表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
117/142

強襲


 数時間前



「よっし、僕の勝ちだね!」


 レースで一位になった優太が軽くガッツポーズを取る。


 僕に響也、真人、優太、そして裕大の5人は、アーサリンさんの護衛として真人の家に集合していた。


 ちなみに見張りは雫さんがやってくれている。野郎ががん首揃えて見てたら起きるに起きれないからだそうだ。


 なので僕らはたまに様子を見つつも、基本的にはリビングでレースゲーム大会になっていた。


 アーサリンさんはあのまま目覚めることなく、今もベッドの上で眠っている。明日までに目覚めないようなら、病院に連れていくことになるだろう。


「優太……お前上手ぎないか?」


 そのあまりのドラテクに僕は驚く。僕だってそれなりにやり込んでるんだが、ここまでほとんど優太が一位だ。


「なんだアーサー知らないのか? 優太はカートやってんだぜ?」


 僕の疑問に裕大が答えてくれる。


「なるほど……だからこんなに上手いのか」


「ありがとう! 君にそう言って貰えると嬉しいな!」


 優太が嬉しそうに笑う。なんか、親に褒められた子どもみたいだ。


「アーサーは……まだ運転できないよね」


「そりゃあな。免許持ってないし」


「そうそう、優太もアーサーもバイクの免許取り行けよ。一緒にツーリングしようぜ」


 裕大が肩を組みながら言う。僕はともかく、優太が持ってないのは意外だ。


「悪いな裕大、バイクの免許は取る気はない」


「僕もだね」


 それはそれとして、僕らはノーを突き付ける。


「なんだよ連れねえな。俺たちとツーリングする気がないのか?」


「そんな訳ないだろ。ただ僕にバイクは似合わないんだ。バイクってワイルドな感じするだろ? 白馬の王子様のエレガントさとは水と油だ」


「僕の方も、バイクより車の方が性に合ってるかな」


「うーん、言われてみればそうかもな」


 裕大が僕たちの意見に納得する。白馬みたいにエレガントに乗れるなら、僕だってバイクに乗ってみたいさ。


「だから免許取ったら助手席に乗せてあげるよ。僕とアーサーの運転を味合わせてあげる」


「だったらいっそ、サーキットでバトルしようぜ。全員でスポーツカー買ってさ」


 真人が中々ぶっ飛んだ提案をしてくる。スポーツカーってけっこう高いだろ?


「ほう……面白そうだね。その際はベンツで参戦しよう」


「なら俺はランボルギーニだな。ド派手でカッケェ」


「僕はポルシェ。あの見た目がかわいくてね」


「んだよ、どいつもこいつも外車外車って。GT−Rはどうしたよ。日本が世界に誇るスポーツカーだ」


 しかし思ってたのとは裏腹にみんな乗り気である。まあ、バイクを買って乗り回せる奴らだからな。それも可能なのか。


 てか


「みんなスポーツカーに興味あるんだな。僕はさっぱりだぞ」


 そもそも3人のスポーツカー談義についていけない。農道のポルシェの話ならまだできるんだが。


「優太が好きだからね。一緒にサーキットに行くうちに自然と覚えてしまったのさ」


「ああ〜そういう。……ちなみに、なんで優太はカートを始めたんだ?」


「実は昔、迷子になってるのを助けて貰ったことがあるんだ。そのときに助けてくれた人と車が格好よくてね。こんなふうになりたいって思ったんだよ。それで父さんに頼んで始めたんだ」


「なるほど、憧れは止められないって奴か」


「そんな所だね。いつかその人と、一緒に走るのが夢なんだ」


 優太は夢見る少女みたいな顔をする。男とはいえ、こんなかわいい子に思われてるなんて幸運な奴だ。


「かぁ〜甘酸っぺえ。聞いてるこっちが赤くなりそうだ」


「裕大はそういうの縁なさそうだもんな」


「はっ、アーサー舐めんなよ? 俺にだって話せる女子ぐらいいるんだぜ」


「え⁉ お前に⁉」


 あのガリ勉くそ真面目に彼女がいるとか嘘だろ⁉


「別にいてもおかしくないだろ? なんでそんなに驚いてんだ?」


「そうだね。むしろ今まで話を聞かなかったのが嘘みたいだ」


「小耳に挟んだ情報によれば、地味目な女の子に粉をかけてるとか」


「あ、それなら納得」


「おい! どういうことだてめぇ!」


 裕大が僕に突っかかってくる。よかった。あの真面目くんは今も健在なようだ。





「さて、そろそろ飯にするか」


 それから何戦かした後、時計を確認した真人が提案してくる。現在の時刻は午後8時。ご飯を食べるにはいい時間だ。


「よ、待ってました!」


「ふむ、休憩を入れるにも丁度いい頃合いだ。それで真人、今日のメニューは何かな?」


「それが実はなーんも買ってきてねんだ。アーサリンさんを連れて帰ったからな。だから出前でも取ろうぜ」


「ならピザか、寿司になるかな。いずれにしろ、出前なんてあまり取らないからワクワクするよ」


「それより金足りるか? 学生が取るには高けえだろ?」


「そこは心配いらない。アーサリンさんが稼いだ賞金があるんだ」


「賞金って進人狩りの奴か?」


「そう、よく分かったな。アーサリンさんから使ってくれって言われてるから、遠慮なく使わせてもらおう」


「ならいいが……」


「なんだよらしくねえな。派手に使っちまおうぜって言いそうなもんなのに」


「流石にそれは俺を馬鹿にしすぎだぞ」


 真人と響也、そして裕大が出前を取る流れで話を進める。その2つなら僕はピザがいいな。


「んー僕は鍋がいいなぁ。寒くなってきたし、具材切って入れるだけだから簡単だし」


 優太がその流れに逆らって意見を述べる。


「あー鍋か。アーサリンさんのことも考えるとそっちもアリだな。買い出し行くのがダルいけど」


「なら闇鍋しようぜ! それなら買い物行くモチベも上がるだろ!」


「裕大、変なもの入れたら絶交だからな」


「なあ真人? 俺に対しての信用低くね?」


 なんて僕たちが、今日の晩ごはんについて話していると



 パリン!



 いきなり、ガラスの割れる音が聞こえてきた。


「な、なんだ⁉」


 真人が動揺して声を上げる。


「2階からみたいだ……」


 優太が音の居所を教えてくれる。いま二階にいるのはアーサリンさんと妹の雫さんだ。


「行くぞアーサー!」


「ああ!」


「待て! 僕も行くぞ!」


 裕大に言われて僕たちは部屋へと急ぐ。その後を、響也もついて来てきていた。


「雫さん、アーサリンさん! 入ります!」


 そして部屋へと到着すると、ノックもせずに扉を開ける。



 すると中には、眠っているアーサリンさんと震える雫さん、そして()()()()()()()()がいた。



 それだけでも驚きだが、その男はトマトみたいに真っ赤な顔と丸く長い鼻を持ち、手には羽でできた団扇を持っていた。


 そう、その姿はまさに──



「天狗⁉」



 僕たちはその姿に驚かされる。魔族とは何度か対峙する機会があったけど、まさか本物の天狗が現れるとは。


「雫さん、伏せて!」


 だがそんな感慨に浸ってるわけにもいかない。裕大が雫さんに指示すると、何処からかクナイを取り出し天狗に襲いかかる。


 天狗はそれにニヤッと笑みを浮かべると、ボワンと煙を上げて消えてしまった。


 そして、狸の姿で窓から逃走する。


「待て!」


 裕大がすぐさま後を追いかける。アイツに掛かれば、すぐに狸は捕まえられるはずだ。


 ん? そういえば響也はどうしたんだ?


 いつの間にか着いてきてた響也がいなくなっている。こういうの好きだろうに見に来ないとは珍しい。


「雫さん、一体何があったんだ?」


 僕はベッドの隅で震えてる雫さんに質問する。


「い、いきなりガラスを破って入ってきたの! そして最初はタヌキさんだと思ったら天狗になってそれで……」


「とにかく、無事でよかった」


 パッと見る限りでは雫さんにケガはない様子である。心の方にダメージはあるかもしれないが、そればっかりは仕方ない。


「んーどうしたんですか」


 なんてことを考えていると、目を覚ましたアーサリンさんが尋ねてきた。


「それがね! 天狗があなたの部屋に侵入してきたの!」


 雫さんが興奮気味にアーサリンさんに話す。


「て、天狗? なんですかそれは?」


 アーサリンさんはピンと来ていない様子である。そうか、宇宙人だから知らないのか。


「アーサリンさん、体調は?」


「そうですね。前後の記憶が曖昧ですが、今はなんとも」


「それはよかった。ならさっそくで悪いですがお願いがあります」


「分かっています。雫さんを守るのですね」


「はい。僕たちはあのタヌキの正体を突き止めたいと思います」


「分かりました。ですがその前にすいません。できれば飲み物を取ってきて貰えませんか。喉がカラカラで」


「ええ、いいですよ」


 僕はアーサリンさんの願いを聞き、リビングに戻る。



 しかし扉を開けた瞬間、その願いを叶えることはできなくなった。



 なにせ扉を開けた先に、縄のようなモノで拘束された優太と真人が見えたからだ。さらには響也が、普段から持ち歩いてるナイフで妖怪共と睨み合っている。


「来たぞ! 気を引き締めよ!」


 二人を拘束している妖怪共の一人、どう見てもさっきの天狗がこちらに敵意を向けてくる。


 まさか、さっきのは僕たちをおびき出す囮だったのか? 狙いはアーサリンさんじゃない?


「アーサー、助けて!」


 いや、考えるのは後だ!



「ブラッド・パージ!」



 僕はすぐさま力を解放する。そして


「響也! ナイフを!」


「ああ!」


 響也の投げたナイフで妖怪に斬りかかった。


 妖怪たちはすぐにその場から逃げていく。僕はすかさず真人たちに近寄ると、ナイフで縛られた縄を切った。


「アーサーすまない。すぐに気づいたんだが、僕に力が無いばかりに……」


 僕の後ろをついて来た響也が申し訳なさそうにする。


「それはいい。それより早く真人たちをここから逃すぞ!」


「そう都合よく行かせると思うか?」


 すると天狗が、僕たちの会話に横槍を入れてくる。


「行かせるんだよ。死にたくなかったら大人しくしてるんだな」


「笑止。ウヌらこそ大人しく来てもらおう」


「場所によるな。何処に連れて行く気だ?」


「天敵に語る口は持たない主義だ。聞きたければ力尽くで来るがいい」


「いいだろう。なら!」


 僕は瞬時に光となって、念の為持ってきていたエクスカリバーを手に取った。刀身は僕が握ることで白銀の輝きを放つ。


「これが、我らが天敵の力……!」


 天狗は僕の放つ輝きに慄く。


「どうした? 威勢がいいのは口だけか?」


「戯言を。我らは正義のために最善を為すだけ! 皆のもほ恐れるな! 大義は我らにあり!」


 その天狗の鼓舞を合図に、餓鬼だの鬼だの化け狸だのが襲い掛かってくる。


 僕はそれに正面から立ち向かった。それと同時に、響也たちがリビングの外へと逃げていく。


「正義……人を襲っといてよく言ったもんだ」


 僕は襲い掛かってくる奴らを剣の平で撃退していく。ここは真人の家。奴らの臓物で汚す訳にはいかない。


「なら正義であれば、魔族を殺すことは正当化されるのか!」


 妖怪たちを掻き分けて天狗が団扇で攻撃してくる。金属でできたそれは、僕の剣と交わって火花を散らした。


「それは魔族が悪いことしたからだろ。人間だって悪いことをすれば罰を受ける」


 団扇と聖剣で撃ち合いながら会話を続ける。僕のエクスカリバーのやり合えるとは中々の業物らしい。


「それは敵として産み出され、何をせずとも迫害されたとしてもか! ならばウヌの守りたい女も死なねばなるまいな!」


「有希を罪人扱いするな!」


 僕は大きく剣を薙ぐ。お前らのせいで有希は命を狙われる羽目になってるんだ。責任転嫁するんじゃない。


「魔族は生まれたことが罪とされるのだ。罪を犯したのなら、罰を受けねばならぬのだろう?」


 天狗は嘲るように言う。意向返しでもしたつもりか。


 だが


「なら有希は違うな。彼女は魔族じゃない」


 残念ながらその意向返しは通用しない。先の戦いで魔族の特徴は把握済みだ。


「違うのか? ……なるほど、どこまでもあの人を否定するつもりらしい」


 怒りからか、天狗はギリッと歯を食いしばる。


「あの人? ムトウユキのことか?」


「さっきも言ったはずだ。天敵に話す口は持たぬ」


「頑固な奴め」


「互いにな」


 僕と天狗は再び互いの得物をぶつけ合う。


 それによって生じた火花が、二人だけのリビングに舞い散った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ