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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
92/113

92.面倒事13

再び訓練場に向かう途中でこの後のことを考えている時に気がつきました。


エルは真祖なので睡眠を取る必要はないはずですが夜はどうするつもりでしょう?


天界は光が暗くなるだけで夜になるわけではありませんが、眷属達も夜にあたる時間帯は基本的に寝ていますので食堂や浴場は閉まっています。

図書館や訓練場は入れますが夜の時間帯にエルが1人で行くとは思えません。


「エル、夜になったら私は寝るけどあなたは寝ないわよね?いつもはどうしてるの?」


『夜はすることないからいつもは寝てる』


(えっ?)


そう思い、夜はどうしているのか聞いてみるとエルは寝ていると答えました。

私はてっきりエルは寝ないと思っていましたがどうやら違うようです。


しかも真祖なのに夜は寝てると言い切りました。


確かにこの世界は地球とは違い、夜の時間に出来ることは限られていますが、真祖のエルが夜は寝ているというのは違和感があります。


「真祖って寝る必要はないと思っていたわ」


『寝なくても大丈夫だけど、魔力は真祖でも眠らないと回復しないから』


そう言われれば確かに魔力を回復させるには眠る必要があります。

魔力は睡眠中がもっとも回復するので魔力を回復させる時は眠るのが一般的です。

おそらく眠らなくても僅かずつは回復するでしょうけど、多くの魔力を使用した時は魔力を回復させるために眠る必要があるのでしょう。


「そう、魔力は眠らないと回復しないのね」


『まあ、寝るというより魔力を回復させるって認識だけど』


私は眠る必要があるので睡眠にたいする認識はエルとは違いますが、真祖でも眠る必要があるというのは意外でした。


しかし、吸血鬼は夜の眷属と言われるぐらいですから、例え太陽の光を克服していても夜のほうが能力を発揮出来ると思いますが、そのへんはどうなのでしょう?


「エル、あなたは太陽の光を克服していると思うけど、昼間は能力に影響がないのかしら?」


そのへんのことがちょっと気になったのでエルにそう聞いてみました。


『昼間って太陽光のもとでってことでいい?太陽光があるところでは夜の9割くらいになるかな。でも影響があるのは身体能力と霧化だけだし魔力なんかはかわらないから魔法は普通に使える』


どうやら太陽光のもとでは身体能力がある程度は低下するようですが、私が思っていたほどは影響を受けないようです。


「思ったよりも影響は受けないのね」


『そうでもないから。1割身体能力が下がると思った通りに動けないし』


身体能力の低下が1割だと聞いてそれほど影響は受けていないと思いましたが、実際に身体能力が1割低下すると思った以上に影響があるようです。


太陽光のもとでは身体能力に影響があるのはわかりましたが、霧化はどうなるのでしょう?


「霧化も影響があるって言っていたけど、霧化はどうなるの?」


『太陽光のもとでは霧化は出来なくなるかな』


(霧化はまったく出来なくなるのか)


エルに会うまでは吸血鬼の霧化は凄く便利な特性だと思っていましたが、太陽光では使えなかったり、霧化の最中は無防備となるなど、実際にはとても使い難い特性だとわかりました。


「なるほどね」


そんな話をしていたら訓練場に着きました。


『さあ、生活魔法を教えて』


訓練場に着くなりエルは張りきってそう言いますが、生活魔法は簡単な魔法なのでエルならすぐに使えるでしょうし、教える前に簡単に生活魔法の説明をしておきましょう。


「じゃあ生活魔法を教えてあげるけど、その前に簡単に説明するわね。生活魔法っていうのは魔力が少ない人族や獣人族でも使えるようにされた魔法で、使えると生活が楽になる魔法のことを指すわ」


私が説明を始めるとエルは真剣な表情で聞いています。


「生活魔法は魔力が少ない人でも使えるようにされてはいるけど、ほとんど魔力を持たない人や、なんらかの理由で魔力を放出出来ない人はもちろん使えないの」


『誰でも使えるっていうから触媒を使うのかと思ったんだけど、そうじゃないんだ』


そこまで説明するとエルがそう感想を言いました。

錬金術の中には触媒を必要とするものもありますが、魔法で触媒を使うことはありません。


エルがいた世界では触媒を必要とする魔法があるのでしょうか?

ちょっと気になるところですが今は生活魔法のことを優先しましょう。


「説明を続けるわね。それで、生活魔法を使うには大まかなイメージとキーワード、そして魔力が必要になるけど、イメージが曖昧でもキーワードで補正がかかるからイメージするのが苦手でもキーワードを発すれば発動出来るの。魔力はもちろん使う魔法によって必要量は違うけど、最も必要魔力が少ないライトの魔法なら測定出来る最低限の魔力で発動出来るわ」


『生活魔法は使うつもりでキーワードを言えばいいってこと?』


私の説明を聞いてエルはそう質問してきましたが、乱暴な言い方だとそうとも言えます。


「使うだけならそれで使えるわ。もちろんイメージがしっかり出来ていればキーワードも必要ないわよ」


『それなら確かに簡単かな』


私が説明している内容はだいたい理解出来ているようなのでさらに続けます。


「私が使える生活魔法は、指先に1秒だけ火を灯す種火、1ℓの水を造りだす造水、1秒だけ指先に光を灯すライト、汚れを綺麗にするクリーン、水分を乾かす乾燥の5つあるけど、ほとんどの人が使えるのは種火、造水、ライトの3つね」


『クリーンと乾燥は難しいってこと?』


続けて説明したことを聞いたエルはそう質問してきましたが、クリーンや乾燥はあくまでも生活魔法なので難しくはありません。


「発動させること自体は難しくないわ。でも実用的な範囲で発動させるには最低限魔術師に成れるくらいの魔力が必要だから使えないと思っている人は多いのよ」


『ふ~ん。生活魔法はその5つ?』


生活魔法は素体が覚えていた魔法やロカに教えてもらった魔法ですが、それ以外は必要に感じたことがないので他に生活魔法があるかは知りません。


「私が知っているのはその5つだけだけど、個人的に考えた魔法が生活魔法に該当するとイニティニーニ様が判断されたら生活魔法になるから他にもあるかもしれないわ」


『イニティニーニ様って?』


(あれ?)


異空間で話をした時にイニティニーニ様はおられましが、名前は言われてなかったでしょうか?


「異空間で話をした時に早口で話されていた方で、知識の女神様です」


イニティニーニ様のことを説明するとエルは納得したように言います。


『あ~!凄い早口だった女神様か。あの方が知識の女神様か~イメージと違うかな』


それは私も思いましたが声に出しては駄目でしょう。

私も知識の女神様はゆっくりと知的な話し方をされると思っていたので、初めてイニティニーニ様とお会いした時はイメージと違って驚きました。

しかも、イニティニーニ様は私達眷属のことをちゃんづけで呼ばれるのでなんとも言えない気分になるのです。


まあ、とりあえずイニティニーニ様のことはいいとして、生活魔法の説明はだいたい終わったので後は実際に使ってもらいましょう。


「説明はだいたい終わりだから後は実践よ」


『1回ずつ見せてくれる?』


今の説明だけでもエルなら使えるとは思いますが、見てみたほうがイメージもしやすいので一通り見せてから実践してもらいましょう。


「もちろんよ」


そういうことで種火から順に見せてはエルに使ってもらいましたが、クリーンと乾燥でつまずきました。


クリーンに関しては発動前と発動後の違いがわからなかったのが原因でしたので、1度衣装を汚してから綺麗になるのを見せるとエルも理解出来て使えました。

乾燥はそもそも濡れている状態ではないので、わざわざ造水で身体を濡らしてから使って見せるという無駄な手間が必要でした。


まあ、多少のつまづきはありましたがエルは無事に生活魔法を使えました。


『クリーンと乾燥は確かに魔術師くらいの魔力が必要か、種火は1、造水は2だけどクリーンは11も魔力を使ってる』


一通り生活魔法を使ったエルはそんな感想を口にしましたが、聞いていた私は一瞬意味がわかりませんでした。

しかし、よく考えるとエルの言った意味が理解出来たのです。


エルは素体をもらったわけでも、こちらの世界に適応されたわけでもないので、まだ身体はそのままです。

ということは、ステータスも数値で表示されているので、エルが言っていた数値はおそらく消費したMPのことでしょう。

実戦でMPを気にするのは難しいと思いますが、練習中は案外便利かも?と思ってしまいました。


エルに生活魔法を教え終わりましたが、まだ時間に余裕があるので他の魔法を練習するか聞いてみます。


「時間はまだあるけど、他の魔法を練習してみる?」


『うん、光属性のやつ!』


エルがそう言うので、光属性のミラージュを教えることにしたのですが、これが失敗でした。

前世で現代知識を持っている私には光の屈折や反射で見え方が変わったりすることは普通に思えますが、知識のないエルにはミラージュの魔法が理解出来なかったのです。

しかも、ミラージュの魔法を説明したところ、エルはかなり気に入ったようであきらめる様子はありません。


そんなわけで、ミラージュの魔法の内容をこと細かく説明したり、光と色の関係を説明したりと、残りの時間をミラージュに当てることになりましたが、結局エルは覚えられませんでした。


まあ、明日からは午前中に文字の勉強をして、午後からは魔法の練習をしてもらうつもりなので、エルには頑張ってもらいましょう。

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