口実
わーお、なんでこいつがいるのかなー?
はい、家まで来おったよ。ついに家まで来たよ!
目の前に立っている悠斗を見て思った。
「悠斗くん、今晩は。外じゃなくて家の中で話したら?」
ふふっとご機嫌に笑いながら言うお母さん。
「今晩は。お邪魔していいんですか?」
「ええ、もちろん!」
実は私の両親は悠斗との事を知っていて、お母さんもお父さんも悠斗の事を気に入っている。
だからこそ、悠斗と別れた事を言えてなかった。
お母さんは私と悠斗がまだ付き合っていると思っているから、悠斗が来て嬉しいのだろう。
「お母さんいいよ!外で話すから!」
そう言って悠斗を引っ張り、近くの公園にいった。
「なんなのいきなり家に来て!」
「ごめん…」
私が怒鳴り気味に言うと申し訳なさそうに謝った。
「でも、こうでもしないと話してくれないと思って」
は?
「美雨、学校で俺の事避けてるじゃん?」
避けてますが?
毎日毎日話しかけてきて…
私は話すどころか顔も見たくないのに!
「家まで行けば話せるかなって…」
「ストーカー」
「ストーカーって…。それはあんまりだろ」
ストーカーじゃなきゃなんなのよ。
ストーカー以外の何者でもないわ!
「…で?話ってなんなの?もう話す事は話したと思うけど?」
「話があるって言うのは口実で…」
はぁ?
「ただ美雨と一緒にいたいだけなんだ」
うん。
は?何言ってんの?
「何言ってんの?理解できないんだけど」
「言っただろ?俺は美雨を好きだって」
「…」
「俺、諦めるつもりないよ?」
「そんな事言われても…」
「いーよ、もう1回好きにさせるから」
は?
「と言うか、本当は美雨だって俺の事まだ好きだろ?」
ジリジリとこちらに近づいてくる悠斗。
私は後退りするが、悠斗に腕を掴まれ、引き寄せられてしまった。
「ねぇ、本当の事言って?」
顔を近づけて言う悠斗。
「まだ俺の事好きでしょ?」
そう言って悠斗は私にキスをした。
私の事をなんでも見透かしている悠斗に腹が立った。