見かけ倒しの死神
「あれ? ホープくんじゃん」
死神に対して裕大が驚く。なにその名前? どちらかと言えばディスペアとかだろ。
「裕大、知り合いなのか?」
背中合わせの響也が尋ねる。
「ああ、前に進人狩りで集まったときに見たんだよ。そんときは髑髏してなかったけどな」
「つまりは味方?」
「なあ鬼ども! てめぇらコイツのこと知らないだろ?」
裕大が鬼どもに尋ねる。
「ああ……まさか死神が存在するとは」
「そもそも、死神ってワイらの敵ではないのか?」
「少なくとも、アタイたちは初対面さ」
それに対して、三者三様が各々の意見を返してきた。とりあえず、敵じゃなさそうなのは分かった。
「……」
死神くんは手をグーパーさせて体調を確認してるようである。やる気はあるみたいだ。
そして死神は鬼たちに顔を向けた。こっからだとよくわからないけど、じっと相手に視線を据えている気がする。
「お、やるのか?」
裕大が死神に期待の視線を向ける。それに対して、チラッと死神が視線を送ると
ばっ、ばばっ、ばっ
突然ジェスチャーを取り始めた。た、戦うんじゃないのか?
「アンタ、何してるんだ?」
河童がその様子に引きながら尋ねる。どうやら相手も意図を図りかねているようだ。
死神は尚もジェスチャーを続ける。よくよく見てみると、まずは自分を指差し、その後に鬼たちに指を指してから、頷いたりしていた。
「お前、俺たちの仲間になりたいのか?」
「……!」
赤鬼の言葉にホープがコクコクと小さく頷く。やっぱりコイツ敵じゃねぇか!
「おいおいホープさんよぉ! 流石にそれはないんじゃねえの?」
「そうだ! 率直にダサいぞ!」
裕大と響也が滅茶苦茶に言う。優太はええ……って言葉が出そうな程に困惑していた。でもやむなし。
「ならば実力を測らせてもらおう。弱い者は、これからの戦いについてこれぬからな」
赤鬼が提言する。そういえばコイツ、いつの間にか腕が治ってないか?
「ほんならさっそくだけど、そこの人間ども黙らせてよ。魔族なら、この任務の重要性ぐらい理解してるでしょ?」
青鬼が嫌味たらっしい口調で指示する。
「そうそう。早く帰ってご飯食べたいし」
黄鬼がカレー食べながら……カレー食べんな! 緊張感なさすぎだろ! つーかそれはご飯じゃねえのか!
「は、早くしないとさっきの人が……」
黒鬼がオドオドしながら指摘する。なるほど! むしろ死神引き延ばせ!
しかし死神は溜息をつくると、何処からかドでかい鎌を取り出した。おいおい、もう少し粘ってくれよ。時間稼ぎにも使えねぇじゃねえか。
そして、俺たちに向き直り鎌を構えると──
「貴様、仲間になるんじゃないのか!」
後屈し、仰向けの姿勢で鬼たちに突撃した!
赤鬼が真っ当な激怒をする。コイツ、さっきから行動が滅茶苦茶すぎないか?
「やれやれ、ちょっとお相手しましょか!」
青鬼が棍棒を担いで向かっていった。
「せえっの!」
「……!」
大鎌と棍棒が激突する。さあ、どっちが撃ち勝つ?
「そーらっ!」
「……⁉」
死神が棍棒に撃ち返されて吹っ飛んでいく。そしてそのままビルに激突すると、ぐったりと項垂れた。
よ、弱え〜
信じられない弱さだ。コイツ、マジで口だけかよ。いや、口すら出してないからそれ以下だ。
「なんだ貴様は? 弱すぎないか?」
赤鬼が困惑した顔をする。いや、この場にいる全員がそんな感じだ。
「あんさん、そない程度なら出しゃばらん方がええよ」
うざったい感じの青鬼の嫌みも、めっちゃ親切な助言に聞こえる。いやホント、おっしゃる通り。
「何者か知らないが、よくやった!」
すると何処からか女性の声が聞こえてくる。あれ? この声どっかで聞いたような……
「ぎゃあ! ぐわっ! ぶや!」
なんて考えてると、悲鳴と共に銃弾が妖怪たちに撃ち込まれ始めた。こ、今度はなんだ!
「旋風剣!」
さらに、渦巻いた強風が妖怪たちを巻き込んでいく。コレはさっき見たやつ!
てことは!
「お待たせしました!」
やっぱりそうだ! アーサリンさんが円卓の騎士を連れて来たんだ!
ビルの上には、円卓の騎士たちが準備万端で勢揃いしていた。そしてその中から、軍人の格好をした子が銃撃をしている。確か名前は美香さんか。
「す、すごいカオスになってるわね……」
そして、その後ろから武藤が姿を現した。
「というか、アーサーいなくない? どこ行ったのよ」
武藤がアーサーを探してキョロキョロする。そういえば、アイツと天狗はどうなったんだろう?
「アナタは……!」
鬼たちが武藤の姿に驚く。武藤のそっくりさんがアイツらの親玉なんだっけ?
「美香さん、さっきも言ったけど殺しちゃダメよ。半殺しまでに留めて!」
「了解!」
美香さんは威勢よく返事をすると、銃弾をばら撒きながらビルから降下し、ガンガン妖怪たちをぶった斬っていく。この子、初陣だろうにまったく躊躇がない。
「コイツ、マジで容赦がねえ!」
「逃げろ! 殺されるぞ!」
バイクに乗ってた魔族たちがバラバラに逃げ出す。やっぱりこいつら、鵺だの猫又だの生き物ばっかだな。から傘小僧とかぬりかべとかいないのか?
「安心しろ。命までは取りはしない。命令通り半殺しにするだけだ」
美香さんがかっけえ銃を向けて宣言する。まずい、俺の中に潜む厨ニが疼いてきやがった。
「やはり、あの銃は反則だよ!」
「ド派手だ……」
馬鹿共も俺の気持ちに同意してくれる。アレ見て興奮しない男なんて……
「へえ、便利そうだね」
いた。優太はあんまり興味なさそう。
「ったく美香の奴め。私の活躍の場を奪いやがって」
清田が不満そうに刀をしまう。唇を尖らせて見るからに不満そうだ。
「う〜緊張する! コレが戦場の空気!」
「気を緩めるなよ。さっきの武藤の言葉を忘れたのか」
「覚えてますよ〜」
ソソさんはなんとも緊張感に欠けている。反対に他の子は、緊張気味だったり美香さんの動きに引いてる感じだ。
……大丈夫なんだろうか? さっきみたいに出オチになって、むしろピンチになる可能性も……
そういや、さっきの死神はどうしたんだ?
俺は死神がもたれたビルに視線を移す。
そこで見えたのは、黒いローブの女と死神が一緒に消える所だった。
あいつ、本当に何だったんだよ……




