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異世界で真実の愛を  作者: ぬっすぃ~
第二章 戦乙女として
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82.面倒事3

私が西門に近づくと門番の兵士が声を掛けてきました。


『よう!おはようさん。こんな時間に珍しいが、もしかして魔の森からか?』


「ええ、そんなところよ」


『まあ、そりゃそうか。じゃあギルドカードを出してくれ、一応確認が必要だからな』


声を掛けてきた兵士はそう言いながらも視線を動かして私の姿をチラチラと見ています。


(やっぱり変な奴と思われてる・・・)


私の装備を見た兵士の表情が微妙な感じになったのがわかりましたが、話を振られたわけでもないのでここは無視してギルドカードを出します。


『おっ、A級か。じゃあ、問題ねぇな。すぐに門は開けれねぇからこっちから入ってくれ』


私のギルドカードを確認した兵士は兵士達が使う非常用の扉を通るように言いました。


カラートの西には魔の森へと続く道があるだけなので、魔の森から魔物が襲撃してくることに備えている西門は基本的に閉められています。

そんな西門を使うのは魔の森へ行く冒険者ぐらいしかいないので、少人数の出入りには非常用の扉で対応しているのです。


私は非常用の扉を抜ける際に兵士にお礼を言ってからカラートの街中に入りました。


カラートの西側は魔の森が近いこともあって、街の人々からは敬遠されており、スラムのようになっています。

そんなスラムを抜けて街の中心部を目指しますが、すれ違う人々は魔の森へ向かうであろう冒険者しかいません。


しばらく歩いてスラムを抜けた先の通りに出ると、屋台の準備をしている商人を見かけられるようになりました。

事前の調査では異世界の魔物は街の西側に姿を現すということでしたので、しばらくはこの通りをうろついてみることにしました。


私はとりあえず北に向かって通りを歩いていきますが、屋台の準備をしている商人以外ではまだ街の人は見かけません。

しばらく北に向かって歩きましたが、異世界の魔物どころか、一般人すら見かけないので私は不安になってきます。


(もしかしてスラムのほうだった?)


街の西側というのがスラムのことを指していたのかもと思い、不安になった私は来た道を戻ることにしました。

来た道を戻るように通りを南に向かって歩いていると、通りの先から女性が歩いてくるのが見えました。


私の前方から歩いて来たのは、薄いピンク色のワンピースを着た薄紫色の髪をした女性でした。


私は即座にその女性を鑑定して異世界の魔物かどうかを確認したところ、なにも情報が得られませんでした。

鑑定が効かないということは前方から歩いてくる女性は異世界の魔物ということです。


私は女性に気づかれないように見えない状態で剣を抜き、なにくわぬ顔で歩いて近づきます。

女性の表情が見てとれる距離まで近づいても逃げる様子は無いので、私は女性とすれ違うように歩いていきます。


そして、女性とすれ違いました。


すれ違った直後に横回転するように剣を横薙に振って女性を攻撃しますが、女性は長い爪を伸ばして私の剣を受け止め、いたずらに言います。


『ダークエルフに恨みを買うような覚えはないんだけど?』


私は攻撃を受け止められることは考えていましたが、話し掛けられるとは思っていませんでした。

しかし、私が言葉を返す必要性は無いので無言のまま攻撃しますが、女性は距離を取って私の剣を回避しつつ言います。


『無視されると腹が立つんだけど?』


そう言う女性は見るからに不機嫌な表情をしています。

話し掛けられるという想定していなかった対応をされたため、私は攻撃するタイミングを逃してしまいますが、そこへ2人からの援護が来ました。


エミニエールが発動した聖光を受けた女性は、それほどダメージを受けてはいないようですが、エミニエールを見てその表情が驚きに変わります。


『うそっ!なんでダークエルフの眷属がいるのよ!』


エミニエールが姿を現したことで私が女神様の眷属だとわかったようですが、女神様の眷属に攻撃されたことよりもダークエルフの眷属がいることに驚いているようです。


『槍よ!』


女性が驚いているのを攻撃のチャンスと捉えたカレッサの声が響き、戦乙女の槍が跳んできますが、女性はギリギリで魔法障壁を出して受け止めました。

私はその僅かな時間に間合いをつめて剣を振り下ろします。

私が振り下ろした剣は女性の爪を切り落としますが、軌道を逸らされたため身体までとどきません。


『ちっ!』


爪を切り落とされた女性は舌打ちをするとスラムに向かって逃げ出しましたが、作戦では街の外に追い出さないとだめなので、私達は女性を追いかけてスラムに入っていきます。

ある程度スラムの中を追いかけて2人がついて来ているのを確認した私は、先回りするために横道にそれて2人に追いかけてもらいます。


カラートのスラムは道が入り組んでいるため繋がりがわかりにくいのですが、何度もスラムに足を運んでいるのである程度はわかります。

横道にそれた私は上手く先回りすることが出来て、女性が逃げて来る前方に出ることが出来ました。


「槍よ!」


私は前方の女性に向けて戦乙女の槍を発動しますが、やはり魔法障壁で受け止められました。

しかし、女性をはさみ打ちにすることは出来たので、この状態から逃げようと思ったら空から逃げるしかありません。


まだ街中に向かって空から移動される可能性はありますが、これで街の外に追い出せる可能性も高くなりました。

そんなことを考えつつ動向を見ていると、女性は飄々とした態度で話し掛けてきます。


『ちょっと話をしたいな~というか責任者に話を聞いて欲しいんだけど』


女性はこともあろうに私達の責任者、つまりは女神様に話を聞いて欲しいと言い出したのです。


「無理に決まってるでしょ!」


あまりに身勝手な言い分につい言葉を返してしまった私を見て、エミニエールとカレッサは一時的に攻撃することをやめました。

そして、そんな私達を見た女性は、私が会話するつもりだと思ったのか話を続けるように言います。


『提案よ、いいえ、取り引きと言ったほうがいいかな?私の知っていることは全て話すから見逃して欲しいのよ』


女性が知っている情報があれば見つけられていない異世界の魔物を討伐することも可能になるかもしれませんが、異世界の魔物は世界を崩壊に導く因子を持たされているので見逃すことは出来ません。


「魅力的な話ではあるけど、危険な因子を持ったあなたを見逃すことは出来ないわ」


『崩壊因子を持たされているのは一緒に来た私の眷属だけで私は持たされてないから!私の眷属が送り込まれることになったのを見計らって逃げて来たから私は崩壊因子は持ってないのよ!』


女性は慌ててそう言いましたが、正直なところ、私が判断出来る事例ではなくなってきている気がします。


「私では判断出来ないから女神様に確認するわ。確認している間に変な動きをしたらこの話は全て無しにするから」


『ほんとにお願い!私はただ死にたくないだけなのよ』


女性がどこまで本当のことを話しているかはわかりませんが、私はとりあえず今回の作戦を指揮しているカティア様に確認することにしました。


〔カティア様、ちょっと問題が発生しまして、異世界の魔物が女神様と話がしたいと言ってます〕


私が念話でカティア様にそう確認すると、カティア様から残念な返事が返ってきます。


〔戦闘に関係ないことは難しいからテラ様にお願いしてなの〕


カティア様は戦闘に関係のあることなら難しいことでも理解されているのですが、戦闘以外のこととなるとすぐにテラ様に丸投げされるのです。

カティア様はけっして頭が悪いということは無いので、おそらくは戦闘以外のことに興味が無くて考えるのが面倒なのだと思います。


そんなわけでテラ様に確認することにします。


〔テラ様、作戦中ですが問題が発生しまして、異世界の魔物が女神様と話をしたいと言っているのですが、どのように対応したらいいでしょうか?〕


〔リーネ、もう少し詳しく教えてくれますか?〕


テラ様からそう返事が返って来たので、女性の言ったことをある程度まとめて報告します。


〔異世界の魔物は逃げて来たので崩壊因子は持たされていないし、知っていることは全て話すから見逃して欲しいと言っていて、そのために女神様と話がしたいということのようです〕


私がテラ様にそう報告すると、しばらくしてから返事が返ってきました。


〔わかりました。しかし、神界に呼ぶわけにはいきませんので、ナスハに異空間を準備してもらいます。こちらで準備が出来ましたらリーネの周りに強制転移をかけますのでそう伝えてください〕


どうやらテラ様は女性の言うことがある程度真実だと判断されたみたいで、安全性を確保して話を聞かれるようです。


「女神様はお会いになるそうよ。私の近くにいれば強制転移で移動していただけるとのことだから、おとなしく私の近くで待ってて」


『ほんと!?ハーティ様とは違ってこっちの創造神様は話がわかる人でよかった!これで死なずに済みそうよ!』


女神様がお会いになることを伝えると、女性は興奮気味にそう言い、私の近くに寄ってきました。

女性の態度を見ていると、どうやら逃げて来たというのは本当のことみたいですが、いろいろと疑問が残ります。


(ハーティ様っていうのが向こうの創造神様で、逃げて来た原因にもなってるってことかな?)


今のやり取りからそんなことを考えつつ待っていると、私の周りが光だし強制転移させられました。

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