やっぱりハッピーエンドで終わる
あの日の出来事を思い出すと少し鳥肌が立つが、もう終わったことだ。
私達は今日この学校を卒業した。
空は青く、太陽が出ている。
暑すぎず寒すぎず、ポカポカしてとてもいい陽気だ。
桜が舞っていて、周りからは笑い声や泣き声が聞こえる。
家族と写真を撮っている人もいれば、友達同士や先生達と写真を撮っている人もいる。
クラスで集合写真も撮った。
だけど、そこには桃香の姿はない。
あの後、桃香は学校に居づらくなったのか転校してしまった。
流石にあと少しで卒業だから転校するとは思ってなかった。
でも、そうさせてしまったのは私なのかもしれない。
桃香は転校する前、私に「ごめんね」と謝った。
そして、「元気でね!」と笑顔で言った。
それはいつも見る笑顔ではなく、何かを吹っ切れたような、そんな感じのものだった。
上手く言えないけど…。
ただひとつ言えるのは、謝ったのもあの笑顔も嘘ではないと言うこと。
作ったものではないと言うこと。
それだけはわかる。
私達は友達にはなれなかったけど、それで良いんだと思う。
あの後、悠斗から本当の事を聞いた。
本当は桃香が自分に好意があるのを知っていたんだとか。
小さい頃からあんな感じで、悠斗と仲良くする女子に嫌がらせをしていたらしい。
それを知っていたからあえて桃香の事を拒まず、私に危害が及ばないように近くで見張っていたらしい。
その事を私に言ったら私が心配するだろうと。
平気だからと言うだろうと…。
私がキスをしていたと誤解したあの時は、桃香がデートしてくれれば、今日1日彼女にしてくれれば美雨には何もしないと言ったかららしい。
そして、彼女だからとキスをしようとしたが、悠斗が拒んだらしい。
それをたまたま私が見てしまったらしい。
ほんと、なんてタイミングの悪いこと。
それから、あの日、花瓶の事を知っていたのは、杏奈から聞いたらしい。
なかなか戻ってこない私を探しに行って、教室前に私の鞄が落ちているのを見つけ、何かあったんだと私を探し回っていたらしい。
その時に悠斗に会い、花瓶の事や、美雨がいない事などを話し、2人であちこちの教室などを探してくれたらしい。
悠斗とのその後?
それはもちろん…
「美雨!」
「杏奈!」
「卒業おめでと!」
杏奈は私に抱きつく。
「杏奈もおめでとう!」
「ま、大学も同じだから寂しくないけどね!」
そう、私と杏奈は同じ大学に進む。
それから…
「おい、俺も忘れんなよな」
コツンッと頭を叩かれた。
「悠斗!」
そう、悠斗も同じ大学に進む。
「堀内、あんま俺の彼女にくっつかないでくれる?」
「はいはい、ごめんなさいねー。ほんと、悠斗くんは美雨の事大好きだよねー」
ニヤニヤしながらからかいまじりに杏奈は言う。
「当たり前だろ?な?」
いや、私に同意を求められても…。
私と悠斗はまた付き合うことになった。
「私の目の前でイチャイチャしないでもらえます?
あーあ、私も彼氏ほしーい!」
意外に面倒見もいいし、顔もスタイルもいいから大学でもモテるだろう。
あ、杏奈ってモテるんだよ?
告白だって何回もされてるんだよ?
ただ、好きな人と付き合いたいからーって高校生活誰とも付き合わなかっただけで。
まぁ、そんな杏奈が私は好きだけどね。
本人には言わないけど。
「美雨!写真撮るぞ!」
いつの間にか、悠斗と杏奈は大きな桜の木の下に移動していた。
「美雨!ほら早く!愛しの彼氏が待ってるよ!」
杏奈はケータイを持ち、すでに構えている。
愛しのって…。
まぁ、合ってますが。
私は走って2人の所に向かう。
私達は今日卒業した。
卒業まで色々なことがあったけど、それも今思えばいい思い出だったのかもしれない。
やっぱり最後はハッピーエンドじゃなくちゃね!
ハッピーエンド…だよね?
え、だよね?
本当にこれで終わりだよね?
続く!とかないよね?
終わり…だよね?だよね!
はい、終わりです。