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ありのまま

作者: 衣谷強
掲載日:2021/11/20

 『ありのままでいい』という言葉が嫌いだった。

 自分なんか弱くて、醜くて、脆くて、汚くて、ずるい。

 そんな自分のままで良いなんて思えなかった。

 甘い戯言にしか聞こえなかった。


 でもある時教わった。

 『ありのまま』と『今のまま』は違うと。

 現状への不満も、成長したい自分も、

 全てを自分のものにするのが『ありのまま』だと。


 何て怖い言葉だろう。

 何て救いのない言葉だろう。


 消えてなくなりたいほど恥ずかしい思いも、

 殺してしまいたいほどの自分への憎しみも、

 何一つ捨てる事なく自分だと受け入れるのに、

 前向きな気持ちにも背を向けられないなんて。


 人のために尽くせた自分も、

 楽しみを独り占めにした自分も、

 美しいものへの憧れも、

 醜いものへの怒りも、

 成功者への賞賛と嫉妬も、

 傷ついた人への憐憫と優越も、

 そんなもの丸ごと受け入れたら、

 自分とは何だかわからなくなる。


 綺麗なのか薄汚れているのか、

 正しいのか間違っているのか、

 このままでいいのか変わるべきなのか、

 生き続けるべきか死ぬべきか。


 百万の言葉を費やしても、

 天才と呼べる文章力があったとしても、

 その混沌は言葉にできないだろう。

 言葉にしようとした途端に、それは形を変えてしまう。


 でも、何だろう。


 怖いのに、不気味なのに、

 このよくわからないものは、

 流動するから柔らかく、

 自分と同じ温度を持っている。

 決して思い通りにはならないのに、

 決して離れる事もない。

 優しくないのに安らぐ。

 憎たらしいのに嫌いになれない。


 これが『ありのまま』と言うなら、

 楽になる言葉であるはずがない。

 人生をかけてでも捕らえられるかどうかわからない、

 面倒で厄介で手強い敵だ。


 そんな敵と戦う事を宿命付けられたというのに、

 終わりのない戦いが目の前にあるのに、

 心はほんの僅かに熱を持ち、

 足元に落ちていた目は前を睨みつけていたのだった。

読了ありがとうございます。


己のありようを求める人に、簡単に答えなんか出ないよという言葉は、残酷なのか救いなのか。

ただ、周りが皆完璧で、自分だけが不完全だと感じてる人がいたら、ここにものたくってるのがいるよと知ってほしいな、なんて思うのです。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 無い物ねだり。 皆だって、完璧な周りの人と比べて不完全な自分を、ありのままを受け入れようとする自分を錯綜して必死。 それに気付けるかどうかですね。 ありのままという壁を乗り越えるまでは、そ…
[一言] 考えさせられる詩ですね。 Let it go. みたいにはいかないこともたくさんありますものね。
2021/11/20 20:03 退会済み
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