mgw008.prj_勇者の留守を守る間も専門の仕事に専念する
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シンクの上にぶら下がるように設置されていたマニュピレーターが、耳なしの食パンでマスタード入りマヨネーズとハムを挟んでいた。
皿に置かれたそれを手掴みし、乱暴に噛み付き咀嚼するのは薪鳴千紘である。
涼し気な容貌なのに時々荒っぽい表情が出るのは、5歳から千紘を指導してきた大学教授のせいだろう。
風呂上がりで伸ばしっ放しの髪も濡れたままだ。
いつも通り目の下にクマを作り、瞼も眠そうに半分落ちている。
実は軍の研究に携わっていた最中、何十人ものお姉さま方をこの容姿と性格で狂わせてきた事実を本人だけが知らない。
コーヒーを啜りながらリビングの方に目を向けると、テレビが歩いて千紘の目の前まで移動してきた。
脚付きのテレビで、非売品である。脚は千紘が取り付けたモノで、AIアドニスによる制御だ。
放送の内容は、ここ半年の定番となる世界のメイルストロム戦線の状況、それに先日のキャンプ場近くにあるダムでの戦闘についてだった。
四度現れた勇者の駆る巨大ロボ、リゾルバインと、10年もの間ダムに潜んでいた怪物との戦い。
これに関して情報はほぼ出尽くしていたが、この朝の報道ではダム周辺で行方不明になった人々について触れられていた。
「……ゼロインフィニティ・ネイティブバージョンのフルチェックは?」
『リゾルバー及びアームドユニットのフルチェックは82%まで進行。現在までにゼロインフィニティへ対応した改修箇所において重大な問題は確認されていません。各部損耗度はシミュレーションの予測範囲内』
「とりあえず2.5%のアウトプットまでは耐えられる、か……。
予測シチュエーション、実戦レベルでシミュレーション、それぞれランを10万回、今のデータで実行しておけ」
『前回戦闘時のデータを参照、リゾルバインのステータス値を修正します。シミュレーション、ラン開始。
現在、アドニスシステムメインフレームは25%をメタロジカルスクリプトの解析に使用中。計算リソースの割合を変更しますか』
「んー……いや、そのままでいい」
先のダムでの戦闘では、実に4戦目にしてはじめてマシントラブル無しにリゾルバインは勝利していた。
これは、リゾルバインの全面的な改修、無限エネルギー機関『ゼロインフィニティ』の出力に対応したネイティブバージョンへと変更した為だ。
ゼロ・インフィニティ。
実は、開発した千紘自身にもよく分からない部分がある信頼性に問題のあるシステムなので、できれば使いたくないデバイスである。
とはいえ、窒素核融合炉の出力でさえリゾルバインの対メイルストロム能力としては十分でなかった以上、手段を選んでいられる贅沢も無かったワケだが。
コーヒーを啜り、AIアドニスに作業の指示をしながら、千紘はソファの上に放っておいた携帯電話を手に取った。
ホーム画面を開くと、新着メッセージが数件。
ほとんどは友人からのモノだったが、その中に千紘が設計屋として仕事をもらっている企業の社長からのメッセージもある。
件名には、『レーザーイグニッションシステム仕様変更の打ち合わせについて』とあったが、
(『打ち合わせ』ったって実機は仕様変えたのが完成済み、図面も引き渡して契約の内容はもう終わったんだけど。ノータッチを求めたのは向こうなんだがなぁ……)
基本的に千紘は作家で言うところのゴーストライターのような役割を求められており、仕事が終わったら開発した物にも関わらないのが通例である。
それ自体には不満もないので、今頃何の御用かと。
首を傾げる千紘だが、登校の時間も迫っていたので、サンドイッチを咥えたまま身支度を整える事とした。
◇
この日の学校は、少し騒がしかった。
ある男子生徒のアイチューバーが、テレビ番組にも取り上げられるほどの動画をネット上に公開し、世界的にも話題となった為である。
再生数ばかりにこだわる変わり者として認知されていた男子生徒は、今やちょっとした有名人であった。
それだけに留まらず、アイチューバー本人は警察に任意同行で引っ張られ取り調べを受けたらしいが。
「千紘を刑務所に送る気か大バカ野郎が」
「いやー自分で撮った映像なら別にいいかなって……。薪鳴は映ってなかったし」
染めた長い金髪に下がり目のギャルが、アイチューバーに殺さんばかりのメンチ切ってた。
先日に、千紘がリゾルバインの開発者兼パイロットであるのは口外しないようにしよう、と示し合わせておきながら、この状況。
その挙句に警察に連行されるとか、あまりの迂闊さとバカさ加減に殺意もマックスである。
アイチューバーも流石に、気まずそうに明後日の方向を見ていた。
ところは、校舎の屋上出る手前の階段ホール。
シトシトと秋雨が降り外に出られない為、ギャル、アイチューバー、パリピ、そして千紘の、事情を知る四人はこのような場所で密会しているのである。
一連の出来事の総括であった。
「マジで千紘の事は言ってねーんだろうな!? 警察はウソとか隠し事はすぐ見抜いてくるぞ! 警察トゥエンティフォーとかで見るし!!」
「言ってないってば! でも見抜かれてるとかは、ちょっとどうか分からない……」
「てめー!!」
夜叉と化したギャルがアイチューバーの首絞め上げてガクガク揺さぶっていた。脳が揺れるので真似をしてはいけない。
「まぁ知り合いがあのロボット動かしていると知ってる俺でも現実感とかねーけどなー。流石に警察も想像できないんじゃね?」
緊張感なくのんびり言うパリピは、コロッケパンを食べていた。
これは他人事ではなく、手に負えない事態だと最初から諦めているだけだ。
なるようにしかならないと思っている。
「警察もダムと例の映像以上の情報は手に入れてないみたいだけどね。
播磨が言うように、生徒がリゾルバインのパイロットとは夢にも思ってないようだわ」
肝心な当事者、パックの牛乳を飲む千紘も至って平静だった。
チラリと手元のスマホを一瞥し、すぐに視線を皆の方に戻す。
妙に確信的な言い方に、アイチューバーを投げ捨てギャルが嚙み付いた。
「なんでそんなこと分かるんだよ……。今頃あれだよ、警察の、内見? で千紘探ってたらどうすんだよ!」
「もしかして、内偵?」
「てか猫谷の大声でバレるんじゃね?」
「うっせーわ!!」
有名楽曲のタイトル名の如くアイチューバーとパリピへ吼えるギャルである。
ネコ科の大型動物に睨まれ、身を寄せて震えて見せる男子二名。怒りに油を注いでいくスタイル。
「猫谷の心配はありがたいけどね。こういう活動する時点でバレないように、あるいはバレてもある程度どうにかなるような準備はしてんのよ」
「……準備って? 夜逃げとか??」
一転、千紘の言う『準備』に語気を弱め、不安さを滲ませるネコ科のギャル。
ストロー咥えた千紘は、遠い目をして少し考える。
やがて、ギッ! と唇を歪めて鳴らし、片目をつぶって見せた。アメリカンスタイル。
なんだそれ、と呆気に取られたギャルだが、やがて誤魔化された事に気付くと、
「なんだそりゃ! お前の事だろうが! あたしに余計な心配させんじゃねぇ!!」
一気に怒りを燃焼させて、千紘へと掴みかかった。
他の男子ふたりは、何やら見せ付けられている感を覚えて、荒んだ目でそれを眺めていた。
無論アイチューバーは全て撮影していた。
◇
アメリカ、ヴァージニア州。
簡素だが機能的、最高級の調度で揃えられた、あるオフィス。
ブルネットの髪を後ろに撫で付けた、壮年を少し過ぎた白人男性が、この部屋の主だった。
それなりに年輪は窺えるが、老いた様子は見られない。静かなエネルギーに満ちた男である。
そのデスクのドックに置かれたスマートフォンが着信を告げると、発信者の名前(本名ではなく単なるラベル)を見て、やや時間を置いてからスマホを手に取り受信する。
『リゾルバインのパイロットに目星を付けました。決定的な証拠はまだですが、ほぼ確実に当たりです』
通話相手の女は挨拶もなく切り出していた。
とはいえ、通話を受ける男も、特にそれで何か言う事もない。
雇用主、側の管理者と、被雇用者。
今はそれだけの間柄だ。
「よくやった、速やかに詳細な報告を上げてくれ」
そして、シレっと当たり前のように全ての情報を寄こすよう命じる上司の男。
雇用した相手がどれだけの時間と労力を費やしてその情報を得たのか、一切顧みるような配慮もない。
とはいえ、そんな男が自分の管理者だというのは、電話口の女もよく分かっていた。
『また成果だけ横取りされるのはごめんですね。とりあえず報告の義務は果たしました。確実な情報を得られたら、またその時に報告は然るべきところで』
「国家の安全保障に関わる情報の隠匿は国家反逆罪に問われるのを知っているかな。フリーのエージェントでもそのくらいの事は弁えていたと思ったが。
これでは国家への忠誠心を疑わざるを得ない。正規局員への採用は無理だな」
『また連絡します』
淡々と弱点を突きに来る管理者の男に対し、全く動揺した様子もなく通話を切る女エージェント。
情報を握った者が最も強く、優位に立てる。例えひとつの組織と一個人という力の差があろうとも。
管理者とエージェントの女には、その共通認識があった。
翻って、女にはそれだけ情報の確度に自信があるという事にもなる。
スマホをドックに戻す管理者の男は、少し沈黙してトントントン……と机を指で叩くと、やがて再びスマホを手にした。
特別なアプリから通話機能を呼び出し、直接数字を打ち込み発信する。履歴は残らず、盗聴もされない。
コールする音が鳴る事もなく、その瞬間に回線は繋がった。
「飼い犬のひとりが当たりを引いたようだ。足取りを追い、探っていた全員の監視を。確証が得られるようなら、そっちで動いてもらって構わない。
…………意外な気遣いだな。君たちにそんな思考があるとは。だが不要だ。我々は君たちほどひとつの機動兵器に固執してはいないのでね」
耳障りな声の相手との通話でも、管理者が表情を変えることはない。
男は使い捨ての駒の事情を斟酌する気も、その都合に合わせる気もなかった。
◇
関東圏にある某私立高校では、全授業の終了後にホームルームが開かれていた。
それ自体は毎日行われていることだが、特に議題がなければすぐに散会するのが通例でもある。
生徒にとっては、すぐに部活なり帰宅なりしたいのに足を止められソワソワする、もどかしい時間でもあった。
だというのに、文化祭のクラスの出し物の選定、という面倒な議題を片づけなければならないとあっては、やる気が出ないことも夥しいというモノである。
「もうさぁ、喫茶店でいいんじゃないー? 凝ったことしても面倒くさいだけで誰も喜ばないしさ」
故に、このようなセリフに代表される安易な結論に流れるのも、当然であった。
「もうちょっと考えましょうや……。他の学年クラスもカフェ、っていくつも出ているのに。このままじゃ文化祭、喫茶店だらけになってしまいますよー」
「じゃーいいじゃーんウチも同じでー」
「部活の方も準備あって忙しいよねー」
「なんなら喫茶店も大変だから休憩所とかガチャ売り場というのもある」
「いいんじゃない!? ガチャだけ並べればそれっぽくなるじゃん!!」
「近くにベンチと自動販売機もあってさー」
「あるある、デルタの2階とかそんな感じ!!」
「ギャハハハハハ!!!!」
無気力な生徒たちであった。
担任教師はどうにかやる気を出させて見栄えの良いモノにしたかったが、クラス内の雰囲気を見る限り難しそうである。
このままでは職員会議で肩身の狭い報告をすることになる、とうんざりした顔をしていた。
そんな中、金髪ストレートのギャルも話し合いに参加する姿勢を見せず、スマホで夕食のレシピなど検索中。
実は、喫茶なら料理で参加できるな、とは思っているが、やる気があるように見えるのは格好が悪いので、何も言われなければ黙っているつもりだ。
そして千紘は、いつものようにタブレットPCでやたら複雑な何かの図面を弄っていた。
それが水素核融合炉の新型電磁波回収システムだとは誰が見ても想像すらできまい。
某企業からのお仕事である。
そんな千紘を、暇から逃れようとするように斜め後ろからぼんやり眺めていた男子生徒がひとり。
以前にスマホ連動の腕時計を直してもらった人物であるが、フとその事を思い出し、無意識に呟いていた。
「薪鳴、パソコンで何かできねーの?」
大した声量ではなかったのだが、妙によく通り、クラス内に伝わる呟き。
もはや雑談となっていた文化祭の打ち合わせも不意に静まり、セリフの続きを待つようだった。
千紘がメカに強いのは、今となっては皆が知るところだ。
「『何か』ってなんじゃい」
と、周囲に意識されているのを察し、千紘は画面から目を離さず聞き返す。今はちょっと忙しい。
不愛想な態度だが、クラスの生徒はもう慣れた。
「パソコンで、ってさー……ゲームかなんかのプレイ動画でも流すの?」
「動画配信か!?」
「アイチューバーは黙ってろ」
千紘が沈黙したままなので、別の生徒がなんとなく思い付きを口にする。
ここでテンションを上げ立ち上がるアイチューバーだったが、別方面からツッコまれショボン着席した。
「画面並べてホラー動画のお化け屋敷」
「そんな数のディスプレイをどこから持って来るか分からないし、ホラーってあんまり好きじゃないな」
「プロジェクターから投影すれば?」
「流すだけじゃなくてさー、目の前に来たらワッ! て脅かすみたいな」
「ホラー嫌いだって言ってんだろ」
「薪鳴そういのできねーの?」
「てか文化祭の事なんだから、オレひとりでやるもんじゃないだろ。
やるにしても、どういうシステムにするかにもよるし」
当初に比べ様々な意見が出るが、それでも今のところ千紘に丸投げの基本方針が強い。
千紘の方も一応リアクションするが、自分ひとりに押し付けられるのは、クラスの為にもごめんであった。
「てか薪鳴、今何やってんの?」
「お仕事」
「話し合いに参加して」
ギャル友のミドルボブの質問に、サラッと当たり前のように答える千紘。担任教師、苦笑いのツッコミ。
「仕事って?」
「今は某会社から作業アームの制御プログラムのお仕事もらってる」
続く質問には、新型核融合炉の電磁波回収システム、とは言えないので適当言った。一応マニュピレーターも使うので嘘はついていない。
「薪鳴の仕事って文化祭に応用できない?」
「ご予算は?」
「10万」
「それじゃープログラムの動作チェックくらいですねー」
「それじゃその10万でピザでも買ってカフェやるだけでいいんじゃね」
担任から現実的な金額の話が出ると、大した事は出来ない、と皆が白け気味になってしまった。
千紘は質問に答えただけで、自分が悪いわワケではないと思うが、水を差したようでちょっと悪い事したかな、とも思う。
設計図面を自宅に送りAIアドニスへシミュレートの指示を出すと、千紘は自分のバッグから白い眼球に似た機器を取り出した。
小型高出力のプロジェクターだ。
「こういうのは?」
タブレットPCと接続したプロジェクターから、教室の前にあるホワイトボードへ、リゾルバインにも使った射撃制御のテストプログラムを映し出す。
単純な3Dグラフィックのワイヤーフレームが広大な奥行きを表現し、その空間内にプリミティブな三角すいの物体が飛び回っていた。
クラス内から素直な感嘆のどよめきが上がる。
「おー、なにこれなにこれ」
「かっけー」
「これゲーム? どうやって攻撃するの??」
「誰かスマホ貸してくれる」
「あ、俺のいいぜー」
面白がるクラスの生徒の中には、単純で分かりやすい射撃ゲームを連想した者もいたようだ。
千紘はパリピの携帯を借り、自分のアレンジしたアプリをインストールさせる。
スマホカメラに三角すいのターゲットを捉え、シャッター押すと撃墜しポイント加算する仕組みだ。撃墜の結果はホワイトボード側にも反映される。5分で作った。
どこまでもシンプルなグラフィックとシステムだが、一方で明らかに既製品レベルな挙動と動きに、皆から「おお!?」と声が出る。
自分も試したい、という生徒には、ホワイトボードの端にQRコードを表示し、1日限定の時限式アプリをインストールさせる。
皆面白がってスマホ射撃を開始した。
「これを基本に、スキンでグラフィックを変えたりルールを追加するのは難しくない」
「リゾルバインとかは!?」
千紘が説明をしていたところ、アイチューバーがすかさず自分の趣味を捻じ込んでくる。
やりやがったな、と思いながらも、澄まして「何でも出来るよ」と千紘は流していた。後で一発喰らわそうと思う。
「スゲー面白そうじゃん。え? どんな形にする??」
「それならもっと広い場所でやらない? 教室狭いよ」
「これ会議室用のプロジェクターだから広い場所だとちょっと頼りないな……」
射撃ゲームに熱中する生徒たちは、千紘の提案に賛成しながらも、更にそれを大規模にやりたいという。
他人任せから、自分なりにクラスの出し物を作っていこうという気になってきたようだ。
「ていうか、それじゃ薪鳴のこれでいくの? あたしは別にいいと思うけど」
「何も出来そうにないから無理を言うつもりなかったけど、高校2年の学祭をつまらないものにしたくないね。これで行くべきじゃない?」
前髪縛りの日焼けギャルや、博士とでも呼ばれていそうなメガネの真面目男子、その他クラス内から特に反対意見も無し。
「それじゃ明日ほかに使えそうな機材持ってくるから、それからもう少し話をつめようか?」
結局自分が骨を折ることになりそうだな、とは思ったものの、それほど面倒な気はしていない千紘だった。
そして、また翌日のホームルーム。
予告通り千紘が手製の機械類を色々と持ち込み、文化祭の出し物の検討会となる。
ダッフルバッグいっぱいのアイテムに、興味津々で集まるクラス。
一応自主性はあるということで、担任も見守る構えだ。楽でいい、とかは思っていない。
千紘の提供した射撃の標的プログラムは、グラフィックやスコア加算のシステムを自由にカスタムできる。
これの外見やゲーム性をどうするか、またどのように作っていくかを話し合う企画会議となっていた。
また、1クラスでやるのは勿体無い、という話にもなり、どうせ他のクラスも適当に喫茶店とかで文字通りお茶を濁そうとしているだろうし、一緒にやろうかという流れに。
そんなワケで、隣のクラスのギャル友に話を聞きに行くギャル軍団である。
「アリサー、そっちのクラス何やるか決まった?」
「えー? 多分休憩所?」
「ギャハハハやる気ねー!」
「そういうスズっちのクラスはなにやるんだよー」
「ウチねー、なんだろ? 多分ゲーム機的な??」
そんな会話が行われた後、隣り合う3クラスの壁ブチ抜きで巻き込むことになったという。
なお、教室間の壁は元々動かせる構造だ。
大規模に凝った事をやるなら、中断トラブルに備えたバックアッププランも必要だ。と言うのは、そんなトラブルに何度も見舞われた千紘である。
一方で、予算など大して無いので、千紘の報酬を無しという事にしても、新たな機材の調達などでも金はかけられない。
そのようなミーティングを経た結論として、文化祭の出し物のコンセプトはカフェスペースとゲームの組み合わせに、これらのポイント連携。
ゲームのプログラムはひとつ10分前後で、複数を用意。これはトラブルへの備えでもある。
ギャル友達考案によるイケメン落とし。
基本的な宇宙戦争。
アイチューバーのリクエストでリゾルバイン。これは、「弟のようなお子様一般客にも良いだろう」とネコ科ギャルや一部生徒が賛成してしまった。
一般向けサファリ撮影ゲーム。
などスキンの候補が出される。
これらコンテンツの作成、カフェスペースの準備が生徒たちの主な役割となり、千紘がシステムとしてこれを構築するという事に決まった。
思いのほか凄いモノができそうだぞ、と。
後日から休み時間や放課後を使い、大勢の生徒による積極的な準備が始まった。