ドキドキって?
4月の異動から2週間が過ぎた
新しく異動してきた2人とは、挨拶しか交わしていない
佐々木さん、32歳
私が今年33歳だから、学年で1つ年下
落ち着いてて、私より年上に見える
背高いな
スーツ似合う
あんまり笑わない
スーツが似合うと二割増でかっこよく見える
佐々木さんへの印象はこんな感じだ
でも、接点ないし
私から積極的に行くのも…ね
「これ、一緒に洗っちゃうね」
私は、自分のと後輩のいずみちゃんのマグカップを持って給湯室へ向かった
誰もいない給湯室で洗っていると、後ろから人が入ってくる気配を感じた
「あっ、すみません。すぐ終わるんで」
振り返ると佐々木さんが立っていた
「佐々木さん?」
手元にはマグカップがあった
「あの、一緒に洗いましょうか?」
「いいの?ありがとう」
佐々木さん、嬉しそうだ
「ハイ。今回だけですよ」
私はそう言うと、泡がついた手でマグカップを受け取った
そのまま、部屋に戻るのかなと思ったら、佐々木さんは喋り始めた
『 あっ、洗い終わるの待ってるんだ 』
たわいもない会話
私は洗い終わったマグカップを佐々木さんに渡して一緒に給湯室を出た
うん
ドキドキしない
佐々木さんを見上げる
やっぱり、先輩とは違う