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今日も休日なのだが、昨日のケインさんとの練習の後、無理やりシャーロットに一緒に出かける約束を取り付けられた俺は、貴族達の集う住宅街にある、白石で作られた噴水に来ていた。まあ、あいつにこんなことを言うのは途轍もなく癪なのだが、あいつも一応はレディということで、シャーロットを待たせないように一時間前から来ていた。そして噴水の縁石に座って目を瞑り、眼前にケインさんを置いた試闘をしているとき、遠くから馬車の音が聞こえた。ここでは高位の人しか馬車を使ってはいけないから、間違いなく高位の人なのだろう。失礼があってはいけないので、背筋を伸ばしその方々が通られるのを待っていたのだが、しばらくすると、見慣れた家紋が目に入った。ああ、あれは確か公爵家のものだ。とすると、ああ、あいつが来たのだろう。シャーロットが。俺はそれとなく胸ポケットにしまった懐中時計を取り出して時間を見る。すると約束の三十分前だった。あいつ、来るにしても早くないか?まあいい、その分早く終われるだろうから。そして縁石に座って待っていると、俺の前で馬車が止まった。中からシャーロットが出てきた。そこまでは良かった。俺としてはそこまでしか予想していなかった。いや、それ以上のことは起きてほしくなかったとも言える。なんと、馬車の中には公爵様がいらっしゃったのだ。
も!申し訳ありません!ついシャーロットご令嬢のみだとばかり思っていて……
「ハッハッ。いいんですよ。私も先ほどこの娘が皇太子様と約束を取り付けたと聞いて、急いで身支度したくちですから」
いえ、恐れ多い。
「……まあ、娘は頼みましたよ。この娘は幾分照れ屋なので正直に気持ちを伝えられないでしょうが、見て呉れだけはいいでしょう?」
「ちょっと、お父さん?」
いえいえ、彼女がいいのは見て呉れだけではありませんよ。頭は冴えていて、魔術体術に造詣があり、包み込むような優しさがあるのですから。この前なんて練習後の私めのために水を持ってきていただきましたので。
「はは、王家継承候補最有力の方にそう言っていただけるとはありがたい。しかし、シャーロットよ。最近よく出かけると思ったらそんなことをしていたとは」
「な、何よ」
「……ハッハッ、何、昔の私たちを思い出すなと」
そう言って公爵様は俺に一礼すると去っていった。
で、まだ三十分くらい早いがどうするつもりだ。
「……そうね、私たちがこれから行くところは10時開店だしまだ早いわ。ここでゆっくりしていましょう?」
ゆっくりって言っても……何を話せばいい。
「もう、バカね。だから万年ぼっちなのよ。話したくなったら話すでいいの」
そんなもんか。
「そんなもんよ」




