始まりの予感
「何だか嬉しそうですね」
後輩のいずみちゃんが声をかけてきた
「えっ。そうかなぁ」
私は、掌で口を隠した
「亜耶さん、期待してるんでしょ」
いずみちゃんがニコニコしながら、さらに続けた
「亜耶さん、イケメン好きですもんねぇ。
今年こそはかっこいい人が来るといいですね。」
「うん。だって、かっこいい人が職場にいたら毎日楽しいじゃない」
私は、上目遣いでいずみちゃんを見た
「はははっ。さすが亜耶さん」
いずみちゃんは、横をチラッと見て
「去年はガッカリでしたもんね」
小声で言うと、ニヤっと笑った
隣の席には、去年異動してきた山本君が座っていた
私は大きく頷いた
4月、私の好きな季節だ。
だって、新しい出会いの予感がするから。
本宮亜耶もうすぐ33歳。
彼氏はいない
好きな人…微妙、いる、かな?
今年こそは、彼氏を作って結婚するんだ!
って毎年思ってる。
でも、現実は
彼氏いない歴もうすぐ33年
そんなこと恥ずかしくて、後輩のいずみちゃんには言えないでいる
「あっ来ましたよ」
いずみちゃんは、そう言うと入り口に目を向けた
今年の異動では、2人が入れ替わる
『 今年こそ、独身のかっこいい人が異動してきますように』
私は一度目をギュッとつぶってから、入り口に目を向けた
「あっ、あ~」
先に声をあげたのは、いずみちゃんだった
何を言いたいかすぐにわかった
ちょっとぽっちゃりとした眼鏡をかけた男の人が入っきたから
「残念ですね」
え~そうですよ。
私、スマートな人が好きだから。
でもそんなこと大人気ないから言えない
私は、曖昧な表情でいずみちゃんを見た
「2人目きた~」
いずみちゃんが小声で囁く
うん。
大丈夫、期待してないから
私は、ゆっくり顔をあげた
『 あっ』
先程の男性より、スマートで背が高い眼鏡の男性が立っている
「残念ですか?」
いずみちゃんは、私を哀れんだ表情で見つめてきた
「うーん。ねっ。中々ないよね。
さっ、仕事しよっ」
私はそう言うと、作業途中の文書をパソコンに入力し始めた
別に悪くない
結構いいじゃん
さっきの人
私は、パソコンから目をあげ2番目の彼の行方を目で追った