第二話 冒険者登録
「……あ?」
あまりの眩しさから閉ざしていた瞼をゆっくり開ける。
ヒュウウウ、と心地良い風が吹き、アキラのミッドナイトブルーに染められた髪を靡かせる。
どうやら自分は広大な草原の上に立っているらしい、と認識すると、薄い笑みをもらした。
「おっと……」
手で口を拭うようにして口角を戻す。
「女神、スキルがどうこうっつってたな……」
そう呟いた瞬間、彼の脳内に情報が広がった。
――――――
篠原アキラ
種族:人間
年齢:19
状態:通常
スキル:【シリアルキラー】
アビリティ:【殺人衝動】
――――――
「……んだこれ?」
頭の中で展開される物騒な情報に少し引いてしまう。
それ以上のものは何も分からない。
「よくわかんねぇけど……まぁそのうちわかるだろ」
と、気にしない事に決めたアキラ。
キョロキョロと首を動かして周囲を確認すると、北の方に町があるのが見える。
「とりあえずあそこに行くか」
手癖でポケットに両手を突っ込む。
すると、ジャラ、という音を鳴らす巾着に手がぶつかった。
アキラのものではない。
見れば、中には金貨が50枚入っている。
「……どのくらいなんだこれ」
金貨一枚でだいたい日本の一万円くらいなので、50万円ある事になる。
物価もそこまで高い訳では無いので少し多めだが、武器を買い揃える事を考えると妥当な金額だろう。
◇
町に着いて真っ先に目を引くのは大きな噴水だった。
透き通った綺麗な水が噴出しており、町のシンボルになっているようだ。
町の人ではこの噴水で待ち合わせしている者も多い。
そしてその向かいにあるのはギルドだ。
剣をモチーフにしたロゴがあるので分かりやすい。
表には『冒険者登録はこちらで』と書かれた看板まで設置されており、アキラはとりあえずここで冒険者になればいいんだなと察する。
「いらっしゃいませ。冒険者登録ですか?」
「あぁ」
愛想を振り撒く美人な受付嬢に短く返事をする。
「冒険者登録の際に特殊な魔法を付加させて頂きます。これによりあなたが討伐した魔人やモンスターを個人単位で記録されます」
(魔人……? あぁ、そういえば女神の奴、勇者がどうこうって言ってたな)
「あなたの活躍によってこちらから報酬金を支払います。活躍には単純な討伐の他、住民からの依頼を受ける事もできます」
アキラは、ふんふん、と聞き流しながら同意書にサインした。
「では…『スキャン』」
受付嬢が手を翳しながらそう唱えると、紫色の靄のような現象がアキラを包み、すぐに霧散する。
「これにて冒険者登録は完了です。アキラ様のご活躍を期待しております」
ニコッ、と、受付嬢は最後まで営業スマイルを絶やさなかった。