。

「ふふふ、まあいいわ」

シャーロットは俺の腕から離れる。

「私としては今のあんたの状況はとてつもなく悔しい。なんか私だけが踊っているように思えるから。ただ、だけど、あんたがそう言うならそうしてみるわ。そうね、だから今回私があんたに抱かれながら泣いたことは忘れなさい?今日からあんたと私の物語が始まるのだから」

シャーロットはそう言って振り向くと、無邪気な笑みを見せた。その笑みに俺は脈打ち、魅惑的なものを感じたのだった。


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