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拉致された


「ごめん、ごめん、ごめんなさーい!」



「嫌です」



「本当に、昨日置いていってごめんなさい!」



朝っぱらから杏奈は両手を合わせて謝ってきた。



「杏奈が、置いていったせいで私は酷い目にあったんだけど」



「いや、マジで!ごめん!…あの、だから、宿題見せてくれない?今日当たるんだよー」



うん、だよね。

だから謝ってるんだよね?

謝ってくる事知ってたけどね?



「はぁ…、次は許さない」



そう言って宿題のプリントを杏奈に渡した。



「ありがとー!神様、仏様、美雨様!」



大袈裟な…。

ん?


杏奈はプリントを写しながらチラッとこちらを見た。



なんだ?

言いたいことがあるなら言えばいいのに。



「な、何?私の顔になんかついてる?」



「そーいえばさー、昨日、酷い目にあったって言ってたけど、何があったの?」



あー、それね。

んー、どうしよう。ここ教室だしなー。

幸い今は悠斗はいないし、ここで話してしまおうか。



「あー、実は…」



杏奈に話そうとした時、ポンッと後ろから誰かに肩を叩かれた。



げっ!



振り向くと、そこには悠斗が立っていた。



「おはよ」



「お、おはようございます…」



私はぎこちなく挨拶をした。



なんで挨拶してくんの?

今まで別れてからしてこなかったじゃん!



フイッと前を向き顔を合わせないようにする。

すると、私の隣の席に座り、じーっと私を見てくる。



し、視線が痛い。

なんなの?何がしたいの?

漫画で表現するなら、私は今、ダラダラと大量の汗をかいているだろう。

それぐらい汗をかいている、気がする!



気まずい、気まずすぎる!



杏奈はと言うと、私が動揺しているのを見てみぬふりをし、せっせとプリントを写している。



おーい、気づけー。助けろー!

と念を送るが、ちっともこちらを見ない。



おのれ、杏奈め…。



「あのさ…」



は、話しかけてきたー!



話しかけてきたよ、こいつ。



「な、何でしょうか…」



横を見もせず返事をした。



「美雨、こっち見て」



「名前で呼ばないでもらえますか?馴れ馴れしいですよ?」



クルッと横を向き、笑顔で言う。



「美雨、そーゆーのやめろよ。傷つく…」



知らねー!知らねーよ、お前が傷つくとか!

傷ついたのは、心ズタズタにされたのは私だわ!



「…用がないなら」



そう言って席から立ち上がる。



「用ならある!」



と、パシッと腕を掴まれてしまった。



私は凄い勢いでキョロキョロと周りを見る。



「桃香はいないよ」



は?

バッと悠斗を見る。



「桃香は今日休みだって。つか、やっとちゃんとこっち見てくれた」



は?いやいや、聞いてないし。

てか、何で休みとか知ってんの?

あー、はいはいお付き合いでも始めたんですかねー。



「話がある」



「私はないですが?」



「俺があるんだよ」



「はぁ、何ですか?」



「ここじゃちょっと…。ちょっとこっち来て」



「えっ!うわっ!」



グイッと腕を引っ張られ、拉致されてしまった。

解こうにも腕を痛いぐらいにがっちり掴まれていて解けない。



抵抗する私をほっといて、ズンズンと廊下を歩いていく悠斗。



ガラッ



扉を開け、私を中に入れた。



ガチャっと鍵を閉める音がした。



連れてこられたのは誰もいない資料室だった。



はい、ここで思うよね。

どうして資料室に鍵がかかっていないのか!

そーれーはー、うちの学校の資料室は図書室的な感じで、生徒も普通に出入りできるのです!



……誰に説明してるんだろ、私…。



と、心の中で1人ツッコミ。

悲しい…。



「それで、話なんだけど」



悠斗は私を逃すまい!となのか、扉の前に立ち、話しかけてきた。



「昨日の嘘だよな?」



は?



「別れるって言ったのが本当だって、もう他人だって言っただろ?」



あー、なるほどね。

言いましたが?何か?



「嘘だよな?」



なんだろ、子犬みたいにうるうる涙目で言ってくるなら可愛げもあったのかもしれないのに…。

脅迫みたいな感じなんですけど?圧がすごい…。



「嘘じゃないですが?」



笑顔でそう言うと、あり得ないとでも言いたげに、口をあんぐりとしてこちらを見た。



話はそれだけか?

だったらもう戻ろう。



私はスッと悠斗の横を通り、鍵に手を伸ばす。



「な、何で?」



悠斗は私の方を向き、言った。



ブチッ



はい、私の中で何かが切れましたー。



鍵に手をかけていたが、スッと引っ込め、悠斗の方を向き、笑顔をやめ、すごい顔で睨みつける。



何で?何でだと?

はっ、こいつ本物のバカだったか。



「お前が浮気したからだろ?」



ビクッと悠斗の体が跳ねた。

私自身、ビックリするぐらいドスの効いた声が出た。



「彼女がいるのに他の女とベタベタする彼氏がどこにいんの?あー、ごめん、ここにいたか。」



「えっ、美雨?」



不安げにこちらを見て話しかけてきたが、お構いなしに続ける。



「彼女の前で平気でベタベタするし、桃香の気持ちのことを話しても聞く耳持たないし、私と2人で居た時、毎回桃香が入ってきても何も言わないし、私より桃香といる時間の方が長かったんじゃない?そんなに一緒にいたいなら早く付き合えばいいのにっていっつも思ってたし!もう嫌いなんだよ!はぁ、はぁ…」



凄い勢いで、凄い大きな声で、凄い早口でいったからか、言い終えた後は息切れしてしまった。



「大丈夫か?」



悠斗はそっと私の背中をさする。



パシッと悠斗の手を払い、フーッと息を整える。



「話は以上。もう戻る」



クルッと扉の方を向き、鍵開ける。



扉を開けて出て行こうとしたが、グイッ引っ張られ扉の方を向いていたはずが、いつの間にか反対向きに、そして、バンッと顔の横に手を置かれ、目の前には悠斗。



ビ、ビックリしたー。

何これ、いわゆるあれだよね?

壁ドンというやつだよね?

付き合っていた時にはやってもらったことないけどね?

別れた今やる?

やらんよね、普通は、うん。



1人で自己完結していると、ググッと悠斗は顔を近づけてきた。



な、何よ…



「俺はまだ好きだよ」

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