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アーサー対グリム&レイン


 美麗さんと亜蓮さんとの模擬戦が終わり、次はグリムさんとレインさんとの模擬戦である。


「なあ、アーサーくん。今日の所は当て鬼にしないか?」


「当て鬼って……どういうことですか?」


「オジサンとレインが鬼になって君を銃撃する。制限時間は5分って所かな? その間にオジサンたちから逃げ切ればアーサーくんの勝ち。当てればオジサンたちの勝ち。どうだ?」


 グリムさん達は、どうやら真正面から戦いたくないようだ。確かに、ガンマンが向かい合って戦うのは早撃ち対決ぐらいのもので、後は地形を利用しての戦いになるもんな。


「いいですよ。でもここじゃあ開けすぎてると思います。もっと障害物のある場所にしませんか?」


「気が利くねぇ。でもいいのかい? それはアーサーくんにとって不利な条件になるぞ?」


「僕は最初からグリムさん達に勝とうとは思っていません。ただ、グリムさん達の力が知りたいんです。だったら、グリムさん達が力を発揮できる場所が良いと思ったんです」


 今の戦績は一分一敗。端から勝率なんてどうでもよかったけど、はっきり言って勝てると思えない。だからこそ、少しでも他のみなさんの強さを知りたいと思っているのだ。


「有希、みんな。別の場所に移動したいんだけどできるかな?」


「私は別に良いけど、他のみんなはどう?」


「別に構わねえぞ。どうせ見てるだけだしな」


「右に同じく、俺はアーサーと闘ったし後は好きにしてくだせえ」


 美麗さんと亜蓮さんは了承してくれるようだ。他のメンバーはどうだろう?


「意義はない。当て鬼でもなんでも好きにするがいい」


「僕も同じだよ。風魔小太郎くんやホープはどうかな?」


 お義兄さんとメアリーさん。そして、メアリーさんの言葉に小太郎さんとホープさんも首を縦に振った。どうやら異論は無いようである。


「じゃあ、改めて男性陣はアーサーに捕まって。女性陣はどこでもいいよ」


 そう言って僕たちは再び移動した。





 気がつくと、僕たちはジャングルの奥地に立っていた。湿度が高く、じんわりと汗ばむ熱気がある。


「よし、じゃあ制限時間は5分な。オジサン達は1分間待ってから動き出すから、アーサーくんは逃げてくれ。じゃあ用意スタート!」


 そう言ってグリムさんとレインさんは仲良く数を数え始めた。この親子? は仲がなんだかんだ良いようだ。


 僕はとりあえずジャングルを北に突き進む。熱帯林がたくさん生えており、身動きがしづらい。油断してると草木に脚を絡め取られそうになる。これだと1分じゃああまり遠くに行けそうもないな。


 そう考えた僕は身を隠すことにした。見えない所に隠れていれば、ある程度は時間を稼げるだろう。後は様子見しながら適宜判断していけばいい。


 そうして僕は、全幅3メートルはある大木に身を隠した。木陰に隠れて時計を確認する。ちょうど1分が経過した。当て鬼開始だ。


 僕は木陰から覗き込むように様子を窺う。ここからならばこちらは見えにくいはずだし、いざとなればこの木がいい壁になってくれるはずだ。



 しかし───────



 僕の横を何かが掠めていったのが見えた。僕はその何かの出処を探す。すると、隠れていた大木に5センチ程度の小さな穴が開いていた。これはさっきまでなかったはず。つまり、グリムさん達の弾がここを貫通したのだ。


 僕はその事実に寒気がした。どのくらいの距離があるのかは分からないけど、この距離をここまで正確にスナイプしてきたのだ。しかも、すごく小さな穴からとんでもない貫通力を秘めているのが分かる。あれが僕の身体に当たっていたら…… やめよう、熱帯なのに寒くなってきた。



 ヒュン、ヒュンヒュン



 何か、遠くから風切り音が聞こえてくる。これは……まずい!


 なんて考えてるうちに、水を纏った銃弾が次々に木々を貫通してきた。さっきと比較して銃弾が大きくなっている。このままじゃすぐに当てられてしまう。早く逃げないと!


 僕は大木から西に逃げ出した。振り返ると銃弾が大木を蜂の巣にしていた。


 僕は森の中を掻き分けて進んでいく。辺りを見回してみても人の気配はなかった。目視できる範囲にグリムさんはいないのか? ここまで正確に撃てるのだから近くにいると思ったのに。


 ベキ、ベキベキベキ!


 僕は何かがへし折れる音に後ろを確認する。すると、水を纏った銃弾が木々を折りながら飛んで来ていた。僕は身を屈めて回避する。


 今、明らかに曲線を描いてこちらに向かって来ていたぞ。グリムさん達は銃弾を曲げることもできるのか!?


 僕は後方を確認しながら逃げつつ、向かってくる弾を避ける為に、たまに大きく横に緊急回避した。そのお陰でまだ当たらずに済んでいた。


 そして、弾の行方を追っていくと、絶えず木をへし折りながら見えなくなるまで真っ直ぐ飛んでいた。なんて威力……!

 僕は時計を確認する。当て鬼を始めてから3分が経過していた。


 そろそろこちらも反撃をしないと。


 僕は気を引き締めて反撃に打って出ることを決意する。銃弾は僕に向かって飛んできているのだ。ならば、それを弾き返してやれば凌げるはずだ。



 カチャ



 しかし、僕の背中にいきなり固いものが突きつけられるのを感じた。これは、まさか銃!?


「動くな。動けば蜂の巣にするぞ」


 僕はその声にドキリとした。この声はレインさんか? いつの間に近づいてきたんだ? まったく気がつかなかったぞ。


「ど、どうやってここまで?」


「蜃気楼を使った透明化だ。私の熱センサーでアーサーの居場所を特定。ダディが銃弾で誘導し、私がこの力で近づいて仕留める。完璧な作戦だろ?」


 そうか、最初から挟撃するつもりだったのか。グリムさんの迎撃で僕を誘導し、そっちに気を取られている隙にレインさんが近づく。なるほどね。


「所で、グリムさんの攻撃が止んだみたいだけど……」


「ああ、これでチェックメイトだからな。ダディには攻撃を止めてもらってる。さてどうする。足掻くか?」


「もちろん足掻くとも」


 そう言って僕はレインさんの銃を剣で弾いた。


「くっ、往生際が悪いな」


「ごめんね。でもレインさんにも問題がある。こういう説明は終わらせてからにした方がよかった」


 僕は弾いた銃を奪ってその場を後にする。レインさんはすかさず連絡を入れているようだ。


 時間は後1分。なんとか逃げ切れるかな?



 ヒュン、ヒュンヒュンヒュン



 さっきよりも多くの風切り音が聞こえてくる。きっと、決着がついてないと知ったグリムさんが攻撃を再開したのだ。


 僕はそれに受けて立つ。逃げるよりも目視できる分安全なはずだ!


 早速、当たらないように躱しながらも一発弾いてみる。くっ、重い! プールで水を掻くような感触だ。ただ銃弾を弾くだけじゃあ軌道を変えられないぞ。


 弾は基本的に5連射で飛んできていた。どんな銃を使ってるのか知らないけど、どうやら弾は5発装填のようだ。そして、その5発がほとんどタイムラグなしで飛んできている。全部弾くどころか躱すのさえ困難じゃないか。


 しかし、残す所は後30秒だ。この調子ならいける。


 な〜んてフラグを建てたのがよくなかったんだろうね。いきなり真横からロケットランチャーが飛んで来た。


 自分を中心に、つんざくばかりの炸裂音が響いた。


 「ゲホッゲホッ」


 然気のおかげで痛くはないけど煙が辛い。


「アーサー。まさかお前がブーメランの使い手とは思わなかったぞ」

 僕は咳き込みつつも声のする方へと顔を向ける。するとそこには、自分もロケットランチャーの埃を浴びて真っ黒になったレインさんがいた。


「ブーメランの使い手ってどういうこと?」


「お前は私の詰めの甘さを指摘したくせに、私のことを見逃しただろう。あれがブーメランじゃなきゃなんだ」


「でも、武器は取り上げたし……」


「あれだけしか武器を持ってないわけないだろうが」


「た、確かに…… でもそのロケットランチャーはどこから?」


「これか、これはダディの『クラウド』から引っ張り出してきた。『クラウド』っていうのは武器をしまっておく雲のことだ。スマートフォンのサービスからもじっている」


 いやもじってると言われても。詰まる所、雲型の武器庫を持ってるってことでいいのかな?


「それで、参ったするか?」


 レインさんはどこから取り出したのか、マシンガンを構えながら尋ねてきた。あんなこと言ったせいでまったく隙がない。というか


「君たちの攻撃を喰らってるからね。僕の負けだよ」


 僕は聞かれるまでもなく負けを認めるつもりだった。この勝負は最初から2対1なのだ。レインさんの攻撃を認めない道理がない。


「ダディ、アーサーが負けを認めたぞ」


 レインさんは耳につけた小型の無線機でグリムさんと話しかける。その声色は勝てたことに喜んでいるのか、少し嬉しそうな印象だった。

思ったよりも長くなってる『進人狩り』シリーズ。おそらく、次がラストになると思います。

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