全部わたしに任せなさい!
たとえば人が恋に落ちる瞬間を見たら、あなたはどうする?
私、イーディスは生まれてこのかた侯爵家の令嬢イーディス・ウィーランとして生きてきた。侯爵家の一員として相応しい教育と、将来のための花嫁修業を受けてきた。当然、父が決めた幼いころからの婚約者がいるし、だから私は朝から婚約者に近づく女生徒たちをけん制するのに忙しい。
「おはようございますデイモン様」
「今日もデイモン様にお会いできて良い朝になりましたわ」
「教室までご一緒させてくださいませ」
「おはよう。いや、僕は……」
「さあ参りましょうデイモン様」
物腰だけは柔らかに、飢えた肉食獣のような目をぎらつかせて、婚約者の腕に女生徒がまとわりつく。
デイモンに婚約者がいるのは周知の事実なのに、いい度胸だ。
「あらあなたたち、私の婚約者になにか用かしら」
「イーディス様……!」
デイモンにまとわりついている女生徒たちが慌てて彼から距離を取った。そうそう、それが適切な距離ってもんよ。
彼女たちは歴史の浅い男爵家と落ち目の伯爵家の令嬢だ。素行は良いとは言えず、富豪や爵位の高い男子生徒にモーションをかけまくっている。
小蠅のような彼女たちなどに構うことなどないのに、デイモンはやさしいから、悪く言うと押しに弱い優柔不断だから、突き放せないでいる。だから付け入るチャンスがある、と思われてしまうのだ。
「ごきげんよう二コラさん、ディアナさん、ファニーさん。私の婚約者にずい分親しげでいらっしゃるのね? 淑女たるものもう少し慎みを持ったほうがよろしくてよ」
「おほほほほ……、その通りですわね、そ、それじゃ私たちはこれで……」
「デイモン様、ごきげんよう」
「失礼いたしますわ」
私がちょっと偉そうに説教したら三人は蜘蛛の子を散らすように先へと行ってしまった。私は寛大だから口頭での注意で済ませてあげるけど、他の人だとこうはいかないわよ?
「ごきげんよう、デイモン。今日も朝からたいへんだったわね?」
背は高いけれど線が細く、人に威圧感を与えない柔和さが目立つデイモンは微苦笑した。
「はは……。おはよう、助かったよイーディス。ありがとう」
「まったくもう。ああいった手合いくらい一人であしらってくださらないと困りますわ。私の婚約者ならもっとしっかりしてくださいませ」
「うん、ごめん」
しょんもりと肩を落としたデイモンはまさに雨に濡れた捨て子犬だった。こんなにかわいそかわいらしい存在に庇護欲をそそられずにいる人間がいるだろうか。否だ。これで力のある伯爵家オクスリーの出なのだから驚きだ。貴族らしい横柄さがまったく見られないのがデイモンだった。
しかし私はほだされない。すまし顔で歩いて行く。婚約者に冷たい態度を取る私、うーん実に悪役令嬢らしいわね。
「卒業まであと少しね、デイモン」
「……そうだね」
私と違って貴族らしいポーカーフェイスができないデイモンなので、哀れになるくらい沈んだ表情を浮かべている。貴族的には薄っすら笑った顔を作るのが正解なのだけれど。しょうがない子だ。半年早く生まれた姉的存在の私が元気にしてあげましょう。
「あらヘスターさん、ごきげんよう」
「おはようございます、イーディス様、デイモン様」
「おはよう、ヘスター」
ヘスターは平民だけれどかわいいし、性格はいいし、努力家だし、かわいいし。うん、かわいい。素の私ならメロメロになってだらしない顔を衆目に晒して猫かわいがりしてしまうところだけれど、ここは社交的な笑みを見せるに留めておく。周囲の目ざとい人間や口さがない根性悪がひそひそとし始めたけれど、当然無視だ。気にしいなデイモンはちょっぴり猫背になってしまっている。
「ヘスターさん、聞きましてよ。この間のテストも上位に入ったのですって? おめでとう」
心の底からの称賛だけれど、笑顔に悪どさをちょっと混ぜるだけであら不思議。皮肉っぽく聞こえちゃうんだよねー。デイモンも少しばかり表情を曇らせたのがその証拠。うんうん。
高い身分、高飛車な笑い声、吊り上がった眉と目尻、一部の隙もなく整えられた縦ロール、ときたらなにを想像するだろうか。そう悪役令嬢だ。
これぞ悪役令嬢! な容姿と、ツンケンした態度に、飛び出る皮肉、叩き付ける冷笑! 努力のかいあって、なかなかに私の評判はよろしくない。
そして悪役令嬢に辛く当たられる婚約者の隣に、平民だけれど健気で努力家なヘスターがいれば誰と誰がお似合いか、なんて火を見るよりも明らかだ。アンケートを取るまでもない。百人中二百人がデイモンとヘスターを推すだろう。かくいう私もその一人だ。
安心して、ヘスター! デイモンはあなたのことが変わらず好きだから!
話は十年前にさかのぼる。私とデイモンの父親は友人同士で、将来自分達の子を結婚させようね、と言いあって実行してしまうくらいには仲が良かった。だから家族ぐるみで付き合いがあって、私もデイモンも、互いに悪感情なんて持ってなくて、婚約しても家族か友達の延長だった。
私とデイモンの婚約のお披露目会のことだった。大人の付き合いに飽きた私はデイモンをつれて会場を抜け出した。近くの原っぱで花を摘んだり虫を捕まえたりと、およそ貴族子女らしくない遊びをしたものだ。
しばらくして会場を抜け出してきてしまったことを気にしていたデイモンが戻ると言い始めて、私はまだ遊んでいたかったから先に彼を帰らせた。でもすぐにデイモンが無事に帰れるか心配になって追いかけたのだ。
走って追いかけて、追いついたデイモンに声をかけようとして思わず隠れたのは、デイモンが見たことのない表情をしていたからだ。
デイモンは知らない女の子と話をしていた。デイモンの瞳はきらめき、頬は上気して、まるで人生薔薇色を体現しているかのように幸せそうな顔をしていた。
恋に落ちた人を、私は人生で初めて見た。そしてデイモンが恋をしたのがヘスターだった。
名前を交わして、言葉を交わして、手紙を交わして二人が愛を育んできたのを私は知っている。
たとえば人が恋に落ちる瞬間を見たら、あなたはどうする? 私は二人を応援することに決めた。
二人のためによっしゃ一肌脱ごう! と婚約解消を父に相談し、デイモンの父に婚約解消を申し出に行った。しかし、シオドアおじ様からは色好い返事がいただけなかった。
おじ様曰く、「恋愛結婚は素晴らしいと思う。だが、平民から妻を迎えるとなれば周囲から謂れのない差別や侮蔑をされるだろう。デイモンがそれに耐えられるとは思えない」とのこと。なかなか厳しい意見だけれど、気の弱いデイモンのことをよくわかっていらっしゃる。
デイモンが自分で言い出したのならともかく、私が察して婚約解消をしてあげれば、今後も甘えて迷惑をかけてしまうかもしれない、と言われてしまえばぐうの音も出ない。
聖ソリーム学園高等部を卒業するまでにデイモンが婚約解消を言い出せれば、婚約解消を考えてくださるとのことだった。
私がおじさまに婚約解消を申し出たのは中等部一年の末だった。それから五年。もう高等部三年になってしまった。
もう卒業よ、デイモン! いつ婚約解消を言い出すの?! とさすがの私も焦ってきた。婚約解消を言い出しやすいようにいろいろしてきたのだけれど……。
毎朝早起きをがんばって巻いている縦ロールを払ってデイモンとヘスターを見た。この二人、こんなにもお似合いなのに付き合っていないのである! 世の中間違ってるわね!
私はどうすればデイモンが婚約解消を言い出せるのかを考えながら教室に向かった。
***
授業が終わり大半の生徒が部活動に勤しむ放課後、私はこっそりと学園に数ある庭のひとつに来ていた。学園校舎から離れているため、生徒から敬遠されており人気がない。
ちなみに私は帰宅部で、デイモンとヘスターは乗馬部だ。今ごろ楽しく馬を駆っているに違いない。いいなあ、私も落馬したトラウマさえなければ見学くらい行けるのに。
「ごめんなさい。待たせたかしら」
「いや、それほどでもない」
裏庭ではいつものように眠たげなギル・ギッシングが待っていた。
ギルはヘスターと一緒のクラスで、ひょんなことから知り合って以来、ヘスター周辺の情報を提供してもらっている。
「あんたも飽きないな」
「自分でもそう思うわ。でもこの子たちほどじゃないと思うの」
「違いない」
ギルからヘスターが今日受けた嫌がらせリストを受け取り、目を通す。
「……呆れた。あの子たち、人の目があるのにこんなことをヘスターにしたの?」
「魔法の言葉があるからな。『イーディス様も迷惑してるのよ』」
「あー~~……」
いやあね、と私は思わず眉間に皺をよせてしまった。
「自分の悪意から犯した行為を人に擦り付けないでほしいわ」
「同感。それで、どうするんだ?」
「そうねえ……」
嫌がらせリストを丁寧に畳んで、しまい込む。どうせなら椅子に座って幽雅にお茶でも飲みながら思案したいところだけれど、この裏庭は人気がないのでベンチのひとつもありはしない。
「お茶が飲みたいわね……」
「ここじゃ無理だろ」
「そうなのよね」
「これで我慢しとけ」
そう言ってギルが投げてよこしたのは一口サイズの小さな焼き菓子だった。
「ありがとう」
そのお返しに私も一口大のチョコをギルに放った。しばし二人で無言で食べる。焼き菓子って口の中が渇くのよね。
「……やっぱりお茶が欲しいわ」
「だな」
喫茶室で待ち合わせができればいいのだけれど、特別な理由がない限り、婚約者以外の異性と二人きりになるのは避けねばならない。二人きりでなかったとしても慎みのない行動は控えなければならない。友人と気軽にお茶もできないなんて、貴族はつらいよ。
「貴族って面倒くさいわ……」
「同意する」
生活魔術で出した水で喉を湿らせて、私はやっぱりお茶が欲しいわ、とぼやいた。
ギルと出会ったのは三年前の、今日のように放課後のことだった。私はヘスターのクラスを覗いていた。ヘスターがいじめられている現場を見てしまったからだ。すぐさま助けたかったけれど、デイモンの婚約者である私がヘスターと仲良くするのは将来的によろしくないので、偶然を装って通りかかったふりをして「いやだわ、平民を相手にするなんて。ずい分お暇なのね? それともあなたたちって平民と同程度なのかしら」と顔をしかめて加害者たちを散らすくらいしかできなかった。
呼び出しを受けていびられるくらいだから持ち物や机にも何かされているのでは、と考えて教室に来たのだけれど、幸い私の考えすぎで、なんの痕跡もなく、机やロッカーを荒らされたり、ということはなかった。
胸をなで下ろして教室を後にしようとしたところに、声をかけてきたのがギルだった。眠たげな目と気だるげな雰囲気で私とヘスターの机を見やり、残念だったな、と独り言のように言ったのだ。
「ヘスター嬢は置き勉せずに毎日教科書を持って帰るから机の中は空だぞ」
「あらそうなの、やっぱり真面目で良い子ね! さすが特待生に選ばれるだけあるわ!」
うっかり言ってしまってから気付いた。
そのころデイモンとヘスターは私が偶然を装って引き合わせ、友人関係になっていた。私はデイモンを狙って彼に近付く不躾な女生徒のことごとくを威圧しては遠ざけていたので、デイモンと仲良くしているヘスターを褒めるのはおかしいのだ。貴族スマイルを浮かべながら、なんと言って誤魔化そうかと内心焦っていると、ギルが訝し気に眉をひそめて噂と違うな、と呟いたのが始まりだった。
下手に言い訳をするより立ち去ろうとした私は、逃走に失敗し、端麗な顔に似合わぬギルの押しの強さに負け、婚約破棄計画を洗いざらい吐かされた。ぐんぬう、妙な迫力に負けてしまったけれど、デイモンとヘスターの仲を邪魔するつもりなら侯爵家の権力を使ってでも止めてやるんだからっ! と覚悟を決めたのだが、ギルは意外にも協力を申し出てきた。
理由は暇だから、面白そうだから、という胡散臭いものだったけれど、裕福なだけの平民ならば何かあっても簡単に黙らせられるだろう、と本人から進言されたのもあって付き合いを続けている。
「なんだかエスカレートしてるわよねえ……。ついに器物破損にまで手をつけちゃって、まあ。犯罪だって分かってるのかしら」
「イーディス様に脅されてしかなく、と言えば通ると思ってるんだろう。学園の通報機関があるんだから使え、という話だが」
そうね、と相槌を打って、ため息を吐いたあと私は少しだけ胸を張った。
「これも私の悪役令嬢っぷりが素晴らしいからね」
「あーそーですねー」
くるくる縦ロールもいじわるな言動も婚約解消をしてもらうと決めた日から、参考図書『白百合の君』を読み込んで研究を重ねてきたのだ。成果が出て嬉しい。その反面、ヘスターには被害が出てしまっているのだけれど。匙加減がむずかしい。
「捨てられた鉛筆や破られたノートなどの消耗品はギルの実家からの試供品として補えるからいいとして、ハンカチくらいなら未だ友人枠のデイモンが贈ってもおかしくないわよね?」
「ああ、大丈夫だろう。デイモンにそれとなく言っておく」
「ありがとう。問題は奪われたブローチよね。たしか、あれは彼女が入学祝にご両親から贈られた品よ。代えがきかないわ。どうやって取り戻そうかしら……」
考え込む私をギルが眠たげな目で見てくる。
「デイモンに取り戻させたらどうだ? そうすればヘスターの好感度も上がるだろ」
「いい案だけれど、女同士のイザコザに男が首を突っ込むのはあまりよろしくないわ。ヘスター自身がデイモンに黙っていたって男に泣きつくなんて卑怯だ、とか言い出すに決まってるもの。戦いは数を揃えて行うものだし、不利ならば援軍を呼ぶのも普通だと思うのだけれど」
「戦争じゃなくて女同士のイザコザなんだろ」
「そうなのよねえ。デイモンの妻になれば嫌でも付き合っていかなくちゃならない負の部分なのよねえ。貴族社会ってどうしてこうも陰湿なのかしら。ご新規さんがなかなか現れないわけだわ」
「そうホイホイお貴族様に増えられても困るけどな」
「そうね」
肩を竦めて私は歩き出す。
「ブローチは私がなんとかしておきます。あなたは引き続きデイモンの相談役とヘスターの護衛と、当て馬役をお願いね」
「役割多くないか、おれ」
「気のせいでしてよ、ほほほ」
***
悪役令嬢としての振る舞いを練りに練って、私は無事にヘスターのブローチを取り戻した。
ヘスターからブローチを奪った犯人たちは悪役令嬢に「あらきれいね、そのブローチ」と意地悪そうに微笑まれると「おうおう、そのブローチ気に入ったからくれや」と言われたように感じたようで、おとなしくブローチを差し出してくれた。察しのいい子たちで助かったわ。
壊れていないか確認してから私はブローチをこれ見よがしにつけてデイモンとお茶をした。
「イーディス、そのブローチは……?」
「ああ、なかなかきれいでしょう? 安物みたいだけれど、二コラさんたちが私に似合うと贈ってくださったの。せっかくもらったのだもの、少しはつけてあげなきゃね?」
「そ、そうだね」
心の中の私は「気付いているんでしょ? ホラ言え! さあ言え! がんばれ!」と扇子を力一杯振りながらデイモンを応援している。
「きれいなブローチだね。見せてもらってもいい?」
「ええ、構わなくてよ」
心の中の私が大太鼓を打ち付け、ラッパを吹き、応援旗をばっさばっさと力強く振っている。がんばれ、デイモン。
「このブローチ、僕の友人のものとすごくよく似ているね。落としてしまったと言っていたから、もしかしたらこれかもしれない」
よっしゃキター! よく言ったデイモン!
「友人ってどなたかしら」
「ええと……ヘスター、だよ」
「あら、いやだわ。平民がつけているブローチとよく似ているだなんて、私の趣味が疑われてしまうわ。その安物はデイモンに差し上げます。ヘスターに見せてみたらいかがです? 二コラさんたちには悪いけれど、もう身に着ける気になれませんもの」
「そ、そう」
少し気を悪くした感じに眉尻を上げながら茶を飲む私だけれど、内心はほくほく笑顔だ。これでヘスターにブローチが戻るはず。しかもデイモンの手で。よかったね、ヘスター!
すまし顔でお茶を飲む私の向かいで、デイモンはむずかしい顔をしていた。ふふ、婚約者が悪役令嬢で嫌になってるでしょ? さあ、はやく婚約破棄をするのよ!
「――というわけで私の好感度がまたさらに下がったと思うの!」
拳を握りながら熱弁する私にギルはやはり眠そうな視線を投げるだけだ。もう、少しくらいこの喜びを分かち合ってくれてもいいじゃない。
「好感度が下がってそこまで喜ぶ人間を見たのはあんたが初めてだ」
「これで婚約解消に一歩近づいたわね!」
「そーですねー」
やる気のないギルの返事に私は頬をふくらませた。こんなにやる気がないのにどうして私に協力する気になったのかしら。
「あんたはこれでいいのか?」
ギルに問われて私は首を傾げた。
「? いいに決まってるでしょ。デイモンは大好きなヘスターと、ヘスターも大好きなデイモンと結婚できるのだもの。一石二鳥じゃない」
「……そうなのか」
眠たげな雰囲気だけはそのままに、ギルは度し難いなにかを見てしまったような、そんな表情で考え込んでしまった。
***
月日は過ぎて、あっという間に高等部三年のビッグイベント、卒業前のダンスパーティーがやってきた。
これが終わればついに卒業まで秒読みだ。デイモン、はやく婚約解消しなさい!? いつまでヘスターを待たせるつもり?!
手のかかる子どもを持った母親の心境とは今の私みたいなものだろうか。私、まだ十八なのに。
デイモンに贈られたドレスを着て、デイモンのエスコートを受ける。ヘスターはどこ? ヘスター! デイモンはここよー! 出てきなさーい!
私は貴族的微笑を浮かべて、けれど内心はおおいに焦りながらこっそりヘスターの姿を探す。ヘスターのドレス姿が見られないなんてデイモンがかわいそうだもの。ヘスターに会ったときの悪役令嬢ムーヴもきっちりシミュレーションしたから完璧だ。いつでもばっちこい! ああっ、もしかしてまたニコラたちにいじめられてるのかしらっ!
ギルがいたので私はアイコンタクトをした。
(ヘスターはどこ?! いじめられてない?!)
(ない。飯食ってる)
ギルの視線の先には美味しそうに料理を頬張るヘスターがいた。よかった。もしゃもしゃと料理を頬張る姿は小リスのようでかわいらしい。
どうやってヘスターの近くまでデイモンを誘導しようかとそわついてしまった私にデイモンが声をかけてきた。
「イーディス……。話があるんだ」
「なにかしら」
キタコレ! 婚約破棄ですね、わかります。ハイ喜んでー!
内心わくわくしながらも、私はすまし顔を貫いた。によによ上がりそうになる口角を押さえるのは大変だった。
「その……。わりと前から思ってたことなんだけれど……」
うんうん。十年前からだもんね。長いよね。
「君に縦ロールはあまり似合わないように思う」
うんうん。縦ロール似合ってないよね。私もそう思う。って今さらそこ?! そういうのは早く言ったほうがお互いのためよ、デイモン!
「あらそう。忠告ありがとう、デイモン。飽きてきたからもうそろそろやめようと思ってるの」
そもそもこの縦ロールは役作りだからね。婚約破棄されたらやめるつもりだったわよ。
「話はそれだけかしら」
もっとあるよね?! 縦ロールなんかより重要なことが! あなたの将来にかかわる最重要項目が!!
デイモンの胸倉を掴んで揺さぶりたかったが、我慢よ、私。私はじっとデイモンの言葉を待った。
「……ある、けど、ここで話すようなことじゃないから。明日にでも君の家を訪ねるよ。マーカスおじさんともきちんと話したい」
「まあ、お父様にまで? よほど重要な話ですのね。私たちの将来についてかしら? わかりました。お父様に伝えておきますわね」
内心でガッツポーズを決めた私その一が快哉を叫び、私その二とその三は泣いて抱き合い、その他の私が鼓笛隊になって騒いでる。
さすがデイモン。紳士だわ。物語みたいにダンスパーティーで私を衆目の前で婚約破棄なんて非常識なことしないわよね。えらい。
ちゃんと決断したんだね。巣立つ子を見る母親ってこんな感じなのかしら。涙腺が壊れそう。
私が目を潤ませて涙をこぼすまいとしていると、
「お待ちになって、デイモン様!」
と犯罪者たちがやってきた。なんの用かしら。
「騙されてはいけませんわ、デイモン様!」
「イーディス様は陰でヘスター様を虐めるような性根の曲がった方なのです」
「ご結婚は考えなおすべきですわ!」
ニコラたちが出した大声のせいで周囲に注目されている。大衆を味方につけて悪役令嬢の私とデイモンの婚約を解消させようって腹なのかしら。
ヘスターを虐めていたのは彼女たちだし、虐められている現場を見たのなら学園の相談機関に通報なさい。結婚は家と家の繋がりだから本人に言ってもどうにもなりませーん。両家の当主に直訴してくださーい。あと私侯爵令嬢でしてよ? そんなこと言ってタダで済むと思うの? あなたたちの発言は普通に名誉棄損です。
私が脳内で延々突っ込んでいる間にニコラたちはあることないことをデイモンに言い募る。わあ、必死だあ。ギル、まだよ。ステイ。
かわいそうに、彼女たちは私が彼女たちの悪行の数々の証拠をがっちり掴んでいると知らないのだ。持つべきものは信頼のおける秀逸な情報提供者よね。サンキュー、ギル。サンキュー、書類仕事が異様に得意な探偵さん。
ニコラたちはひとしきり自分たちの悪行を並び立てて満足したのか、デイモンにすり寄る。ハイアウトー。慎みが足りないどころか皆無。どこに捨ててきたの?
デイモンは惜しげもなく晒された彼女らの胸の谷間から盛大に目を逸らした。うん、がんばれ。
いつのまにやらギルとヘスターが並んで料理を食べていた。いーなー。美味しそー。でもコルセットがきつくて料理が入りそうもないのよね。残念。
「イーディス様がどんな方かおわかりになりましたよね」
「考え直してくださいますでしょう、デイモン様……」
「イーディス様なんかと結婚することありませんわ」
うんそーだね。デイモンはヘスターと結婚するからね。式に招待はしないけどご祝儀は奮発してちょうだい。
デイモンは彼女たちから目をそらしたまま、なんとか腕を外そうとしているが、難航している。
「君たちが言いたいことはわかったけれど、イーディスはヘスターを虐めたりなんかしてないよ。君たちの思い違いじゃないかな」
あら、彼女たちが処罰されない道を残してあげるなんておやさしいこと。それに気づけるくらいの賢さが彼女たちにあったらいいのだけれど。
「そんなことはありませんわ! わたくしたち、この目でしかと見ましたもの!」
「なら眼科医にかかったほうがいい。それとも精神科医かな」
彼女たちの勘違いということにして私に対する暴言や、ヘスターに対する虐めをなかったことにしようとしたデイモンのやさしさは彼女たちに届かなかったようだ。さすがのデイモンも救済の道を自ら踏み外した者にやさしくはない。十八年間伯爵家の人間をやってきたのだから、やはり彼も貴族なのだ。
「イーディスに対する侮辱は僕に対する侮辱と同義だ。君たちはウィーラン家とオクスリー家を敵に回したいんだね」
とはいえ、ここまで高圧的なデイモンは初めて見た。よほど腹に据えかねたのだろう。私のことでここまで怒れるなら大丈夫だ。ヘスターのことだってきっと守れるだろう。シオドアおじさま! あなたの息子はやるときはやりますよ!
「そ、そんな……」
「デイモン様……」
デイモンにまだなにごとかを言おうとするニコラ達に待ったをかけたのはなんとヘスターだった。
「二コラ様、ディアナ様、ファニー様。私を虐めていたのはあなたたちでしょう。なにイーディス様に擦り付けているんですか」
「なんですって! 口を慎みなさい、ヘスターさん!」
「わたくしたちはイーディス様に脅されて仕方なく……!」
「侯爵家のイーディス様に逆らえるはずがないでしょう!」
平民相手に気勢を盛り返した彼女たちを、ヘスターは侮蔑も露わに睨み返した。
「学園の相談機関がありますよね? 身分差に物を言わせた虐めが発覚したため、国王陛下が直々に指示して学園に設けた機関を知らないとは言わせませんよ」
「そ、それは……」
「今まで私が通報しなかったのは両親に心配をかけたくなかったからです。あなたたちが怖かったからじゃありません。ブローチを奪られたときは通報しようとしましたが、思いがけず戻ってきたのでしなかったのです。これ以上イーディス様を貶すのなら通報して今まであなたたちにされてきたことを洗いざらいお話しますけれど?」
いつもは温和に微笑みを浮かべ、儚げな佇まいでいたヘスターの剣幕に、相対している彼女たちは口ごもる。よし、今よギル!
「おれはデイモンに頼まれてヘスター嬢への虐め首謀者を探っていたが、イーディス嬢は関与していない。すべてあんたたちが自発的にしでかしたと調べはついている。証拠もすべて揃ってるが、まだいい訳してみるか?」
実際にデイモンがギルに頼んでいたわけではないけれど、友人が気を利かせたと思ったらしい。デイモンはほんのわずかに目を見開いたあと、怜悧な貴族の顔で彼女たちに告げた。
「自分たちの置かれている立場が理解できたなら、イーディスに謝罪してこの場から立ち去ってほしい。正直なところ、君たちを見ているだけで不愉快だ」
「も、申し訳ございません……」
青い顔をして謝罪をした彼女たちは我先に会場から消えて行った。明日から卒業するまで彼女たちは針でできたカーペットに座らされているような心地を味わうのだろう。かわいそうに。でも侯爵家と伯爵家から睨まれて路頭に迷うよりはマシよね?
私もデイモンも寛大ですもの。不快な思いをさせられたくらいで人の家を潰したりなんてしませんとも。ヘスターが彼女たちに罪を償わせたいと言うなら別だけれど。
人々の注目も収まったところで楽しいダンスパーティー続行よ!
「まったく! 失礼しちゃいますよね、イーディス様が虐めの首謀者だんて! 破かれたノートをこっそり買い替えてくれたり、それとなく助け船を出してくれたり、大事なブローチを取り返してくれるような方が虐めの首謀者なわけないのに!」
「え」
「あ、ヘスター、その話はまだ……」
「あっごめんなさいデイモン!」
「ちょっと待ってどういうこと説明しなさいデイモン」
慌てるデイモンとヘスターと私に構わず、ギルはデザートを食べていた。美味しそうだけれど、私はそれどころじゃなかった。
胸倉を掴んで揺さぶらんばかりの私にデイモンは情けなく眉を下げて困り顔だったけれど、本当に私はそれに構っている場合じゃなかった。
「えーと、その。悪役令嬢は君には似合わない、という話だよ」
「………」
もしかして。
ヘスターを見る。微笑ましいものを見るような困り顔で、視線をそらされた。
ギルを見る。いつものようなやる気のない、眠たげな目を明後日の方向にそらされた。
最後にデイモンを見る。やさしげな瞳が細められて、困ったなあ、というふうに微笑された。
「バレてたの?」
「えーと、最初からってわけじゃないよ?」
「バレてたのね?!」
キャー――! キャー――! 恥ずかしい! キャー――! 穴を掘ってちょうだい、深いのを! 私、埋まるわ!
がんばって縦ロールをセットしてたのに! 高笑いだって練習したわ! 姿見の前で役作りだってしたわよ!
「ばかばかばかっ! 知ってたなら言ってよ! ばか!」
「ご、ごめん。イーディスが一生懸命だったし……。でもある日いきなり小説に出てくるような悪役令嬢の振る舞いをし始めたら誰でも気付くと思うよ……?」
「ならその時点で言ってよ! 早く言ったほうがお互いの傷は浅くて済むって言ったでしょ!」
「ご、ごめん」
「わ、私も謝ります。ごめんなさい、イーディス様。その、私も気づいていたので……」
「やめて! 謝らないで! もっと恥ずかしいから! いっそ笑って! 無様な道化師を笑ってちょうだい!」
「わ、笑いませんよぉ……。イーディス様は恩人ですもの」
「落ち着いて、イーディス。僕たち以外は気づいてないから。たぶん」
「タルト食べるか。乗ってる果物が美味いぞ」
「やさしさがつらい」
私は悄然と肩を落としながら勧められたタルトを口に運んだ。もむもむ。美味しい。
「もう、これはあれね? 私の計画にも気づいてるわね?」
「き、気づいてないよ」
「な、なんのことでしょうか」
フフ、やさしいのね……。ダブルピースしながら「おれが喋りました」と言わんばかりのギルはあとでぶっ飛ばすわね……。
「その、明日おじさんと話すから……。切り出すのが遅くなって本当にすまない。どうやったら君の経歴を傷づけずに済むか考えていたんだけど、。その……あんまりにも君が楽しそうだったから」
「そりゃちょっとは楽しんでましたけれど! ええ……。わかったわ……。デイモン、ヘスターと幸せになってね」
「ありがとう、イーディス」
「ありがとうございます、イーディス様」
「いいのよ、お礼なんて。あなたたちが幸せなら私はそれでいいのだもの。結婚式には呼んでちょうだい」
デイモンとヘスターが「けっ?!」と奇声を発して茹で蛸になった。
「けっ、けけけけ、けっこんなんてまだはやいよ! そそそそそ、それに僕たち、友達で!」
「そ、そうです! 友達です! それにわたし卒業したらバリバリ働くつもりでいますので! 結婚とか考えてもいません!」
「そうだよ! 僕は父さんの後を継いで立派な伯爵にならなきゃならないし!」
うんうん、そうよね。両想いだったくせに今日まで手すら繋いでこなかったものね。私が橋渡ししなければたまたま同じ学園に通うただの同級生で終わるつもり満々だったものね。
いったいいつ交際を始めるつもりだったの? 私はそんなに気が長くなくってよ!
「見て頂戴、ギル。私の推したちがこんなにもかわいい」
「脳内が漏れてるぞ」
「こほん。デイモン、私突然の体調不良で、とてもじゃないけれど会場にいられないから帰るわ。ヘスターさん、友人としてデイモンをお願いするわ。デイモンが女性に声をかけられないように一緒にいてあげて」
「は、はい、喜んで」
「デイモン、ヘスターに失礼のないようにね?」
「あ、ああ、もちろん」
「ギルは覚えてなさいよ」
「もう忘れた。なんのことだ?」
「いい度胸してるわね」
ギルは明日一番に殴りに行こうと思うの。そんな決意を込めてひと睨みしたあと私は会場を後にした。
帰りの馬車に乗り込み窓にもたれながら、成長したデイモンに思いを馳せる。デイモンも大人になったのね。
「――なんて、息子を婿に出した母親気分に浸ってるのになんであなたがいるのよギル!」
「怒鳴るな。ほらこれ」
「はんかち?」
肌触りの良い絹のハンカチだ。渡される覚えのないそれに首をかしげる。
「泣いていいぞ」
「なんで?」
「だってあんた、デイモンが好きだったろ」
「そりゃ好きだけど、大好きなデイモンが大好きなヘスターと上手くいってなんで泣かなきゃいけないの? あ、嬉し泣き?」
「違う。自覚がなかったのか?」
「自覚?」
ギルの言葉を不思議に思った私の目からなぜか涙がこぼれた。一粒、また一粒とこぼれていって、すぐに小川のようになって頬を伝っていく。
「あ、れ。なんで……ああ、これが嬉し泣き」
「じゃねえよ」
私の言葉をギルがぶった切った。
「失恋したんだから泣くのは当たり前だろう。橋渡しまでして、むしろ今までよく平然としてたな」
「はしわたし……」
止まらない涙をせき止めようと閉じた瞼の上から貰い物のハンカチを押し付ける。秋の始まりを感じさせるような、爽やかな匂いがした。
「………だって、仕方ないじゃない。私はデイモンに恋をしてもらえなかったんだもの」
喉の奥が痛い。鼻の奥がツンとする。目の奥が熱い。
「私と結婚してもデイモンは幸せになれないんだもの……っ」
一目見てヘスターに恋をしたデイモンは、ずっとヘスターだけを想っていた。会えなくても、月に数度の文通しかできなくても、ずっと。
「私が身を引いてデイモンが幸せになるならいくらだって引くに決まってるじゃない……!」
「立派な心掛けだな。尊敬する。真似はできないが」
ギルの骨ばった手が私の頭を叩くように撫でた。やめてよ、セットが崩れるじゃない。
「デイモンは昔からやさしくて、人のことをちゃんと考えられる人なのよ。そんなデイモンが好きになったヘスターもすごく良い子で……」
ヘスターがとんでもない悪女だったら、どんな手を使ってでも別れさせたのに。ヘスターは天使か女神かってくらいに良い子で、良い子すぎて、私の出る幕なんてなかった。
「本当、損な役回りだな、あんたは。意中の人間を譲って、自分は泣くなんて。貴族らしくない、バカな所業だ」
おれは好きだけどと、下手な慰めをかけてくるギルに私は笑った。笑ったつもりだったけれど、失敗してしまった。
「おれはあんたみたいな善人じゃないから付け入るぞ。おれにしておけ。傷心を癒すために利用しろ」
「ええ……? 唐突ね」
「実は前々からあんたが好きだった」
「そうなの。知らなかったわ」
ギルの突然すぎる告白に驚いたおかげで止まった涙の残りをきれいに拭い取って、私はギルを改めて見た。
「ごめんなさいね、私素性の知れないと殿方とは防犯上、お付き合いできないの」
「ギル・ギッシング。十八才。聖ソリーム学園高等部三年。実家が金持ちの平民、って言ったろ」
「それ、嘘でしょう? 調べてもらったのだけれど、そんな平民は存在しないのですって」
ギルは黙って思案し始めた。私は濡れそぼったハンカチをポシェットにしまい、今度は自分のハンカチを取り出した。もう泣くつもりはないけれど、保険だ。
「ハンカチは洗って返すわね。ありがとう、泣いたおかげでずい分楽になった気がするわ」
「どういたしまして」
しばらく馬車が道を行くガタゴトいう音だけが私とギルの間に響いていた。
「調べさせたならおれが何者か知ってるだろ」
「さあ、どうかしら。探偵さんは素性を掴めません! って悔しがっていたけれど。
でも私、卒業したら田舎でひっそりと暮らすつもりだから、ギルがただの平民でいてくれるととっても助かるわ」
侯爵家を継ぐのは兄だから、私が結婚する意味はあまりないのだ。
デイモンの幸せはたしかに私の幸せだけれど、やっぱり選んでもらえないのは辛い。そして今は政略結婚でも、デイモン以外の隣に立つ気にはなれない。
せめて政略結婚を許容できるくらいには、ぽっかり空いてしまった胸の空洞を埋めてしまいたかった。時の流れに身を任せれば少しは楽になるらしい。
「おれの本名はジャイルズ。いちおうこの国の第二王子だ」
「まあ。王子が学園に通っていると噂だけは流れていたけれど、あなただったのね」
「知ってたくせに」
いつも眠たげなギルが拗ねたように肩を竦めた。普段から制服を着崩していた彼は当然のように正装も着崩している。息苦しいのが嫌なのだそうだ。
これが王子です、と言っても信じる人は少ないのではないだろうか。ハンカチに刺繍された王族の紋章がなければ私も笑い飛ばしていたかもしれない。
「それで、第二王子様が私になんの御用でしょう」
「あなたが好きです。結婚してください」
「いきなり求婚なんてせっかちなお方ね。まずは互いの相性を確かめるためにお友達から始めましょう」
「デイモンが関わってないと有能だよな」
「お褒めに与り光栄ですわ」
ギルがハンカチを目元に押し当てていたせいで乱れた私の前髪を払う。
「涙は止まったか?」
「ええ、お陰様で」
それでも油断はならないので手元のハンカチをしまう気にはなれないけれど。
心配そうに眉をひそめるギルに大丈夫だと示したくて笑おうとしたのだけれど、無理をするな、と窘められてしまった。
「まあ、傷心に付けこむ気は満々だが、失恋直後に他の男を見ろと言っても無理な話だ。あんたの言う通り友人から始めるとしよう」
「前半がなければなかなか良いセリフでしたのに」
残念ですわね、と私が言ってもギルは別段気にしたふうでもない。
「父の教えでな。惚れたら機会を逃さず落としに行け、だそうだ」
「……国王陛下は過去になにかあったのですか?」
「好きだった女に国外逃亡されたらしい」
「まあ、それは……。お労しいことですわね……」
現国王夫妻は仲が良くて有名なのだけれど、まさか国王陛下にそんな過去があったとは。
ほんの少しの驚きに目を見張っていると、ギルが小首をかしげた。
「とりあえず交換日記から始めればいいのか?」
「今時、交換日記をしてる子がいるのでしょうか……?」
「さあ。友人って何するんだ?」
「そうですね、まずは」
私は赤く腫れているだろう目を細めて微笑してみた。今度はうまく笑えただろうか。
「喫茶室でお茶会をいたしましょう」