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良識のある異世界生活を  作者: 猫の甘噛み
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そして俺たち、シャーロットと俺はなんら取留めのないことを話していた。嫌味なリー婦人が飼っている猫にひっかかれただの、温厚なジョンさんが娼婦館に行っていただの。そうこうしている間にあたりは人通りが多くなってきていて、それと比例して俺たちを微笑ましく見守る人も増えてきた。やれやれ、残念ながら俺たちはそんな関係じゃありませんよ。貴族はいつも事務仕事に追われているから色恋沙汰にどうも色めき立つのだが、俺とシャーロットの関係にそれを見出すのは流石に牽強付会がすぎる。とまあ、そんなことを思いながら懐中時計を開くとそろそろショップの開く時間になっていて、シャーロットにそれを告げるわけだ。そして俺たちは徐に立ち上がり、薄紫の街道をゆく。一陣の風に桜並木は揺れ、梢は春の陽気に快哉を叫ぶ。風に散る桜の花びらは去年の今頃を背景に踊り出す。春とは始まりの季節である。


ショッピングモールと銘打たれた大理石の館のコーニスにはふくよかな女性の裸体が踊っていて、自由を彷彿とさせるものだった。前世の世界では大量生産大量消費が席巻していて、非先進国にその負担は外部化していたように思えるが、ここの品は、俺の親父の命もあり、慎ましやかで落ち着いている。この地区に住む大半の貴族は俺の親父の賛同者であるはずだから、農耕の民が日々の暮らしに喘いで少しでも足しになれば良いと思って作った商品を、ダイレクトトレードで仕入れて、そのバックグラウンドに感涙しながら、とは大袈裟だが、少しは敬意を払って使うのだ。我々は確かに事務仕事で彼らを管理しているが、それは我々が上位者ということではなく、彼らがいるという前提のもとに成り立っているのだ。そりぁあ、彼らと俺らには物理的な距離があるし、じゃあ俺たちも農民になろうとかいうのは嫌かもしれないが、だが、だからといって彼らを切り離すのではなく、少しくらいは感謝してもいいではないか。そしてその感謝は彼らへの興味に変わり、彼らの統率にももっと気が入るはずだ。或いはその後に彼らと一緒に泥に塗れる未来があってもいいかもしれない。それが為政者のあるべき姿のように俺は感じる。とまあ、そんなことはさておいて、シャーロットは薄暗い店内に入る。勿論、ガラスや照明器具などは高いから使われていない。このショップは極限まで無駄を削ぎ落とし、少しでも農民に還元しようとしているのだ。さて、では俺はこれからシャーロットに馬車馬の如く働かされるだろうから、今のうちに一つ伸びでもしておこうか。


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