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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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99.新たな日常1

2人で話をした翌日からアティにはあらためて戦乙女として活動するための訓練をしてもらいました。


訓練として必要だったのは、新たに取得した戦闘スキルや魔法、そして戦乙女の槍などでしたが、アティにとってはあまり苦にならないようで戦乙女の槍以外はすぐに適応出来ていました。

戦乙女の槍だけは少々手こずっていましたが、それでも数日もすればちゃんと発動出来るようになりました。


そんな感じで1週間ほど天界で訓練してもらい、それ以降は現世に降りて魔の森で実地訓練をしてもらいましたが、はっきり言って実地訓練の必要はなかったかもしれません。

ハーティ様の世界で魔物と戦っていたアティにとっては魔の森の深部にいる魔物でも倒すのに問題はなく、まったく苦戦する様子はありませんでした。


そんなアティが唯一苦労していたのが神眼の扱いです。

特に識別眼の扱いが難しかったようですが、私が教えることは出来ないので、いろいろと試行錯誤して思ったとおりに扱えるようになるまで1ヶ月ほどかかっていました。


そして神眼がきっちり扱えるようになったタイミングでアティは正式に私の部隊に入ったのです。


アティが私の部隊に入ってからは、最初の活動こそ2人でおこないましたがそれ以降はそれぞれが単独で活動するようになりました。

その理由は、調査専門部隊の活動から私やアティ単独でも魔物の討伐に問題ないとされることがほとんどだからです。


私かアティ、どちらが討伐に向かうかはそれぞれの適性を考慮して決めることにしたのですが、今のところ適性を考慮する必要がないことが多く、現状は順番に活動しているといった感じです。

そんな感じで私とアティが順番に活動しているため、私の活動頻度はかなり低くなり、半月に1度程度まで少なくなりました。

私は部隊長なので活動の報告などをする必要はありますが、活動自体が1ヶ月に4回程度まで少なくなっているので報告することもそれほどありません。


そうなってくると食堂のメニュー考案などをしていても時間を持て余すようになり、空いた時間でよくポーションを作っていたのですが、アティが錬金術を5レベルまで習得していたのでアティに教わりながら錬金術の修行をしたりしていました。


そんなこともあって今では中級の回復ポーションや初級のマジックポーションまでは安定して作れるようになっていて、失敗は多いですが上級の回復ポーションもそれなりに作れるようになりました。


ポーションの作成回数が多くなると素材の問題が出てきますが、上級の回復ポーションまでの素材は魔の森で集めることが出来るので、最近はアティと2人で魔の森で素材収集していることも多くなっています。


テラ様の眷属であり、戦乙女でもある私達が魔の森に入り浸っている状況は問題な気もしますが、テラ様は人々と関わらない限り特に問題はないと言われていたので気にしないことにしています。


そんな感じでアティと共に行動するのが日常となってきたところで、今日も2人でポーションを作ることにしました。


今のところ、錬金術に関してはアティのほうがレベルが高いのですが、ポーションを作る前段階に必要な調合は私のほうがレベルが高いのです。

そのことを考えると私は薬液に魔力を流してポーションに変成させるのが下手なのでしょう。

ですから、今日は私が薬液に魔力を流してポーションに変成させるのをアティにしっかり確認してもらおうと思っています。


「アティ、たぶん私は薬液を変成させるのが下手なのだと思うから、今日は薬液を上級の回復ポーションに変成させるところをしっかり見ていて欲しいの」


『う~ん、私も上級の回復ポーションは必ず成功するってわけじゃないから自信ないけど、リーネがそう言うならちゃんと見とくよ』


「ええ、お願いね」


アティに見ていてもらうようにお願いすると渋々といった表情をしながらも了承してくれました。

アティは私よりも錬金術のレベルが高いのですが、レベル的には1つの違いでしかなく、アティのレベル5というのは上級の回復ポーションを安定して作れるレベルではないのです。


『じゃあ、薬液は私に作らせてもらえるかな?私も調合の精度を上げたいし、いいよね?』


アティはアティで調合をもっと上手くなりたいようなので薬液を作るのはアティにお願いしようと思います。


「ええ、それならアティにお願いするわ」


私はそう返答をしつつ、上級の回復ポーションに必要な素材をストレージから出していきます。


上級の回復ポーションに必要な最低限の素材は、回復ポーションの基本となるヒラリ草、魔力の固定化を安定させるゴーラウの根、ポーションの効果を増幅させるビヒルの葉、魔力の浸透を高めるササリウムの花の4つが上級の回復ポーションを作る上で必ず必要な素材です。

最低限の素材と言った理由は、基本となる素材と大まかな調合の割合は錬金術師の間で公表されているのですが、特殊な素材を使った調合などは基本的に発見した錬金術師が秘匿している場合がほとんどなので私達は基本的な調合しか知らないからです。


ちなみに、ヒラリ草は大葉、ゴーラウの根はゴボウ、ビヒルの葉は葉わさび、ササリウムの花はミョウガとほぼ同じです。

この4つをすりつぶし、繊維を取って裏ごししたものを純水と混ぜ合わせると薬液の完成なのですが、味に特徴のある素材を加熱することもなく混ぜ合わせるのですから、その味は想像以上のマズさです。


いえ、私は上級の回復ポーションを飲んだことはありませんのでロカから聞いた話ですが、相当マズいらしいです。


まあ、そういうわけで私達は今のところ最低限の素材と割合しか知りませんのでその方法でしか薬液が作れません。


アティは私が用意した素材を受け取ると薬研ですりつぶしながら言います。


『いっつも思うけど、料理ならこの組み合わせは絶対ないかな。リーネもそう思うでしょ?』


アティもある程度料理をするからか、そんなことを聞いてきましたが、私の感覚としてもこの4つを合わせるなんて普通はありえません。

この中から2つを合わせるとかなら多少はありえるのでしょうけど・・・。


「そもそも味が想像出来ないから合わせようと思わないわよ」


『だよね、なんでポーションってマズい組み合わせばっかなんかな』


確かにポーションに必要な素材は特徴のある素材ばかりですが、素材の性質を掛け合わせてポーションにするのですから仕方がないことでしょう。


「素材の性質が重要だから味は考慮していないのだと思うわ」


『まあ、そうなんだろうけど。はい、薬液出来たかな』


「アティ、ありがとう」


アティは話をしつつもしっかり薬液を作って渡してくれました。

ここからは頭をしっかり切り替えて変成を成功させたいところです。


私は早速、薬液に魔力を注いでいきます。

薬液をポーションに変成させるには、最初に魔力を徐々に注ぎ、ある程度魔力が馴染んだところで一気に注ぐのですが、この工程が上手くいっていないから私は失敗が多いのだと思います。


私が薬液に魔力を注ぎ始めるとそれを見ていたアティから声がかかります。


『ちょっ!リーネ!注ぐ魔力が多すぎだよ!』


「えっ!?」


アティの声に驚いて私は魔力を注ぐのを中断しました。

私としては注ぐ魔力はけっこう少なくしているつもりでしたが、それでも多いということのようです。


『ポーションの作成工程は、あくまで一般的な人族が基準だから私達なら漏れ出るぐらいの感覚じゃないと多すぎるんだよ』


どうやら人族との魔力量の差を考慮していなかったため、魔力を徐々に注ぐという工程で注いでいる魔力が多すぎたようです。

しかし、漏れ出るぐらいって、感覚的にほとんど魔力を注いでいないように感じてしまいますが、アティがそう言っているのですからそれが正しいのでしょう。


「人族が基準だなんて考えてもいなかったわ。じゃあ、ほとんど注いでいないぐらいの気持ちで注がないとダメなのね」


『下級や中級の回復ポーションなら注ぐ魔力が多くてもちゃんと変成するだろうけど、上級の回復ポーションは最初に注ぐ魔力が多すぎると魔力の固定化が安定しないから変成し難くなるかな』


どうりで上級の回復ポーションの作成に失敗することが多いはずです。

今までは最初に注ぐ魔力が多すぎて魔力の固定化が安定していなかったため、最初の段階で失敗していたのでしょう。


「アティ、見ていてくれてありがとう。私だけだと絶対に気づいていなかったわ」


私がそう言うとアティは少し照れながら言います。


『まあ、リーネにお願いされたからね』


アティはお礼を言われ慣れていないのか、私がお礼を言うといつも照れてしまいますが、それはそれでかわいいのでなんだかほんわかとします。


とりあえずアティのおかげで作成に失敗している要因がわかったので私はあらためてポーションの作成を開始しますが、注ぐ魔力を抑えるのが思ったよりも難しいです。


(魔力が漏れ出るくらいって、感覚で感知出来るかどうかギリギリってところね)


アティに指摘されて作成をやり直しましたが、最初に魔力を多く注いでしまっていたためか、けっきょく失敗に終わりました。


「思った以上に魔力を注ぐのが難しいわね」


『私達だと注ぐ魔力は誤差の範囲って感じかな。私が失敗する時もたぶん注ぐ魔力が原因だと思いし』


上級の回復ポーション作成にはアティも魔力の調整に苦労しているようです。

魔力の浸透を高めるササリウムの花を多く調合するレシピがあれば成功率が上がるのではと思いますが、今のところそんなレシピは知らないので回数をこなして魔力の調整に慣れるしかないでしょう。


「アティ、もっと練習したいから素材があるだけ薬液を作ってくれる?」


『今日は最初からそのつもりかな。じゃあ、薬液を作ってくよ』


「ありがとう、アティ」


『リ、リーネのお願いだからね!』


「ふふっ♪」


照れてるアティがかわいくてつい和んでしまいましたが、今日は予定もないのでポーションの作成を頑張りましょう。

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