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ミスコン男子の部


「アーサー、明日は一緒に回ろうぜ」


 文化祭初日が終了し、明日に備えて準備をする中で真人が言ってきた。


「いいぞ。どこ回る?」


「そうだな。2日目ならミスコンは外せないな。男子の部もあってな、校内の美男美女が集まるんだ。コレを見に行かない理由はないぜ!」


「断る。僕は興味ないぞ」


 僕は真人の提案をバッサリ切って落とした。有希という特急美少女を彼女がいるのに、かわいい子を見に行く意味が何処にあるのか? 男の趣味はないし。


「それに優勝するのは有希一択だろ。そんな出来レースになんの意味がある?」


「安心しろ。対象は一年生のみだ。けど、男子の部はお前に出場資格あるからな」


「僕も?」


「そりゃあそうだろう。お前は今年ここに来たんだから。つか参加しとけ。有希もミスコン取ったし、お前も取っとけば間違いなく箔がつくだろ」


「それはそうだが……飛び込みで参加できるのか?」


「参加の申し込みは当日だ。余裕余裕」


 それなら参加してもいいかもな。僕が校内一のイケメンになれば、校内一の美男美女カップルに昇進することができるし。


「よしっ、サクッと参加して優勝するか。けど申し込みってどこですれば」


「言いだしっぺの法則でオレがやっとくよ。ちなみにな、去

年の男子の部の優勝は響也だ」


「まあそうだろうな。アイツも引くほどイケメンだし」


「引くほど中二病でもあるけどな」


 とまあこんな会話をした結果、僕のミスコン参戦が決まった。



 そして次の日。



 僕は真人に連れられてミスコン会場こと、中庭の特設舞台に来ていた。ここは本来、ダンス同好会やけいおん同好会のライブ施設として使われている。


「それでは! ただいまよりミスコン男子の部を始めます! 申し込みをされた方は舞台に上がってください!」


 どうやらジャストタイミングだったようだ。アナウンサーが舞台に上がるように指示している。


「じゃあ行ってこい! 白馬の王子様!」


「ああ。けど気軽にそれ使うなって」


 僕は真人に背中を押されて舞台へと上がった。


 舞台にはそこそこカッコいい男子がズラズラと並んでいた。しかし、自惚れではないが僕も負けてない。


「さあさあ! もう参加の方はいらっしゃいませんか! ……それでは! さっそく始めていきましょう!」


 司会の女子生徒は鼻息が荒い。まあ、目の前にイケメンパラダイスが出来上がったのだから無理もないだろう。


「まずは自己紹介をお願いします!」


 アナウンサーがそう言うと、目の前のイケメン1号くんにマイクを渡した。1号くんはそれを自信満々に受け取る。


 そうして自己紹介を開始していった。皆それぞれ、自らの名前やミスコンへの意気込みを語っていく。


「ありがとうございましたあ! そして次は、2年生でありながらこのミスコンへの参加資格のある噂の転校生! 去年のミスコン! 武藤有希さんの彼氏さんだぁ!」


 ハァハァと鼻血が出そうな勢いのアナウンサーからマイクを受け取る。マイクの持ち手が汗ばんでて気持ち悪い。どんだけ興奮してんだ。


「アーサー・P・ウイリアムズです。参加理由は有希がミスコンを取ったから。なので僕も取って、校内一の美男美女カップルになりたいと思います」


 僕はサクッと自分の自己紹介を終わらせた。逸れを合図に、観客席からテンプレの拍手が鳴り響く。よく見ると観衆の中に有希の姿が見えた。どうやら噂を聞きつけて見に来てくれたようだ。隣には楓さんと桜さんの姿も見える。


「ありがとうございましたぁ! 続いては男子限定! 肉体美のコーナー! さあさあ男子諸君、上の制服を脱ぎ給え!」


「はぁ⁉ 聞いてないぞそんなの!」


「職権乱用すんな!」


「ただのアナウンサーの趣味で草」


 なんか男子生徒が急に騒ぎ出した。コレは何事?


(コレは毎年の恒例行事なのよ。去年も似たようなサプライズが開催されてた。ちなみに去年は愛の告白選手権。あと、こうやって野次るのも恒例)


 僕の疑問に有希がテレパシーで答える。なんか当たり前のように使ってきて別の意味でびっくりする。僕はまだ上手く使えないのに。


 それにしても肉体美ね。いいだろう、1つここは見せてくれる。


「おおっとぉ! アーサー選手制服のネクタイに手をかける! いいのかぁ男子共! このままだとアーサー選手の一人勝ちだぞぉ!」


 アナウンサーが他の選手たちを煽る。それを聞いた選手たちも特に躊躇いなく制服を脱いでいった。


 そうして壇上には半裸のイケメンが並ぶ。僕がチラッと横を見ると、中々鍛えられた連中が多かった。流石はココに参加するだけはあるな。


「おほぉ! こりゃあ堪らん!」


 ナレーションはナレーションの名を捨てて変態になっていた。反応が昔の少年漫画のソレである。


 客席からも歓声とカメラのシャッター音が響く。今にして思えば女性の比率がすごく高いな。付き添いで来たであろう男子たちがどこか居心地悪そうにしているぐらいだ。


「ふう……ありがとうございました。それでは審査に移るので皆さん服を着てください」


 途端に賢者にならないでくれます? アナタは男子ですか?


 アナウンサーに戻った女子生徒は服を着るように指示をした。


「それでは結果はっぴょーーーーう! さあ、今年の男子の部を制するのは誰だ! それでは観客の皆さま! 名前が呼ばれたら拍手で投票をお願いします!」


 拍手っておい。そんなんで分かるのかよ。


「それではまず一人目〜」


 そのまま司会は続行していく。司会者が名前を上げるたびに拍手が響いた。多少の差異はあっても、音の数はパッと聞いただけじゃ判別つかない。耳のいい僕にも判別つかないんだから、普通の人ならもっと無理だろ。


 しかし


「今のは65拍手! コレはすごい数字が出ましたねぇ。現在の最高得点です!」


 司会者の女子生徒は拍手の数を把握していた。いや適当だろ⁉ こんなんで決められたら溜まったもんじゃないぞ!


(彼女は某有名司会者の孫だからね。このくらいはできるのよ。あと私はアナタにしか拍手してないから)


 有希がテレパシーで女子生徒の素性を明かす。いやいやいや、誰が信用するんですかそれ。あと、有希がここまで拍手してないのは目視で確認済みだ。


(もちろん紙を使った投票もしてるわ。けど、去年たまたまアドリブで数えたらピタリと当たったのよね。だから私と同じ不思議な力持ちってことで認識されてるのよ)


 ここでも絶妙に影響が。有希のせいで耐性がついてしまったのか。


「続いてはアーサー選手! みなさん、拍手をお願いします!」


 おっと、遂に僕の名前が呼ばれてしまった。さあどうだ?



パチパチパチパチ



 おお〜かなりの拍手が! 有希が3倍くらいの速さで叩いてるからな気もするけど、滅茶苦茶音量がでかい。


「さぁどうだどうだ!」


 司会者が耳を澄ます。頼むぞ。


「キタァ! 拍手の数は驚異の70! アーサー選手トップに躍り出た!」


 やったぜ。ひとまずトップをゲットだ。


「よ~し、このまま最後の一人行ってみよう!」


 そうして司会者は最後の一人の名前を呼ぶ。するとそれなりに大きな拍手が鳴り響いた。


「おお、これまたたくさんの拍手が! ええっと数は〜」


 ふむふむと司会者が耳を傾ける。どうだ?


「ああ惜しい! 拍手の数は68! 僅かにアーサー選手に届かず! 優勝はアーサー選手だぁ!」


 おお〜という声とともに拍手が響き渡る。よし、ミスコンゲットだぜ!


「それではアーサー選手、ミスコンを取った感想をお願いします!」


 アナウンサーが再びマイクを渡してくる。僕はヌメっとしてそうなマイクにドン引きしながらも、おそるおそるマイクを受け取った。


「よかったです。少なくとも有希の隣に立つのに箔がつきました」


 僕の簡素な感想に拍手が起こる。僕はさっさとマイクをアナウンサーに返した。案の定、マイクはアナウンサーの汗のせいでヌメっていた。


「以上、男子の部の優勝はアーサー選手でした! さあ出来レースじみた男子の部はこれにて終了! 次は皆さんお待ちかね、大本命の女子の部だぁ! ……はぁつまんな、自分にもついてる双丘にどうやって興奮すんだよ」



 色々ぶっちゃけたな! まあそうだろうけども!



 僕は最後の最後に再びアナウンサーをやめた女生徒にツッコミを入れた。


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