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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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93.2人目1

そんなわけで翌日からは午前中は文字を勉強を、午後からは魔法の練習をしてもらいました。

もちろんちゃんと衣装に着替えてもらうので、毎朝エルを起こして着替えを手伝うことになりましたが。


文字のほうは1週間もすればエルもだいたい読み書きが出来るようになりました。

やはり文字の半分が同じということで理解しやすかったのではないでしょうか。


魔法に関しては、1週間ほどミラージュの練習に当ててしまい、それでも見えなくなることしか出来ませんでしたが、一応は使えるようになりました。

エルは光属性にこだわりがあるのか、最初から光属性ばかり練習していたのでなぜか聞いてみると『対極の属性を両方使えたらカッコいいから』という返事が返ってきました。


そんな返事を聞いて、なんだかな~と思いつつも、同じ境遇だったら自分も同じことを考えたかもと思うとなにも言えませんでした。


エルが1週間で文字の読み書きを出来るようになったので、2週目からは午前中はこの世界の勉強をしてもらいましたが世界の勉強は苦手なようです。

午前中は寝起きということもあってかテンションは低めですが、午後になると率先して行動するのでテンションがあきらかに違います。


本当ならスキルに関しても教えたいところですが、身体をどうするかが決まっていないのでスキルのことは今のところ教えていません。


そんな感じで1ヶ月ほど経ったある日、テラ様からエルの素体が完成したと連絡があり、素体の説明をしていただくことになりました。


私達が素体が保管されている建物に向かうと、すでにテラ様がおられました。


「テラ様、お待たせしました」


『いえ、お呼びしたのは私ですから構いません。それよりも、サリアティリエルさんの素体が完成したのですが、当初の予定とは違う素体になりましたので説明をしておこうと思ったのです』


テラ様はそう言われて建物の中に入っていかれるので私達も続いて中に入ります。

建物の奥、私の身体である素体があった辺りまで進まれたテラ様は1体の素体の前で止まられました。


その素体はパッと見た感じだと人族のように見えますが、それがエルのために作られた素体と考えると、おそらく真祖なのでしょう。

髪色は僅かに紫がかった金色をしており、顔の造りはどことなくエルに似ているように感じます。


『こちらがサリアティリエルさんのために作った素体ですが、真祖ではありません』


(えっ?)


この世界にはまだ真祖はいないということで、テラ様は張りきってエルの素体を作られていたはずです。

それなのに作られた素体が真祖ではないというのはどういうことでしょう?


私達が怪訝な表情をしているのを見て、テラ様は続けられます。


『今回、サリアティリエルさんの素体を作るにあたって、女神の眷属として相応しくない吸血衝動を無くす必要がありました。しかし、真祖で素体を作ると吸血鬼の枠から外れることは出来ず、吸血衝動を無くすことは叶いませんでした。ですから吸血鬼に近しい者、神祖として素体を作りました』


どうやら吸血鬼としての根幹は吸血衝動にあるようで、吸血鬼である限り吸血衝動を無くすことはテラ様でも出来ないようでした。

そこで吸血衝動を無くすために真祖ではなく神祖として素体を作られたということのようです。


真祖と神祖は混同されることが多いのですが、真祖は吸血鬼の始祖なのであくまでも吸血鬼です。

しかし、神祖は吸血による眷属化や変化、魅了などといった吸血鬼と同じ特性を持っており、吸血によって眷属化された者が吸血鬼になることから神祖も吸血鬼と思われていますが、神祖はそういう特性を持った神なのです。

そういうことで神祖はあくまでも神ですから、吸血鬼の根幹である吸血衝動は存在しないということです。


『私が神祖になれるんですか?神祖って神ですよね?』


『今回準備した素体はサリアティリエルさんのために調整していますし、当初お話ししていた条件とは異なり申し訳ないのですが、新しくこちらの身体になっていただきます』


テラ様の説明を聞いてどう反応していいかわからなかったので、当事者のエルを見るとエルも戸惑っているようでした。


まあ、いきなり神になれと言われているようなものですから戸惑うのも当然だと思いますが。


しかし、エルが神祖になるということは力の有る無しは関係なく、この世界に新しい神が増えるということになりますが、テラ様はどうお考えなのでしょう?


「テラ様、今のお話しですとエルは新しく神となるのですよね?問題はないのでしょうか?」


『サリアティリエルさんはもともと私の眷属とする予定でしたので、サリアティリエルさんには眷属神となっていただきますが、種族が神の一端となっただけなので問題はありません』


テラ様の返答を聞いて、神の認識がずいぶん違うと感じますが、神にも位があることを考えると、創造神であるテラ様には些細なことなのかもしれません。


それにしても、当事者なのに完全に固まっているエルをなんとかしないと駄目でしょう。


「エル、理解出来た?」


『はっ?えっ!』


(完全に理解が追いついてないわね)


「エルは神祖となってテラ様の眷属神としてこの世界を導いていくことになるけど、基本的にはテラ様の眷属だから当初の予定とほぼ変わりないってことよ」


おそらく神になるってことで頭の中がいっぱいになっているエルに、わかりやすいようにそう説明すると、エルは理解出来たのか、普段とおりの表情に戻りました。


『予定どおりってことは名前もつけてもらえるんですよね?』


表情がもとに戻ったと思ったらエルはテラ様にそう聞きました。

他に聞くことがあるのでは、と思わなくもないですが、当事者はエルなので口は出しません。


『申し訳ないのですが、神祖となるサリアティリエルさんに私が名前をおつけすると、過剰に力を与えてしまいます。ですから、名前は自分で考えていただきたいのです』


テラ様の返答を聞いてエルは少し残念そうな表情になりましたが、私を見て表情が変わります。


『そっか、リーネにつけてもらえばいいんだ!』


「えっ?」


エルは私を見てそう言いましたが、ちょっと待って欲しい。

テラ様に名前をつけていただけなくて残念なのはわかりますが、そこで私が名前をつけることになる理由がわかりません。


『短い名前はイヤだから6文字以上の名前にして』


私が困惑していると、エルは続けてそう言いました。

私は了承していませんが、エルの中では私が名前をつけることが決まっているようです。


(名前ねぇ・・・)


エルにそう言われたので名前を考えてみますが、パッと出てくるのは前世絡みの日本人の名前しか思い浮かびません。


(駄目、春菜とか愛子とか日本人の名前しか思い浮かばないわ)


ちなみに春菜は前世の同僚の名前で、愛子はお母さんの名前です。


前世の外国人の名前をイメージ出来ればいいのですが、6文字以上という縛りもあるのでなかなか適した名前が思いつきません。


(祐也ならすぐに思いつくだろうけど・・・)


祐也は私とは違い、アニメやゲームに親しんでいたので、それっぽい名前もすぐに思いつくのだろうと思っていて気がつきました。


短い名前でもくっつけてしまえばいいのでは?と。


エルはサリアティリエルという真名ですが、サリアやティリエルでも名前としては成立しそうですし、私の名前もクエフとリーネを1つにした名前なので、3文字の名前をくっつけるのもありな気がしてきました。


「そうね、ライアティナっていうのはどうかしら?」


『ライアティナか、ちょっと響きが変わってるけどありかな。ライアでもティナでも私ってのがおもしろいよ』


私が提案してみた名前は意外とエルに受け入れられたようですが、エルの満足したような表情を見ていると、そのままライアとティナをくっつけただけとは口が裂けても言えません。


「いや、とりあえず提案してみただけだから・・・」


『では、名前はライアティナでよろしいですか?』


このまま決まってしまうと申し訳がないので、とりあえず提案してみたと言いますが、私の言葉に被せるようにテラ様がエルにそう聞かれました。


『うん、せっかくリーネが考えてくれたんだから、ライアティナで決まり』


エルはテラ様にそう返答しましたが、2つの名前をくっつけただけの、考えたと言っていいかどうかも怪しい名前を即決しないで欲しかったです。


そんなわけでエルの新しい名前はライアティナに決まってしまいました。


『名前も決まりましたので、さっそく素体と同化していただきましょう。今回はかなり特殊な状況ですので、サリアティリエルさんの身体の一部を引き継ぐことになり、同化にはおそらく1日ほどかかると思います』


新しい名前が決まったことでテラ様はさっそくエルに同化してもらうつもりのようですが、同化ってどういうことでしょう?

テラ様なら魂と身体を分離して新しい身体に魂を移すことも可能だと思うのですが。


「テラ様、魂を移すことは出来ないのですか?」


『サリアティリエルさんは魂の構成に違いがありますので、そのまま素体へ魂を移すと問題がおこる可能性は否定出来ません。もちろん魂の構成はし直しますが、素体との親和性を高めるためにも身体の一部を同化させることにしたのです』


エルの状況を簡単に言うなら、ハーティ様が作られた魂をテラ様が作られた身体に入れるということです。

そう考えると例え基幹が同じでも問題無く魂の移動が出来るとは思えません。

それを問題無くおこなうために身体の同化という方法をとられるようです。


『同化ってことは今の身体と新しい身体をくっつけるってことですか?』


テラ様の説明を聞いたエルは不安そうにそう質問しました。


『同化と言っても、もとの身体は1%ほどしか使用しませんし、新しい身体と魂の結合を安定させるために僅かに同化させるだけです』


テラ様の詳しい説明を聞いてエルはホッとした表情を浮かべました。

新しい身体になれると思っていたところで、今の身体と同化させると聞いて不安になったのだと思いますが、実質的にはほとんど同化しないと聞いて安心したようです。


『わかりました。ではお願いします』


『それでは、今からサリアティリエルさんの同化を始めたいと思います』


そういうことでエルの同化が始まりました。

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