表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

第一話 プロローグ


――天界


多くの神が棲むここでは、全ての世界が管理され、均衡に保たれている。


なかでも、魔法が存在する世界の管理は、女神・エクレアが務めていた。


「うーん……この世界、魔王が強すぎるわね」


エクレアは唸り声をあげながら腕を組んだ。


「既に勇者を三人送り込んだのに……仕方ない、もう一人送るか」


よし、と虚空で手を翳す。


分厚い本が空間に現れ、パラパラと凄まじいスピードでページが捲られる。


「えーと……あら、この子なんていいわね!」


彼女が見つけたのは、努力家でそこそこ恵まれた肉体を持つ少年。


真面目で誠実で、まさに勇者といった人物だ。


「女神・エクレアの名において、彼の者をここに召喚しなさい」


短く詠唱すると、あらかじめ床に描かれていた魔法陣が青く光り、ぼんやりと人影が現れた。


その輪郭は次第にくっきりと表れ、人影の顔が見えるようになる。


「…あ? どこだここ」


その顔に、エクレアは目を見開いた。


(やばい……召喚する子、間違えた)


勇者転生システム……いや、より正確に言えば人命を伴う神において、それはあってはならないことである。


転生は死亡後二十四時間以内の者のみできるものだ。


しかし、リスト外の者を召喚したということは……目の前にいる青年は、たった今エクレア自身の過失により、なんらかの形で無理矢理死んだのだ。


「も、申し訳ありません! あなたは私の手違いによって転生させてしまいました……」


その言葉に、青年は意外にも冷静に対応した。


「転生ィ? ンな事してどうするつもりだったんだよ」


「わ、私は全ての世界を管理する、女神・エクレアです。勇者として、本来ならば別の者を異世界に送る予定だったのですが……」


青年はエクレアへゆっくりと歩み寄る。


「元の世界には帰れねェのか?」


「残念ながら、一度召喚した人間を戻す事は、神の掟により禁じられています。あなたにはこのまま異世界へ勇者として行かなければなりません」


その瞬間、ガシッとエクレアの首が締められる。


「んがっ……」


「あぁ? てめぇのミスなんだろ? タダで行かせる気か?」


エクレアは驚愕した。


この状況において、取り乱さない冷静さと、女神である自分を恐喝する図太さに。


「ぐ……で、では、あなたには特別に、スキルと異世界におけるお金を与えます……」


パッ、と手が離される。


「ゲホッゴホッ……」


「んじゃ頼んだわ」


エクレアは、息を整えると、魔法陣に手を翳し詠唱した。


「では……女神・エクレアの名において、彼の者を勇者として世界【――――】に召喚しなさい」


青年は再び光に包まれる。


その名を篠原アキラ。


19歳にして死刑囚の男だった――。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ